第51話
目次
響 小説家になる方法 50話のおさらい
花代子が勝手に響の小説「漆黒のヴァンパイアと眠る月」をライトノベルの賞に投稿。
大賞を受賞してしまったこと、アニメ化などの話も進み、いくつかの会社を巻き込んだ大事になってしまったことを花代子から知らされた響は花代子にラノベ出版社のナリサワファームに電話をかけさせ、謝罪に行くことに。
神保町にあるナリサワファームに到着して舞い上がる花代子。
担当編集の月島に好意的に迎えられる花代子と響。
廊下で、人気ラノベ作家の子安紡に遭遇し舞い上がる花代子。
容姿がオタクの子安と花代子が握手し、その流れで響に子安が握手を求めた際、響は子安の容姿や行動様式のオタクさに気持ち悪さを感じ、ついつい鼻っ面を正面から拳で殴りつけてしまう。
その場を目撃したのは、「漆黒のヴァンパイアと眠る月」のアニメ化のためにナリサワファームを訪れていた一ツ橋テレビプロデューサーの津久井だった。
常日頃からスター性のある作家を待望していた津久井は、響を見てその華のある様、そして圧倒的な存在感に、求めてやまなかったスター性を見出し、「漆黒のヴァンパイアと眠る月」の作者を響と疑うことなく響に投稿理由を聞いた。
その問いに響は「友達が勝手に応募して」と売れっ子アイドルや女優の常套句のような返答を行うのだった。
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響 小説家になる方法 第51話ネタバレ感想
響と敏腕テレビマン津久井の邂逅
「お前、何が出来るんだよ」というヤツに言われたらその場に白けた空気が漂うことは必至だ。
しかし、響の場合は、現に自分から売り込んだわけではないのに大賞を受賞するという形で見出されてしまっているわけで、そういう本物が言うことでよりその発言者は周囲の人間からしたら輝いてみえてしまう。
存在感にプラスしてアイドル性、カリスマ性も備えていることが分かったことで響に対して目を見開く津久井。
この描写で、常日頃から面白いものを求める津久井のテレビマンとしての嗅覚が確かなものだと分かる。
津久井は、にこ、と笑顔を作り、殴られ廊下に座ったままの子安に大丈夫かと声をかける。
女子高生に殴られ、介抱させて、女の子に懐かれやすいんだなぁとその場を壊さないようにすかさず子安を持ちあげるあたり、如才の無さが窺える。
響に「漆黒のヴァンパイアと眠る月」の肯定的な感想を言う津久井は当然受賞者の名前である花代子さんと響に呼びかけ、アイドルに興味がないかと問う。
当然、「私は花代子じゃない」とピシャリと答える響。
あっけにとられる津久井。
淡々とした様子で編集者の月島に会議室に行くことを促す響。
去り際に、鼻にハンカチを当ててまだ座っている子安に一言ごめんねと言う響。
この流れ。普通なら少なくとも殴られた子安は怒るし、編集の月島こそ注意しないとダメば場面のはずだけど、あまりに響の行動が突飛過ぎてその場にいる誰も指摘できない。
響のカリスマ性にあっけにとられているから、という演出なんだろうけど、やはり一言欲しいなと思った。
面白いんだけど、リアリティが薄れるというのか。勿体なく感じてしまう……。
会議室での響と津久井の駆け引き
しかし津久井はありがとう、良く投稿してくれたとお礼を言うのだった。
花代子の無断投稿がなければ「漆黒のヴァンパイアと眠る月」は埋もれていたし、本来の作者を連れてきてくれたと月島を説得する津久井は作り笑顔を保ったままさりげなく響の名前を聞き出そうとする。
しかし響は名前を答えず、代わりに
「賞をもらう気はないし、花代子もないみたいだから、受賞は取り消した方がいいと思う。」
と主張する。
驚く月島と津久井。
「えー!」と大きな声で驚いた月島は語気そのままで大賞であり、アニメ化も決まっているのになぜと響に問う。
それに対して響は
「毎日本読んだりぼーっとしたりして色々忙しいし、あんまり賞とか興味ないので、ごめんなさい」
と菓子をパクつきながら答える。
疑問が止まらない月島はプロデビューや応募数4895作の頂点であることを言う。
通常、まずありえない響の申し出。
プロとかお金より日常生活を優先したいというのは中々ない。
だからこそフィクションとして面白い。
続けてそれはちょっと問題になるのではと発言する。
花代子には先月時点で受賞の一報を伝えてあった。
その時点でアニメ化に向けて各社動いているのでアニメ化が無しになると損害賠償になるかもしれない。
ましてや無断投稿は盗作行為だから最悪警察沙汰かも……と響と花代子に巧みにブラフを仕掛け、プレッシャーを与える津久井。
海千山千な雰囲気出してるなぁ。
「警察…」と茫然となる花代子。
普通の女子高生ならこうなるだろうなという反応。
汚い大人はいやだねぇ。
おもむろに携帯を取り出しどこかに電話をかける。
そんな響を不安げに見る花代子。
「もしもし警察? ここ神保町のナリサワファームって会社の6階なんだけど、ここの人があなた達に用があるって。」
響は警察に電話をしていた。
響が津久井と月島に痛快な一撃。
「うんすぐきて。じゃーね。」
事も無げに飄々ととんでもないことをする響。
「じゃあ花代子 私たちはもう帰りましょう。」
