第42話 代弁
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注目の的となる響
芥川賞直木賞の受賞会見の場。
司会者が写真撮影の時間を宣言する。
マスコミによるカメラのフラッシュを一身に浴びる響。
その背後で毅然とした表情の花井。
隣には芥川賞受賞の豊増幸。
フードをあげてください、と言われる響。
後ろの人どいてください、と言われる花井。
どちらも全く動じない。
花井がマイクを受け取り、響は未成年なので顔写真は遠慮ください、と主張する。
それでは写真撮影の意味がない、とマスコミ。
批判的な反応にも全く動じる事無く、申し訳ありません、と一言謝る花井。
本日は響の後ろには私が離れず待機すると続ける。
マスコミからはまたブーイングが起こる。
邪魔だ、と言われるも花井は一言謝り、プライバシー保護のためにご理解ください、と頭を下げる。
豊増幸を壇上に残し、響と花井は舞台の袖に向かう。
花井が担当か! と何かに思い当たるマスコミの男。
矢野さん知ってる人スか? と隣の男が問いかける。
矢野と呼ばれた男が花井に関して、担当作品がいくつも文芸賞をとり、祖父江の娘のデビューも手掛けた優秀な編集者であることを説明する。
カメラの男が、超ヤリ手だ、と驚く。
「しかも今回の響だからな。何か女子高生をアシストする手法でも…」
そこまで言って、矢野が何かに思い当たる。
壇上では豊増幸が笑顔で司会者からの質問に答えている。
しかしマスコミの関心は響一色。
カメラをけ飛ばされたカメラマンがカメラが動くことを確認している。
カメラを蹴った所を写真に収めていないか、という声に、人で隠れていてダメだったと答える声。
マスコミを背後から見つめる豊増幸の担当編集の久美。
(幸の会見中だってのに。ボソボソと響の話を…)
舞台袖で待機している響を見る。
(なんでよりにもよって。)
ちっ、と再び会場に視線を移す。
司会者が会場のマスコミに質問がないかを問うも、反応がないので豊増幸にコメントを求める。
はい、と返事をする豊増幸。
「ハナちゃん! お母さんやったよ!」
満面の笑顔でVサインを作る。
一礼して「緊張したあ」と舞台袖に引っ込む豊増幸。久美がお疲れ、と迎える。
「豊増幸」
響が声をかける。
む、とする久美。
どうぞ、と舞台を手で示す幸。
響は顔が見えるようにフードをズラす。
「あなたの小説好き。握手して。」
ホントに! と喜ぶ幸。
「嬉しい! 私も響ちゃんの『お伽の庭』すごく好き!」
嬉しい、と受ける響。
その光景を見て、もしかしてすごく普通の子? と思う久美。
幸と握手していると、花井に舞台に上がることを促され、フードを目深にかぶりなおす響。
響を守る花井
「続きまして、」
司会者がアナウンスする。
マスコミの間に緊張感が走る。
「芥川賞直木賞受賞、響先生です。」
フードを目深にかぶったまま壇上に用意された椅子に座っている響。
その後ろには花井が響の両肩に手を乗せ、毅然とした目で立っている。
(編集部のゴミ箱で『お伽の庭』を見つけてから、約一年か…)
一斉にたかれるフラッシュを浴びる花井。
「響、おめでとう。」
花井に声をかけられ、振り向いて、ありがとう、とお礼を言う響。
「会見中何を言われても絶対大人しくしてて。」
花井が響の耳元で囁く。
「あなたは私が守るから。」
返事! と言われ、わかった、と答える響。
マイクを受け取った花井。
質問は全て私が代弁すること、そして響のプライベートに関する質問は遠慮してください、とマスコミに伝える。
花井の申し出にマスコミがざわめく。
司会者が響に受賞の感想を求める。
響は、腰を屈めて隣にきた花井に、嬉しい、と伝える。
花井は響の言葉をそのまま、『嬉しい』と、とマイクで言う。
司会者の進行により、質疑応答に移る。
大日テレビの尾崎と名乗る女性が、顔を出さない、質問は直接答えないなら、今日の会見はなんのために出られたんですか? と質問する。
「それは受賞したのに感謝を伝えないのは失礼だからと。」
花井の答えに、響さんに聞いてるんです! と被せる尾崎。
「受賞したのに感謝を伝えないのは失礼だから。」
響からの言葉を頷きながら聞く花井。
