第58話 天国
57話のおさらい
霧雨は響に怒り、「なんなんだコイツ」と月島に文句を言う。
響は緊迫した場面にも関わらず、響は喫茶店の店員に注文をし、座る。
霧雨に対して同様に着席を促す。
響は、霧雨に『漆黒のヴァンパイアと眠る月』を読ませる為に花代子と月島に命じて原稿を出させる。
響は、着席せず、帰ろうとする霧雨の背中に思いっきり蹴りを食らわせる。
店の外で言い争いをする響と霧雨。
「人の小説をでたらめにいじって、私が傷つかないとでも思ったの。」
響のこの一言に霧雨の怒りは、それは悪かったけど、という言葉とともにトーンダウンする。
津久井にやり込められた七瀬は、その様子を電柱の影からハンディカムで盗撮していた。
月島が霧雨と別れ、津久井に響と霧雨の騒動を電話で報告する。
津久井はパソコンに七瀬の撮影してきた動画を映し、白々しく月島とやりとりをする。
すぐそばに立って津久井の電話を聞いていた七瀬は、響と霧雨がぶつかりあうことは津久井が仕掛けていたのかと問う。
笑顔で沈黙している津久井。
さらに、ドキュメンタリー制作の許可を得ていないのかという問いにも津久井は沈黙し、笑うのだった。
霧雨は自宅で響からの電話を受ける。
霧雨は響と『漆黒のヴァンパイアと眠る月』を読んで面白ければイラストを描き、面白くなければ仕事を受けないという約束をするのだった。
57話の詳細は上記リンクをクリック。第58話 天国
漆黒の月と眠るヴァンパイアの2巻
7月。
ナリサワファームの一室で津久井と編集長、月島が同じテーブルについている。
テーブルの上には各自のコーヒーと、『漆黒のヴァンパイアと眠る月』のキャラデザイン最終稿が置かれている。
デザイン画を見て感心する編集長。
キャラが深くなった、さすが、と評価する。
月島は津久井と編集長に、響から送られてきた2巻目の原稿を読んだかと問いかける。
最っ高だな、と唸る津久井。
キャラの行く末に感情移入し、顔を覆う月島。
頭に手を当てて、すごかった、と言う編集長。
文体だけで十分見せられるのに恐ろしくキャラを立てて話を作ってる、と感心し、作者の「ひびき」が何者なのかと口に出す。
私にも全然わからない、と月島。
(本当に…何を考え、どう生きたら16歳でこんな文章が書けるんだ)
心中で思う津久井。
怪談――そして肝試し
夜の学校。
校舎に入っていく文芸部部員たち。
1年生の由良かなえが北瀬戸高校の図書室にまつわる怪談を語り出す。
30年前に毎日図書館で本、特にミステリー小説が好きな文学少女がいた。
窓辺で推理小説の終盤を読んでいて、次のページで犯人がわかる、という時に来た大きな地震によって倒れてきた本棚の下敷きになってしまった。
以来、地震のあった時刻である7時25分になると女生徒の霊が現れる。
「図書館の花子さん」という話で、1年の間で噂になっている、と熱弁する由良と同じ1年の宇佐見典子。
宇佐見は、この謎を文芸部が解決するしかない、と楽しそうにしている。
マジかよ、と面倒くさそうに呟くタカヤ。
マジなんス、と返す宇佐見。
本当に幽霊が出るって、と笑顔で言う。
「……」
タカヤは片手で顔を覆う。
「どうしても絶対の用があるっつって、これか……」
呆れた様子のタカヤ。
まあいーじゃん、と笑顔のリカ。
たまにはこういう皆で集まるイベントも良い、と乗り気になる。
シロウは、本棚の下敷きくらいで人は死なない、と冷静にツッコむ。
その通りよ、と同意する響。
涼太郎は、花代子が1年の時に図書委員だったことを本人に確認し、噂を聞いたことがあるかどうかを尋ねる。
花代子は、うーん、と少し考えて、本棚の下敷きかは分からないが、何十年か前に図書館で事故があって生徒が亡くなったという噂を聞いたことがあると神妙な表情で言う。
由良と宇佐見の表情に驚愕が浮かぶ。
「ほらあ! マジででるんスよ!」
「やっべー ゆーれいの写メ超撮りてー!」
