響 小説家になる方法 最新第78話思惑の感想(ネタバレ含む)と考察。

第78話 思惑

第77話のおさらい

女子高生――藤代琴子が面接を受けていた。

 

藤代は、高校文芸部にとって文芸コンクールは最も大きい大会であり、そこで二年連続で最優秀賞を受賞しているのは自分が初めてなのだとアピールする。

 

藤代は途中まで好感触を得ていたが、今年は小説を書かなかったのかという質問のあと、藤代は面接官たちの物言いが気に入らずつい言い返してしまい、ついには面接官たちに引かれてしまう。

 

聖メアリー女学院の被服室では、参宮橋大学からの推薦入学不合格通知を前に藤代が頭を抱えていた。

 

文芸コンクール3年連続で最優秀賞により伝説になることを狙っていた藤代は友達の前で悔しさを隠さない。

 

藤代は、自分の人生が上手くいかない理由を、自分をさしおいて文芸コンクールの大賞を受賞した生徒のせいだとして、2週間後の表彰式では最優秀の奴をひっぱたくと息巻くのだった。

 

文部科学省で、加賀美大臣はが記者たちから、総裁選出馬に関するの質問を受けていた。

 

加賀美大臣は、総裁選に関しては特に考えていない、と答え、記者会見を終える。

 

記者会見を終えた加賀美大臣は大臣室で秘書の北島と総裁選の見通しについて会話していた。

 

話も一段落し、加賀美大臣にスケジュールについて尋ねられた北島は文芸コンクールの響の作品を提示する。
しかし加賀美大臣はそれを確認すらしない。
文芸コンクールの表彰式自体に全く無関心な様子で他の政治家への根回しの電話を続けるのだった。

 

北瀬戸高校の校長室。
校長は上機嫌で取材などの依頼が来ていることを響に告げる。

 

それらは全て断ってほしいという響の一言に校長は真顔になる。
そして、やっぱりか、と響を見つめる黒島とリカ。

 

校長に必死の説得文句されても、響は、間に合ってる、とにべもなく断る。

 

響に、表彰式に出ることを確認するリカ。

 

響は、応募したのは自分なので顔出さないと失礼だからと表彰式に出席する意思を見せる。

 

リカは響に大臣が来るが大人しくしていられるかと問うが、うん、と即答してきたことに不安を覚える。

 

元々は自分が花代子に伝えるのを忘れていたのが原因と考えたリカは、なんとかするかと呟くのだった。

 

前回、第77話の詳細は以下をクリックしてくださいね。

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第78話 思惑

高校文芸コンクール当日

2月28日。文芸コンクール表彰式当日。

 

文芸コンクール表彰式の行われる会場の設営が行われている。

 

設営作業の人員に混じっていた文化連会長に選考委員など、文芸コンクール関係者が揃ったことが伝えられる。

 

後の設営は任せた、と会長。
「高校生の子達からすれば一生残る舞台だ。くれぐれも丁寧に。」

 

選考委員に『響』とバレた?

「皆さんお疲れさまです。」
会長が関係者の集まっている部屋に入っていく。

 

設営に参加していたのですか、という中年男性の質問に会長は、運動がてら、と答える。

 

あとで私らも嫌がらせにいきましょう、と盛り上がる会長たち。

 

しかし、その笑いの輪もすぐに落ち着いていく。

 

楕円の会議テーブルを囲んで立つ関係者たち。

 

さて、と最も上座の位置に立つ会長が切り出す。
「本日の高校生文芸コンクール表彰式ですが、受賞された生徒さん全員参加の予定です。」

 

一瞬の間の後、男性がぽつりと声を出す。
「……最優秀の子も?」

 

会長は、参加するとの連絡がありました、と答える。

 

「最優秀の『鮎喰響』は芥川・直木をとった『響』なんですか?」

 

聞いていないのでわかりません、と会長。
「最優秀であれ、落選であれ、特定の生徒だけに偏った対応はしません。」

 

会長は、ただ、と言って表情を険しくする
「『鮎喰響』さんは地元新聞、テレビ等の取材を全て断ったそうです。」

 

再び沈黙が部屋を支配する。

 

 