「『受賞したのに感謝を伝えないのは失礼だから』と。」
と全く同じ言葉をマイクで伝える。
言葉を失う尾崎。
会場内のマスコミから向けられる文句。
(この子を守るのが私の仕事。そのためなら私は矢面でいくらでも嫌われよう。)
花井は毅然とした表情を崩さないで響の背後に立ち続ける。
響の本領発揮
「週刊実報の矢野です。」
矢野が手を上げる。
花井さんに質問です、という矢野の一声に、え、と一瞬あっけにとられる花井。
「花井さんは小説の内容にどれくらい関わってるんですか?」
矢野が花井に問う。
「え…と?」
質問の意味をイマイチ消化しきれない様子の花井が続ける。
「『お伽の庭』は投稿作ですからほとんど関りは。」
矢野は、15歳女の子が芥川賞直木賞を受賞するのは信じがたい、と前置きして質問する。
「『お伽の庭』は本当にそこの子が書かれたんですか?」
固まる花井。
矢野は、花井は祖父江リカの担当でもあるが、彼女たちの作品に花井が直接手を入れないのか、と質問をする。
ざわつく会場。
そんなわけ、と反論しようとした花井の持つマイクを響が掴む。
「響…」
響が反論しようとしていると考えた花井。
響の言葉が直接聞ける期待で場内は再びざわめく。
(作家が自分の作品をゴースト扱いされて、何も言わないわけには…)
俯く花井。マイクを響に手渡す。
「……不用意なことは言わないで。」
うん、と響きがマイクを受け取り、それを矢野の顔目がけて投げる響。
マイクが矢野の顔にぶつかり、ドッ、という音をたてる。
一瞬固まる場内。
響の気持ちに感動する花井
花井が響を後ろから抱きしめた状態で舞台の袖に走り出す。
「響の会見は以上です! 失礼します!」
「ちょっと待ってください!」
マスコミたちが一斉に立ち上がる。
「響さん今のはどういうことですか!?」
響、なんてこと…、と響きを抱きしめたまま問いかける花井。
いやだって今のは、と反論しようとする響。
花井は、自分の作品にケチをつけられて許せないのはわかるけど、と必死に響を説き伏せようとする。
響は、ノーノー、と花井の言葉を否定している。
近づいてくるマスコミから響を必死で守ることを考えている花井は響きの言葉に気づかない。
マスコミが響と花井を取り囲んでいく。響に向けて質問が飛んでいく。
(結局こうなる。どうして……)
(今日一日動物園だ遊園地だに付き合っても、響のことを全力で守っても、何をしてもこの子には伝わらない。)
響の背後にカメラを蹴られたカメラマンが忍び寄る。
(よし、このどさくさならフードとって顔撮れる。)
花井は響に迫るカメラマンが響のフードに手をかけようとしているのに気づかない。
(もういい加減、疲れた……)
カメラマンが響の頭を掴む。痛っ、と声を上げる響。
「何やってんだコラ!」
花井が突き出した拳骨が勢いよくカメラマンの鼻っ面にヒットする。
後ろに倒れるカメラマン。
花井は、殴ってしまってから、あ、と事の重大性に気づく。
花井がカメラマンを殴ったことで、再びマスコミがざわつく。
「あの編集殴った。」
「いや 後ろのやつが先に手出した?」
ふみ、暴力はダメなんじゃないの? と問う響。
「いや今のは…響に手を出したから…」
俯き、響の顔を見ずに答える花井。
「私も同じ。」
響きが答える。
「私が何を言われても大人しくしてるつもりだったけど、さっきの会見はふみがいじめられてたから怒ったの。」
響の言葉に花井が驚く。
あ、とマスコミたちが言葉を失う。
花井は、響…と感動する。
「それはそれとして、自分の仕返しは自分でする。」
花井に殴られたカメラマンが鼻を抑押さえておき上がる。
足でカメラマンの顎を蹴り上げる響。
ただただ、あっけにとられるマスコミと花井。
カメラマンを見下ろす響。
「何、頭掴んでんのよ。痛いじゃない。」
感想
マイクぶん投げは全く予想外。
普通はまずやらない行為をいともあっさりと、事も無げに堂々と行う響。
花井が感動してる。
花井は、響には普段から困らされることがことが多いが、いざいとなると自分をかばっての行動してくれるのは嬉しいだろうなぁ。
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