第53話
目次
第52話のおさらい
響と花代子の帰ったナリサワファームでラノベ作家子安は『漆黒のヴァンパイアと眠る月』を読み、その文体のレベルの高さにラノベの領域に収まる作品ではないと思わず天を仰ぐ。
一方、名前不詳のメガネ(響)と花代子との対面を終えた津久井は花代子の最後に「メガネ」を響ちゃんと呼んだことから芥川・直木賞ダブル受賞の響ではないかと睨んでいた。
何とかアニメと響のタイアップで社会現象を起こすために何かできないかと一人、頭を回転させる。
帰りの電車内で響はあっけらかんとしている花代子に響はこの夜の事を他言するなと表情に有無を言わせぬ迫力をみなぎらせながら指切りをする。
翌、学校でシロウはタカヤにヘッドロックされて強制的に文芸部の部室に連れていかれる。そのあとをついていく同じく文芸部のサキ。
響にケンカで負けたことに負い目を持っているシロウにタカヤは、響に指を折られたことを告白する。驚くシロウ。
文芸部部室ではリカと響が待っていた。
響がサキから預かっていた小説の原稿を面白かった、と感想とともに返す。
サキは響の小説とどっちが面白い? と聞くが、響は単純に決めることはできないと即答する。
「私は編集でも神の使いでもない。ただの響よ。」
5月になり、小論社の花井が響に電話をしている。
電話をしているデスクのPCディスプレイ画面には
NF文庫新人賞結果発表
『漆黒のヴァンパイアと眠る月』
作者:ひびき
と表示されている。
これが、なんとしても響を巻き込んで社会現象を起こしたい津久井が画策した一手だった。
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響 小説家になる方法 第53話 ネタバレ感想
NF文庫に投稿した響の小説が花井にバレた
花井が響に電話している。
小論社にもラノベの部署があり、NF文庫の新人賞のおかしさを同期が指摘してきたという。
本来最高の賞である大賞よりも上に来ている審査員特別賞、その特別賞の著者名が「ひびき」であること。
試し読みしたという花井はそれが響が書いたものであることを確信。
ラノベを書きたいというなら止めなかったと話す花井。
「どうして言ってくれなかったの? 私ってそんなに信用されてなかった?」
一通り花井の言葉を聞いていた響は答える。
「ひとつだけ言わせて。」
「私は悪くない。」
文芸部の部室にいる響の近くでは花代子が他の女子と戯れている。
申し開きの機会を望む響は花井と2時間後に喫茶店で落ち合うことに。
ペンネームが「ひびき」となっていることを確認した響は電話を終えると、かよ、と花代子を呼ぶ。
髪型で遊んでいた花代子はこれどうかな? と響に問いかける。
響はそれに反応せず、NF文庫からペンネームについて何か言われたか問いかえす。
あっ、と花代子が何かに思い当り、えーと、と響から目を逸らす。
花代子の怪しい素振りを睨む響。
「リカ、針もってる?」
傍らでソファに座るリカに問う。
リカは、ハリ? と響を見上げる。
その様子を見て花代子が慌てて話始める。
津久井から新人賞の発表の時だけペンネームを変えて良いかという連絡があり、あとから本を出す時に変更出来るという話から深く考えずにOKを出したという。
響は女の編集ではなく津久井のことかと確認する。
花代子は男の方だと答える。
花代子は本当にどうしようもないなぁ。
しかし高校生ってこんなもんだと思うので、むしろ自然な展開かなと思う。
元々ナリサワファーム側とのやりとりは響自ら、花代子を通じて行うということだったし、津久井としても花代子からペンネームの変更程度ならば簡単に許可をもらえると思っていたのだろう。
完全に後手に回っている響。
「メガネ」を「響」だと確信する津久井
場面転換。喫茶メルヘン。
「花代子ちゃん……」
テーブルの上で顔を伏せる花井。
響から事情を聞き、現状を理解した花井はどうしてもっと早く教えてくれなかった、と顔を伏せたまま響を咎める。