一人黙って固まった表情をしているサキ。
7時10分
7時10分。
図書館の前に集まっている文芸部員たち。
ここからは女子だけです、と男性陣に言う宇佐見。
はぁ!? と不満そうなシロウ。
噂だと花子さんは男子がいると出てこない、という由良。
文芸少女だから照れ屋なんスよ、と能天気な宇佐見。
シロウは、オレらはなんの為に…、と困惑の表情を浮かべる。
図書館のドアノブを回そうとするリカ。鍵は閉まっていて開かない。
「鍵閉まってるけどどーするの?」
「大丈夫ス 図書委員のダチからカギ借りてきました。」
宇佐見が鍵を片手にリカに答える。
扉の鍵穴に入れ、回すと、開く
開いた、と扉を開ける宇佐見。
リカは、ちょっとお化け退治に行ってくるね、と男性陣に笑顔で言う。
涼太郎は、図書館に入っていくリカと宇佐見の背中を見つめている。
響、花代子、サキもリカたちに続いていく。
花代子、サキの顔が恐怖に歪んでいるのに、響は全くの無表情。
図書館で起こった心霊現象
「失礼しまーす……」
図書館に入る一行。
取り残された男性陣。
涼太郎が、俺達も行こっか、とシロウに呼びかける。
どこに? と尋ねるシロウに涼太郎は答えることなく、意味深な笑顔を返す。
電気をつけず、しかしカーテンが開いているので暗い中、図書館内部を進んでいく女性陣。
咲希ちゃんさ、とリカが直ぐ目の前を歩くサキに声をかける。
驚いて、ひっ、と声を上げてしまうサキ。
「…ミステリー好きならこーゆーの好きかと思ったけど、ダメっぽいね。」
リカは、サキの様子から分析する。
サキは、ミステリーとホラーは違います、と答える。
あそこが問題の場所、と由良が図書館の隅、窓際をリカたちに指し示す。
時間の確認を促すリカ。宇佐見がスマホを見て、あと2分と少し緊張した面持ちで報告する。
その時、一瞬図書館の電気が点灯し、消える。図書館内部は再び闇に包まれる。
宇佐見、由良、花代子は今起こった出来事に思考が停止している。
え、と声を出し、わずかに焦るリカ。
サキは恐怖に青ざめている。
響はやはり無表情。
今、一瞬電気……、と由良。
え? ついたよね、と宇佐見が驚きを隠せない様子で由良に問いかける。
「えっえっえ……」
花代子は取り乱している。
配線の故障など、偶然ではないか、と恐怖を紛らわす花代子。
ですよね、建物古いし、と同意するサキ。
スマホを見て、時間もまだだし、あと1分、と恐怖に怯え始めた様子の宇佐見。
サキは響に視線を移す。
「あの…響さんは平気なんですか? お化けとか……」
さあ? と何の恐怖も感じていない様子の響。
「いるかいないかも害があるかもわからないから、よくわからない。」
図書室の隅の窓際で、パァン、と1回音が聞こえる。
ひっ、と怯える由良。
サキは、きゃあ! と一際大きな悲鳴を上げる。
「今っ、今、パァン…」
青ざめて、焦った様子のサキ。
花代子は怯えた様子で、ちょっと待って、を繰り返している。
由良は、ウソ、マジで? と信じがたい様子でいる。
止めよう、花子さんが怒ってる、とサキは由良にすがりつくように懇願する。
由良は、でもここまで来て…、と表情には怯えの色を浮かべている。
スマホを確認する由良。
「……時間。」
スマホを見て7時25分を知らせる。
停止する女子部員たち。
花子さーん、とリカが呼びかける。
(…ハイ)
微かに聞こえる声。
きゃあああ、と言う女子部員達の悲鳴が図書室中に響く。
慌てて、タカヤを始め男性陣逃げ出してきた女子部員たち。
「でたっ、本物…」
恐怖で怯え切った様子のサキ。
お化けはいた、とやはり怯えた花代子。
「本当に?」
笑顔の涼太郎が女子部員に問いかける。
「電気が消えたり、手叩いたみたいな音がした?」
え、と固まる女子部員たち。
シロウが、草むら入ったら虫に食われた、とどこからから現れる。
「男子のしわざー!?」
女子部員の声が響く。
涼太郎は女子部員に、ごめん、と笑顔で手を合わせて許しを乞う。
