九龍ジェネリックロマンス 第26話
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九龍ジェネリックロマンス 第26話 感想
自分の知っている鯨井令子について話そうか? という工藤さんの申し出を断ってしまった鯨井さん。
その話の中で感じるであろう今の自分との違いをはっきりと意識してしまったら、いよいよ自分が鯨井令子ではないとはっきり自覚してしまう恐怖があったからだった。
九龍式のおみくじ「ジャオペイ」を振っている最中も、自分が何者で、どこから来たすらわからなくなったと自分の存在に確信が持てないでいる。
自分に自信がないという人は世にたくさんいるだろうけど、自分が自分ではないという不安や恐怖に囚われている人はそう多くはない。
人が生きる上で、もちろん後者の方が遥かに大きな問題だと思う。
そんなアイデンティティが不安定な状態の鯨井さんが、さらにそれをゆさぶる可能性がある工藤さんの話など、即座に回避しようとしても無理はない。
鯨井さんは、こうだったらいいな、という受け身な願いばかりを想っていた。
それも自分ではなく工藤さんに行動させるような内容ばかりだった。
他人の行動を変えさせることは無理だと思った方が良いと思う。
それよりは自分が主体的に動く方が、状況を自分の望む状態にもっていきやすい。
鯨井さんは、工藤さんが鯨井Bに対するように自分に接してくれますように、とか、工藤さんと鯨井Bのような関係になれますように、など、とにかく主体性が感じられない願いばかり。
ジャオペイがもう一回振ることを要求する怒杯ばかり連続で出たのは、鯨井さんが後に自分の願いの問題点に気付くきっかけに繋がったので、ある意味では運が良いといえるのかもしれない。
その後の鯨井さんの願いである「絶対の私になりたい」は見事に聖杯となったので、神様はきちんと見ていたということだろう。
鯨井さんは今回、ジャオペイを通じて自身と向き合うことで、自分がどうなりたいかが大事である事に気付いた。
今回の話の冒頭と比較すれば、いくらか自分の軸が定まったように見える。
工藤さんの話を聞く覚悟が出来た……とまでは言わないが、着実にその状態に一歩を踏み出せたように思う。
ひょっとしたら次回、鯨井さんは今回断った工藤さんの知る自分に関する話を、改めて聞かせて欲しいと工藤さんに願い出るという展開があるかも?
以上、九龍ジェネリックロマンス第26話のネタバレを含む感想と考察でした。
第27話に続きます。
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