下手に花井に言ったら響が理不尽に怒られそうで、バレなければよいと思っていたと答える響。
怒らないわよ! 大体遅かれ早かれでしょ! と語気強めに言う花井に、ほら怒った、と響が指摘する。
リカは、そんなふたりのやりとりをジュースを飲みながら聞いている。
額に片手をあてている花井は話し始める。
文芸界という狭い世界では作家は共有財産と言う考え方が慣習となっている。
響も本来、他の出版社で書いていてもおかしくないところ、響の要望を最大限聞く形で花井が完全に他社やマスコミから響をガードしているため、それらから突き上げを食らっているのだという。
そこで判明した響の作品の投稿。そして受賞。
やりきれない感情を隠すこともせず、花井が響に一気に言葉をぶつける。
私は悪くないんだって、と即答する響に花井はアニメのプロデューサーはこの人か? と津久井の名刺を差し出す。
うん、と答える響。
先週花井のところにも津久井が強引なアポをとってきて、響のことを色々聞きに来たのだという。
花井は響から話を聞き、その理由を理解する。
津久井に会った印象を相当なやり手で能力の高い、嫌な奴だと評し、何かあったら連絡しろと響に言う花井。
黙ってケーキを食べている響。リカはそんな響の顔を見ている。
NF新人賞がなぜ大賞ではないのか、という花井の疑問に、続きは書くが賞はいらないと言ったらそうなったと響が答える。
喫茶メルヘンの外では津久井が電柱に身を隠して煙草を吸っていた。
煙を吐き出すと、喫茶店から歩いて遠ざかっていく。
花代子の高校は分かっていたから様子を見に行ったら、小論社の花井とリカとメガネが喫茶店で話していた。
「あのメガネは『響』だ」
メガネが響だと確信した津久井は一ツ橋テレビへと歩いていく。
スマホを取り出し、画面に隠し撮りした響を表示する津久井。
その顔にはマスコミの本能丸出しの野心に満ちた笑顔が浮かんでいる。
大きな獲物を見出した津久井の会心の笑み。
特ダネに気付いているのが自分だけという状況はさぞ楽しいだろうな、と思う。
この男からどうやって自身の秘密を守ろうと言うのか。響の今後の対応に期待。
やられたら即座にやり返す津久井
視聴率の数字が張り出された掲示板の前に男女二人が立っている。
そこを通りかかった津久井は女の近くで足を止める。
隣の男、吉高の獲った高視聴率を褒めまくる女。
吉高にご飯を催促し、OKをもらって喜んだ女が大きくリアクションして、隣にいた津久井に手が当たる。
「ねぇ 手当たったよ」
謝ろうと女が振り向いて、津久井の首にかかったネームプレートを見て、アニメの人か、と謝らずに吉高と話し続ける女。
津久井が女に指摘するも、女は謝るどころか、アニメ担当で数字に関係ない人、と津久井を罵倒する。
「津久井さん……!」
吉高が津久井に気づく。
津久井は、この女の教育がなってないと吉高に言い、吉高は平謝りする。
そんな吉高の姿に、しょせんアニメっすよ、と謝る必要はないと女が言う
「バカ野郎!」
頭を下げたまま吉高は、津久井がドラマ部門でやり手だったことを女に説明する。
女は、そこでようやく慌てて津久井に、ごめんなさい、去年入ったばかりの七瀬です、と頭を下げる。
「いーよいーよ。」
津久井は、新人はしょうがない、と笑顔を作る。
(よかった、いい人ぽい。)
七瀬が内心ほっとしていると、津久井は吉高の髪を掴んで顔を上げさせる。
「え。」
七瀬は呆然としてその光景を見ている。
「新人教育も大事な仕事だっつったろ。仕事投げ出してどのツラ下げて局内に居んだ?」
「こんなマトモに会話もできねー豚育てやがって!」
「いつからドラマ部は家畜小屋になったんだ!?」
すいませんっ! と吉高。
「それともこの豚家畜として出荷するつもりか? 売れるかよこんな野良豚!」
髪を掴んだまま津久井は吉高に怒声を浴びせる。
そんな言いかた…、と反論しようとする七瀬の言葉を、いいからいいから! と押しとどめる津久井。