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「……『鮎喰響』さんの『11月誰そ彼』は……純粋に面白かった。」
眼鏡をかけた中年男性が切り出す。

 

はい、と女性。

 

中年男性は、『11月誰そ彼』は、黄昏時に色んな死者と出会い話をする話であり、そこにドラマティックな死の話は無いと内容を振り返る。
「ただ11月という秋の匂いと死者の思い出と……」

 

恐ろしく奇麗な文章だった、と会長が呟く。

 

『お伽の庭』と同じ文体だった、と別の男性も話に加わる。
似せようとしたいやらしさはなく、ものまねで書ける文章ではないと『11月誰そ彼』を評する。

 

「私は正直『響』で間違いないと思う。」
女性は確信に近いものを感じている様子で呟く。
「ただ、選考の時に話したことと繰り返しになるけど、」

 

「正体を隠してる芥川・直木作家がなんで今更高校生のコンクールに?」

 

腕を組み考え込む一同。

 

その頃、北瀬戸高校の廊下で花代子がくしゃみをする。
「あれー 風邪かなー。」

 

「アホのくせに?」
鼻をこすっている花代子にタカヤがさらっとツッコむ。

 

会議室では、会長がもうすぐ加賀美大臣が来るという情報を伝達していた。
総裁選が近く、マスコミが多くなっていると付け加える。

 

 

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車中にて

車の後部座席に並んで座っている加賀美大臣と秘書の北島。

 

手に手に資料を持ち、対立候補との差や争点を整理している。

 

「……俺が言うのもなんだが、大差ねえな。」
結論する加賀美大臣。

 

北島は対立候補海藤が現政権の実績をアピールし、羽田野は世代交代を訴えるだろう、と分析する。

 

「何かないか。攻撃材料とか。」

 

加賀美大臣から問われた北島は、ワイドショーで海藤が昼食で食べた3000円のハヤシライスに関して庶民感覚がないという批判がある、と答える。

 

加賀美大臣は、そのあまりのくだらなさに顔を覆う。
そして、何かないか…、と再び呟く。

 

「ところで、今日出席します文芸コンクール表彰式に関しまして。」

 

今それに向かってんだっけか、と加賀美大臣。
「総裁選前にのん気な話だ。」
余計なことは言わず、ニコニコして若者の未来の可能性を語るから心配ない、と続ける。

 

「文部科学大臣賞を受賞した子について文化連の方から先日連絡がありまして…」

 

 

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会場

設営が完了した表彰式の会場では、既に出席者たちが着座している。

 

藤代琴子は、自分の隣のまだ誰も来ていない席を睨む。

 

周りの学生たちも空いた席を気にしている。

 

「受賞生徒の受付終了まであと3分ですね。」
最優秀の子はまだ来ていないのか、と会長に問われ、隣の男性が答える。
「遅刻したからって締め出す訳ではありませんけど…」

 

連絡入れてみますか? と男性がスマホ片手に会長に問う。

 

会長は若干緊張した面持ちをしながらも、特別扱いせずスケジュール通りに進行すると答える。

 

藤代は文芸コンクールの受賞者一覧を見ている。
(最優秀は神奈川の北瀬戸高校、2年。鮎喰響。『11月誰そ彼』 ダサ。)

 

再び隣の席に視線を投じる。

 

(遅刻してくるつもり? 最優秀だからって調子乗って……)

 

文芸少女の頂点に立ったと浮かれてる。

 

会場にいる他の受賞者は全員自分脇役であり引き立て役。

 

今日の表彰式は自分のための式。

 

普段冴えない奴が急に認められて才能があると思い込んで調子に乗った。

 

最優秀受賞者に対して様々な想いが藤代の脳裏に渦巻いていた。

 

思わず、くそっ、と呟く藤代。

 

 

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会場外で待機する響たち

文芸コンクール表彰式会場の外で響、リカ、ノリコの北瀬戸高校勢は待機していた。

 

ノリコは、今どこにいるのか聞いて? と楽しそうに電話の相手と会話している。
「え!? 私? 今東京! いやーまいったよこれから私表彰されんだよねー!」

 

リカもベンチに座って、今から会場に入るところだと花井に電話で報告している。

 

「悪いわねリカ 本当は私も付き添いたいんだけど。」

 