席を立ち、花代子に帰宅を促す響。
「後は警察の人と話してね。」
え? え? と状況の飲み込めない花代子。
その様子をあっけにとられたままただ見ている津久井と月島。
「……いや、なにやってんの?」
津久井は平静を保ちつつ、しかしさっきまでの作り笑顔の消えたこわばった表情で響に問う。
「やっと薄気味悪い笑いが消えた」
実は電話はかけておらず、津久井を駆け引きでブン殴るための響のブラフだった。
「冗談よ。本当にかけないわよ。」とクールに答える響。
心の底からほっとした様子の月島。
あっけにとられる津久井。
「駆け引きをしにきたんじゃないの。」
津久井と月島二人に堂々と言い放つ響。
「菓子折りもって謝りにきてんだから、怒っていいから受け入れなさい。」
正直謝ってる人間の態度ではないが、嘘を交えた大人の汚い駆け引きをこうも事も無げに粉砕するのを見ると痛快だと思う。
津久井は「コイツ本物だ」という喜びの表情を浮かべながら感心する。
さっきまでの作り笑顔でなく、お客様をお迎えするうやうやしい態度でもなく、真面目な大人の表情になる津久井。
「眼鏡、『漆黒のヴァンパイアと眠る月』はまだ途中じゃないのか?」
物語の設定上、まだ描かれていない部分が多く残されていることを指摘する。
津久井は「一度書いたんなら完結させろ」真面目な表情で、本音で、上から目線から響に要求する。
「作品に対しての礼儀だろ」と最もらしいことを言って響を説得しようとする津久井。
月島も賞とか関係なく続きが読みたいと響に必死に訴えかける。
響は月島の訴えに素直に「ありがとう」と反応する。
しかし続きを津久井の要求、そして月島の願いをピシャリと断る響。
「続きはいつか書きたくなったら書く。」
「そのいつかをあなた達に決められる筋合いはない。」
前半は良いとして、後半は攻撃的過ぎて痛快に感じる。
話し合いや交渉の場においてどうしてもなぁなぁの空気で良しとすることが多くなる社会で、ここまで完膚なきまでに好待遇を拒否するという痛快さ。
この漫画の面白い部分が存分に出ているシーンだと思う。
響は、小説は花代子に譲ったから花代子の自由だが、賞、アニメにはかかわらない、と追い打ちをかけるように月島と津久井に言い放つ。
俯きながら、アニメ1クール12話は「漆黒のヴァンパイアと眠る月」の文章量である原稿用紙250枚ではとても足りないと計算する津久井。
響の一番の敵は花代子なのか(笑)。
響の行動に同調して席を立った花代子。
迷惑をかけてしまった津久井や月島の様子を見て、責任を感じる。
(何か私に出来ること……)
「よかったら続き私が書きましょうか!?」
津久井、月島、響がみんな表情が固まる。
主人公に関して色々展開を考えていたという花代子はそれを提案し、それに津久井と月島は戸惑いながらも花代子に提案の続きを促し、にこやかに語る花代子の案に乗ろうとしていた。
その様子を見てさらに表情が固まる響。
「……書きたくなったから、私が書く。」
花代子の肩に手を乗せ、観念した様子で言う響。
「えー」と不満げな花代子。
その様子を見て「しめた!」という表情の津久井。
響は授賞式は出ない、花代子経由で小説は送る、アニメは好きにしろと津久井たちに言い、再び花代子に帰りを促す。
戸惑う花代子と月島。
「おい眼鏡!」
「名前は?」
津久井がさきほどはぐらかされた質問を再び響に問う。
沈黙の後、「花代子がつけたペンネームがあるでしょ。小説にはそれを使って。」と答える響。
(なんだ? 名前くらいいじゃないか? なんでそこまで素性を隠すんだ?)
疑問に思う津久井。
「じゃあね。」会議室の扉を開ける響。
「あっ待って響ちゃん。」追いかける花代子。
ピーンとくる津久井。
「響……?」
茫然とした表情で確かめるように口に出す津久井。
「痛いっ?」
思わず一番の大ポカをやらかした花代子の頭をはたく響。
感想
最後の大ポカはあまりにデカイミス。
面倒を避け、平穏に生きていくためには絶対犯してはならないミスだったが、これで話は俄然面白くなってきた。
津久井の嗅覚なら響が話題の女子高生作家であることがバレたのはほぼ確実だろう。
今後津久井から「漆黒のヴァンパイアと眠る月」関連の話のみならず、テレビにあの手この手で出そうとしてくるはず。
それを響がどうやって断っていくか。
相当無茶をやるだろうが、その無茶こそがこの漫画の醍醐味だから期待したい。
花代子ちゃんはとにかくやらかすトラブルメーカーなんだなぁ。
無能な働き者の味方は一番の敵になるというのはこのことかと思った。
悪気が全く無いことが分かるだけに凶悪な才能と言って良いだろう(笑)。
・無断で投稿。
・津久井と月島がほぼ諦めてくれたのに勝手に続きを書くと提案して交渉再開。逆転一本負け。
・特にバレてはいけない人たちの前で響と呼ぶ。
これだけのミスが続くと響にとっては桃鉄のキングボンビー顔負けの大損害と言ってもいい。
話を面白く展開させていくために必要なトラブルをもたらすキャラとはいえ、これは見事な働きぶりだなと思う。
以上、響 小説家になる方法の第51話でした。
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