第87話 変化
第87話のおさらい
タイムスリップを試みた零は、目の前にいるもちがまだ仔犬であることから、時間を遡ることに成功したことを確信する。
その時、トイレから竜司の声が聞こえる。
見つかる前に急いで外に出た零は、タイムスリップに成功したことを喜びながら、裸足で駅に向かう。
目的地に到着した零は、事故が起こった時間まで残り15分であることを知り、事故現場まで走り始める。
事故現場付近に辿りつくと、間もなく正面から博士が歩いて来ることに気付く零。
博士を救うために、慌てて再びダッシュする。
「やばっ やばっ」
その時、零はパピコの言葉を思い出していた。
(生まれ変わっても、零君と一緒がいいな。)
(絶対に見つけてね。私 絶対、絶対!! 見つけるから。)
パイプが落下する。
しかしその寸前に零が博士の身体に飛びつくような形で押し倒し、パイプの博士の頭への直撃の回避に成功するのだった。
突然の資材落下にざわつく通行人たち。
博士はゆっくりと目を開ける。
第87話 変化
成功
天から降り注ぐ凶器となった鉄パイプから、零は博士を救うことに成功する。
「Did you just save my life?(私の命を救ったのか?)」
「How did you know this was even going to happen!?(これが起こることをどうやって知った!?)」
「Who or what are you, kid?(君は誰だ、何なんだ、……子供?)」
博士と二人の男たちは口々に呟く。
向かい合う零と博士。
「I can’t belive it.(信じられない)」
零を見つめてそう呟く博士。
零は、やった、やったと呟くと、「Hey Stop!!」という博士の制止を振り切って、その場からダッシュで立ち去る。零のあとを追う長嶋大佐。
「きみ、きみ!!」
零は呼び止めて来た長嶋大佐の前で口から時間移動球を取り出す。
なんで? それ、と驚愕する長嶋大佐。
零から、元の世界で長嶋大佐が持っていた時間移動球を使ってやってきた経緯を聞いた長嶋大佐は納得し、元の時間に戻らないとわからないがと前置きしつつも、零は人類の未来を救ったのかもしれないと告げるのだった。
「まあ…確率は高くはないが……」
そして時間移動球について、帰りまでは使えるという長嶋大佐からの助言で、零は、じゃあ帰ります、と、再び時間移動球を口に含む。
零の視界にデジタル表記の日付が表示され、元の時間に調節する。
じゃあな、と手を上げる長嶋大佐。
視界が暗くなり、時間移動が始まる。
帰還
視界が開けると、零は教室で授業を受けていた。
口から時間移動球を取り出し、スマホのカレンダーを確認する。
元の時間である2021年2月23日に戻ってこれたことを確認した零は、さらにETEの存在や、巨人の襲来さえも一切なかったことになっていることを知り喜ぶのだった。
しかし、パピコの連絡先や写真が消えていることに気付き狼狽する零。
「ない……ない…ない……ちほさんの写真。」
涙を浮かべながら必死に操作を続ける。
確かにパピコはこの時間に存在していた。しかし二人は出会っていなかった。
中島に、パピコを知っているかと問いかけても、全く要領を得ない。
零は改めて、自分が元居た世界と全く違う事を時間し、涙を浮かべるのだった。
学校帰り、自転車でパピコのマンションまでやって来た零は、ちょうどパピコが外に出て来たのを目撃する。しかし一緒に彼氏の竜二も出て来るのだった。
「パチ屋行っていい?」
「まーたー?」
寂しそうな表情で見つめて来る零に気付くパピコ。
零はわずかに笑みを浮かべる。
パピコが竜二と一緒に外出するのを、零はただその場に立って見送ることしかできなかった。
感想
パピコはもちろんのこと、人類まるごと救ってしまった。
博士やその取り巻きの制止を振り切ってさっさと元の世界に戻るとかあっさり過ぎる、もっと博士たちとの会話が見たかったな。博士がどんな研究をしていたかもうちょっと知りたかった。ただ、それはこの話の本筋ではない。今、大切なのは零がパピコを救うこと、そして救った後の関係性がどうなっていくかだ。
その後の長嶋大佐との会話は面白かった。長嶋大佐からしたら自分が実行しようとしていた博士の救命を少年が成し遂げてしまったんだから驚くよなー。
長嶋大佐は博士を救ったところで世界は変わらない可能性が高いと言っていたけど、零は見事に世界を平和な状態に戻せたわけだ。
しかしその代わりに、零とパピコが出逢っていない世界になってしまった。
この代償はあまりに大き過ぎる。
この世界のパピコには零と付き合った事実などないわけだから、零だけがあれだけパピコと深く愛し合った記憶を持ちながら、以前のような関係をもう決して望めないという地獄の苦しみに耐えなければならない。これは辛い……。
さらにきついのは、パピコが竜二とそこそこ幸せそうなことだろう。
以前の世界と同じくたまにDVを受けたりしているのかもしれないけど、少なくとも外で見えている二人の関係は上手くいっているように見える。口論や、或いはパピコが暴力を振るわれている現場に出くわしたなら零にも入り込める余地があったのかもしれない。
でも仲良く外出するところを見せられるとか、零の立場で想像したらこんなに辛いことない。自分の出る幕がないから……。
ETEや暴走したAIの脅威は去った。しかし零にとって必要なものがこの平和な世界においてごそっと抜けている。
これからはそれをどう取り戻していくかに焦点を当てて物語が進行していくのだろう。
ただ暴走するはずだったAIの存在がこの世界では全く存在しないということではないと思う。何かしら起こる可能性はまだある。次号以降、この予測不能の展開を楽しんでいきたい。
以上、ギガント第87話のネタバレを含む感想と考察でした。
第88話に続きます。
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