花井は顔が割れてるからダメだとリカ。
「小論社の花井ふみが受賞者の傍にいたらそいつ絶対響だよ。」

 

「文部科学大臣賞か………」
不安そうに呟く花井。

 

響はしゃがんで猫に向かって人差し指を突き出していた。
猫は人差し指に弱いという情報を聞いた、と呟き、ほらこい、と猫に呼びかける。

 

 

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リカは花井に、響は猫で遊んでいると報告する。

 

総裁選の最中にある加賀美大臣は高校生の式典に出てる場合じゃないのが本音だろうから響にちょっかいはださないだろう、と花井。

 

響も大臣に文句とかないと思うけど、とリカも答える。
「ただ、式で響ちゃんが大人しくしてる絵が見えないんだよね。…本っ当に。」

 

「縛り上げても暴れる時は暴れる子だけど。……リカどうするの?」
不安そうな花井。

 

「どうにかするよ。」
リカは覚悟を決めたような表情で端的に答える。

 

ノリコは電話の相手、咲希に電話を切られそうになりながらも自慢していた。
「まって咲希っぺ切んないで! だって自慢したいじゃん! リカちゃんや響ちゃん相手じゃ自慢になんないし!」

 

 

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逃げる猫の行く先には

猫は響の人差し指を噛んで一目散に逃げる。

 

響はそれを追いかけ始める。

 

そこにちょうど、加賀美大臣と北島、SP、報道陣の一団が通りかかり、響から逃げていた猫は加賀美大臣の足にタイミングよくぶつかる。

 

その光景に立ち止まる響。

 

加賀美大臣は何事もなかったように手元の資料を見つめたまま。

 

報道陣もまた加賀美大臣に熱心に取材をしている。

 

響は、蹴られて逃げ出した猫を見て加賀美大臣に突進するが、SPにがっちり受け止められる。

 

「ん……」
騒ぎに加賀美大臣が気付き、資料から視線を上げる。

 

「先生、今、足に猫があたりました。」
響が加賀美大臣を睨みつけている理由を北島が説明する。

 

 

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”手懐ける”

「ああ…」
毛を逆立てて威嚇している猫の姿を見て、加賀美大臣がしゃがんで猫に手招きをする。
「にゃーにゃー。」

 

猫は加賀美大臣に引き寄せられるように近づいていく。
そして、加賀美大臣の手で顎を撫でられてうっとりしている。

 

よしよし、と加賀美大臣は猫を抱き上げたのに感心した報道陣から、おおー、と声が上がる。

 

その様子を言葉もなく見つめる響。

 

「……君は高校生のようだけど、今日の文芸コンクールの表彰式に出る子かな?」

 

響は加賀美大臣に問われ、ええ、とだけ返事をする。

 

「そうか初めまして。僕は今日、式に参加する加賀美文部科学大臣です。」

 

「ああ。私は鮎喰響。小説読んでくれてありがとう。」

 

響をじっと見つめる加賀美大臣。
じゃあまだ後で、と言って抱いていた猫を放す。

 

「昔から動物には好かれるんだよ。」
猫の扱いが上手いですね、との報道陣の質問に答える加賀美大臣。
竹平派を同じように手懐けられますか、と政治に絡めた質問が続く。

 

「先生、鮎喰響というと例の最優秀の。」

 

北島の言葉に、ああ、と応える加賀美大臣。
「十中八九芥川・直木の『響』だ。使える。」

 

「さて、行くか。」
電話を終えたリカが呟く。

 

 

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感想

やはり『響』だと勘付かれていた

やはり選考委員たちにはあの『響』だとバレていた(笑)。
文芸に親しんだ人たちに読まれればバレて当然だよなー。

 

選考委員たちは、特定の生徒だけに偏った対応はしないと言いながらも『響』が気になって仕方ない。
それもまた当然だ。

 

正体を隠している芥川直木W受賞作家の『響』がなぜ高校文芸コンクールに、という疑問は最もだわ。

 

まさかその裏に花代子というトラブルメーカーがいるなんて知る由もないだろう。

 

くしゃみして、風邪かな、と呟いた花代子に、タカヤがすかさずアホのくせに? とツッコんだのには笑ったなー。

 

