第86話 約束3
第86話のおさらい
零はDVDを見続けていた。
画面の中の長嶋大佐はバナー博士を発見し、彼を救おうと全力で走っていた。
しかし間に合わずバナー博士は事故で死亡させてしまう。
長嶋大佐はバナー博士を救うことを諦めて、本来のミッションに戻ることを決めるのだった。
零はDVDを停止してトイレに入ると、外から犬の鳴き声が聞こえて来ることに気付く。
パピコの部屋にいたのは行方不明だったもちだった。
もちの突然の出現に驚き、不思議がる零。
そしてもちが何かを吐き出したことから、それがDVDケースの中にあった小さなボタンのようなものだと気づく。
それをDVDケースから取り出して口に含むと、零の視界に「Departture」「2021:02:23」と文字列が表示される。
困惑しながらも口の中でデバイスを転がしていくと、文字は「Arrival」に変化し、数字が切り替わっていく。
そして零は再びDVDを再生し、長嶋大佐がバナー博士を救おうとしている時のタイムレコードを確認する。
2019-03-23 13:45:46PM
「この日の前日に行ければ…本当に……これで…？」
零は口中に含んだデバイスを操作して、2019:03:22に日付を合わせる。
「あっ」
「Flight……」と表示されたかと思うと、視界が真っ暗になる。
視界が開けた瞬間、一瞬の間に目の前に座っていたはずのもちが檻の中に納まり、テーブルや床にはあらゆる物が散乱している。
直前までいた部屋の様子とは明らかに異なっていた。
第86話 約束3
テレビはポーズのかかったゲーム画面が表示されている。
零は檻の中にいるもちがまだ仔犬であることから、タイムスリップに成功したことを確信する。
その時、トイレから「ちほー？」と男の声が聞こえて来る。
青ざめた零は急いで玄関に向かう。
「タイムスリップした！！ すっげーっ。タイムスリップした！！」
零はタイムスリップに成功した喜びを爆発させながら、裸足で外を走り始める。
パピコのマンション近くのコンビニに置いてある新聞の日付は平成31年3月23日だった。
零は胸を高鳴らせる。
「今何時だ？ まだ、間にあうよな……」
パイプの落下が昼の一時だと確認するように呟き、零は目的地までの電車に乗る。
乗り込む直前に見た時計は11時55分を指していた。
目的の駅まで辿り着くが、1時まで残り15分であることを知り、零は事故現場まで走り始める。
事故現場付近に辿りついた零は、正面から博士が歩いて来ることに気付き、慌てて再びダッシュする。
「やばっ やばっ」
（生まれ変わっても、零君と一緒がいいな。）
パピコの言葉を思い出す。
（絶対に見つけてね。私 絶対、絶対！！ 見つけるから。）
パイプが落下する。
しかしそれが博士に直撃する寸前に零は博士にタックルを食らわせるような形で博士と一緒に倒れ込む。
パイプは博士の頭に刺さることはなかった。
仰向けに倒れた博士に抱き着いた零の脚にパイプが2本載っていた。
突然の資材落下事後に集まり、ざわつく通行人たち。
博士はゆっくりと目を開ける。
感想
博士を救えた……？
これで未来は変わるのか？
この博士は暴走したAIの誕生に大いに関わっている。だからこそ長嶋大佐が救おうとしていた。
そんな超重要人物が生存するとなれば、未来はかなり根本的に変わることになると考えられる。
AIはそもそも暴走しないし、当然、未来に戻るとパピコが生きている可能性は大いにあるわけだ。
ただ、そうなった場合、パピコには零との記憶はない。
零にはパピコとの日々の記憶があるのに、パピコにはない。そんな二人が未来を変える前と同様に結ばれるのだろうか。
零の頭に、そうはならない可能性がよぎったからこそ、「生まれ変わっても絶対に見つけてね」「私絶対見つけるから」というパピコの言葉を思い出したんだと思う。
そして、たとえパピコと結ばれなくなろうとも、彼女を助けるために博士を助けるという決意を固めたのかなと思う。
それに零は、たとえパピコと結ばれなかったとしても、好きな人には生きていて欲しいと思ったことだろう。
零の時を超えた奔走が報われると思いたい。
過去に戻ったため、DVクズ彼氏の竜司が一瞬だけ出て来た。懐かしい。
しかし考えてみれば、長嶋大佐が死なず、巨大化デバイスをパピコに継承していなかった場合、パピコは戦いに巻き込まれない。
そうなるとパピコは世の中に発見されず、芸能界入りなんてできなかった。彼女の人生は搾取される状態のままになる可能性が高い。
彼氏はDVクズ野郎で、AVで体を張って稼いだ金を家族に当たり前のように吸い上げられるという悲惨な状況のままというのは非常に気分が悪い……。
悲しいのは、パピコはそれを受け入れてしまっていたことなんだよな……。性格が良いから見捨てることができない。だから集られ続ける。
そんな、将来的には地獄行き決定のくそったれな環境からパピコを救えるのは零だけだ。
引き続き零の頑張りに期待したい。
だが、まずは助けた博士とどのような会話をするかが気になる。
次号が楽しみ。
以上、第86話のネタバレを含む感想と考察でした。
第87話に続きます。
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