もーマジ死んだし! と由良、100年は縮んだ、と宇佐見がそれぞれ涼太郎を非難する。
リカは、久々に本気でびっくりした、面白かった、と笑顔。
せっかくのイベントだから華を添えようと思った、と笑顔の涼太郎。
涼太郎さん、とサキが涼太郎に声をかける。
一番驚いていたね、と笑いかける涼太郎。
「こういうの私大っ嫌いなんで二度と止めてください。」
静かに、しかし鋭い目で涼太郎を見つめながら忠告するサキ。
涼太郎は、サキが後輩にも関わらず、あまりの迫力に、はい、と答える。
次はサキが決めていいよ、という宇佐見に、次って何? と問う五十嵐。
なぜ今日、肝試しなのかと宇佐見に問うサキ。
「だって今日から夏休みだよー!」と笑顔の宇佐見。
「高校の夏休みなんて一生で一番楽しー瞬間でしょ!」とやはり笑顔の由良。
その二人を笑顔で見つめるリカ。
サキと花代子は若干引いた目つきでその光景を見ている。
でも最後の「ハイ」は怖かった、と笑顔の由良。
宇佐見は、アレ誰スか? と涼太郎に問いかける。
「ハイ」?と何のことか分からない様子の涼太郎は、自分たち男性陣がやったことの整理を行う。
「俺は電気消しただけ。」と涼太郎。
「……俺は裏に向かってて叩いた。」
花代子は、あの女の人の声はタカヤ君? とタカヤに問いかける。
タカヤは、ずっと見張りをしてたから知らない、と答える。
え…、と流石に戸惑うリカ。
「じゃあ…あれって、本物……」
花代子とサキが信じられない様子で立ち尽くしている。
「ウソウソウソ シローでしょ!」
「いや知らねーって。」
「うっそマジ…」
その時、涼太郎は今ここに響がいないことに気づく。
「響は……?」
幽霊? と
真っ暗な図書館に一人残された響。
窓際に向かって一言、こんばんは、と挨拶する。
響は、あなたは本棚の下敷きになって死んだ子? と花子さんに問いかける。
(……髪を切られた。)
(本破かれて、水かけられて、殴られて、何もしてないのに。)
じっと言い分を聞いている響。
(毎日ずっと、つらくて、つらくて。)
そっか、と納得する響。
悪いことをしたら悪いことが返ってくる、大丈夫だ、と言って見せる響。
そして、虐めた人はきっと今頃地獄の人生を送ってる、と幽霊を慰める。
「それに嫌なことがあったらその分良いことがあるものだから。きっとあなたのこれからの人生は楽しいことしかないよ。」
笑顔で続ける響。
「もしあの世があるなら天国に行って夢のような日々が待ってるし、輪廻転生があるなら次はバラ色の人生が待ってる。」
「もしこの場所が気に入ってるなら、もうしばらくここにいて、ゆっくり色々考えればいいよ。」
「ここなら本もいっぱいあるし。」
響は、窓際の本棚の上にある花瓶から、花を一本抜きとると窓際の床に供える。
両手を合わせて拝み、じゃあね、と笑顔で手を上げてから、図書室を出て行く。
響を探している文芸部部員たち。
感想
響の言葉は幽霊さえも黙らせてしまうものなのか。
幽霊のような正体不明の存在に全く心を揺らされる事無く、それどころか勇気づけてしまうとは。
これも天才故の出来事なのかな。
響の見せた優しさに意外な印象を持ってしまった。
普段、気に入らない奴をぶん殴る展開が多過ぎるせいだろうな、と思う。
『漆黒のヴァンパイアと眠る月』の2巻分の原稿を読んで感心しきりの津久井たちの様子から、響は間違いなく天才なんだなぁと改めて思う。
優れた才能だ、と称される人はいるが、誰もが認める、というのは中々無い。
ますます津久井の響をスクープしたい気持ちは膨らむわけか。
果たしてプライベートを守りたい響に津久井を止めることはできるのだろうか。
以上、響 小説家になる方法第58話のネタバレ感想でした。
次回、第59話の詳細は以下をクリックしてくださいね。
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