津久井とのバトルにしても、起点は花代子だった。
このパターンはまだまだ続きそう(笑)。

 

 

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加賀美大臣 VS 響

総裁選の、他の候補とほぼ横並びの状況を打破したい加賀美大臣は、前回も最後の一手を考えてた。

 

響の影響力を使おうとしてるようだけど、それは無理だわ(笑)。

 

今回、猫を蹴ったことで響の心象はあまりよくないように感じる。
その後、すぐに猫を抱いていくらかは心象をリカバリーしたけど、それでも響を猫の如く手懐けるには決して至らないだろう。

 

表彰式は、加賀美大臣の政治力・カリスマ性が響を取り込めるかどうかの勝負になってくるだろう。

 

加賀美大臣は、芥川直木W受賞で取材NGの響と仲良く握手でもしてる写真が報道されたなら、その話題性は総裁選最後の一押しに十分と見ているのではないか。

 

響が取材を拒否している以上、大臣の望みは叶わないのだと思うけど、どうやって響が大臣の思惑を跳ね除けるのか。

 

『11月誰そ彼』を既読か未読か。
それが響とうまくコミュニケーションがとれるかどうかの重要なポイントだろうなー。

 

加賀美大臣は優秀な人間だろうし、眺め読み程度にはチェックしている可能性はある。
しかし、前回と同様に未読状態の可能性の方が高いのではと感じた。

 

 

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チェックしたとしても、北島に読ませて内容と感想を聞くとか、省力化を図っているだろう。

 

会場に移動中の車内で小説をチェックしていればと思ったが、当然のように北島と総裁選について会話するのみ。

 

加賀美大臣は北島から、最優秀賞を獲ったのが『響』かもしれないという文化連からの連絡を車内で聞いたようだ。

 

それがせめて前日だったら、加賀美大臣は前もってきちんと『11月誰そ彼』を読んでいたはず。
政治家が相手の影響力を取り込むには、相手に好かれなくてはならない。
加賀美大臣程の大物政治家なら響と会話する際に小説の感想は外さないと思うが……。

 

しかし、そもそも響には加賀美大臣の思惑になんて興味ゼロなわけで。

 

加賀美大臣と響がぶつかるのはほぼ確実とみて良いと思う。

 

実は、響はこれまでぶつかってきた相手と最後まで敵対的な関係に終わった事例はない。
響が相手に対して感じる印象は様々だが、戦った相手からの響に対する印象は最終的にはある種の畏敬の念を抱く感じで終わっている。

 

果たして加賀美大臣とはどう決着するのか。

 

未読なら問答無用で響からの批難、そして暴力のコースもあり得る。
それが報道されようものなかとんでもないことに……。

 

次号以降の展開はさらに注目だ。

 

 

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顔バレ身バレをどう回避する?

文芸コンクールには報道陣がたくさん来るらしい。

 

響の写真を紙面で使わせない、あるいは撮影された映像を使わせないなんてことが響やリカに出来るのか?

 

文芸コンクール表彰式の場に出る時点で報道されることを了承していると受け取られてもしょうがないだろう。

 

芥川賞直木賞受賞会見の場では鬼島に借りたコートのフードを目深に被ることで顔バレを避けたけど、文芸コンクール表彰式ではどうするのか。

 

自分の発想では、どう考えても響がこれまで拒否してきた取材及び報道から逃げられないと思ってしまうんだけど、どうやってこの窮地を脱するのか楽しみでならない。

 

前回も思ったけど、リカがどう動くか気になる。

 

 

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リカは花井の、響は暴れるだろうという懸念に対して”どうにかするよ”と返した。

 

どんな秘策があるというのか。

 

本人やリカ、ノリコが会場にまだ入っていないのはリカの作戦の一つ……?
受付終了まで残り3分の時点でも会場入りしていないし、ギリギリを狙ったとしたらその理由はなんなのか。
他の出席者たちが着座している中、ギリギリで会場入りすれば返って目立つのは間違いないだろうし、狙いがわからない。

 

響にしてもリカにしても、飛び抜けた発想でこの窮地を切り抜けてくれることを期待したい。

 

次は二週間後だから助かる(笑)。

 

以上、響 小説家になる方法第78話のネタバレを含む感想と考察でした。

第79話に続きます。

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