「君がクソ豚なのは君のせいじゃないから。」
「肩書きだけ見て相手を判断するような。」
「今まで先輩や先生や親御さんからそういう教育をされてきたんだろ。」
「君はなーんにも悪くない。周りがクズだった被害者だから。」
吉高の髪を離す津久井。
「オイ吉高。お前もちゃんと謝んねーか。」
津久井に向けて謝る吉高に、相手が違うだろ、と見下ろす津久井。
七瀬さん、すいませんでした! と七瀬に向けて頭を下げる吉高。
呆然として何の反応もできない七瀬に津久井が声をかける。
「豚子ちゃん、彼も反省してるみたいだし、これからはちゃんと教育してくれるだろうから、許してやってくれる?」
そう言って、津久井は七瀬に向けて目を見開いて凄む。
目を伏せて、はい、と答える七瀬の鼻に、津久井は立てた親指を押し当てて上を向かせる。
「豚のクセしてなに日本語喋ってんの? 豚はなんて鳴くんだっけ?」
津久井は、ぶひ、と言った七瀬の鼻から親指を離し、じゃーね、と七瀬と吉高の元から立ち去る。
「頑張って早く人間になるんだよ。」
これ、津久井の鬼畜さよりも七瀬の馬鹿さ加減の方が腹が立つ。
津久井のキャラを立てるためのシーンなんだろうけど、肩書きだけで判断するな、と説教する津久井が正論過ぎて、その後の津久井の鬼畜な振る舞いのあとに残ったのは正直、カタルシスだった(笑)。
吉高は可哀想だけど、実際七瀬の教育に失敗してるからなぁ。
津久井は説教だけで済ますんだったら常識人。
その後の鬼畜さで花井の言う「嫌な奴」という属性を獲得したと言える。
津久井との対決を予感していた響
公園の、並んでいるブランコに座った響とリカがドーナツを食べている。
タカヤが大学に行くことを意外に思う響。
リカは、タカヤが建築に興味があり、最近勉強を頑張ってるようだと評している。
「私はワセダかケイオーか、海外か。夏までには固めるつもり。」
リカは、暗くなった空を見ながら響に答える。
リカがアニメのプロデューサーが一体どんな人かと響に問う。
響はすぐに答えずに、ん……とドーナツを頬張る。
言葉に詰まるなんて珍しい、そんなやっかいな人? と問うリカにうーんと考える響。
「どんな人かはまだわかんないけど、ただ、初めて会った時なんとなく思った。」
リカと響がドーナツを交換する。
「なにを?」
「最終的にはこの人蹴り飛ばすことになりそうだなって。」
ドーナツを手に、正面を見ながら答える響。
今後の展開は?
一ツ橋テレビの視聴率掲示板の前でのやりとりは、津久井はやり手でイヤな奴、というキャラ付けをするためのものだと思う。
しかし正直七瀬がクズ過ぎて、そいつをぐうの音も出ないようにやり込めるカタルシスが先立ってしまい、相対的に津久井の地位が上がってしまった感がある(笑)。
実際、津久井は、組むならば頼りがいがあっていい仕事が出来そうだが、現状の響にとっては恐るべき敵でしかない。
今後、津久井は必ず響にアプローチをかける。
アニメを盛り上げるのに協力的でないならワイドショーで流すとか脅したりするようなスマートじゃない方法は採らないのではないか。
そもそもアニメそのものよりも響自身にフォーカスを合わせて社会現象を起こそうと考えている。
津久井は、ナリサワファームでの響とのやりとりから、響をテレビに露出してもらえるよう口説こうなんて考えていないだろう。
出ざるを得ない方向に響を追い込む方向で策を弄してくるはず。
「ひびき」という著者名で特別賞を大賞より大きな扱いにしたのはその布石だろう。
響がどう津久井と対決していくのか。
最後の響の言葉通り、津久井を蹴り飛ばすのか?
読者としては、カタルシスを得られる展開を望みます。
以上、響 小説家になる方法第53話のネタバレ感想と考察でした。
次回、響 小説家になる方法第54話の詳細は以下をクリックしてくださいね。
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