第37話 直視
第36話のおさらい
輸送ヘリから飛び降りることを逡巡していたパピコ。
意を決し、空中に身を躍らせた後、見事にパラシュートを開くことに成功する。
ゆっくりとパラシュートで降下しながら、右手の巨大化デバイスを操作し、巨大化していくパピコ。
ある程度の大きさまではスーツが伸びていくが、やがてそれも限界も迎え、パピコの裸体が露わになり、地表へ急速に降下していく。
零は電車の中で母に向けて死を覚悟したような内容の文章をスマホで送っていた。
しかし母に励まされ、何とか気を取り直す。
ビルの屋上に逃げ込んだ女子高生と子供、外国人男性は新宿の街が破壊されていく様を為す術なく見つめていた。
輸送ヘリからダイブし、無事地表へ降り立った隊員たちもまた、何も出来ない悔しさで顔を歪め、どうしたら良いのかと戸惑うばかりだった。
不安げに立ち尽くす女子高生と外国人男性のいる屋上のビル近くに、一体の破壊神が立つ。
ドドドンッ
その破壊神の正面に全裸のパピコが降り立つ。
パピコは破壊神を正面から見据え、堂々と立っていた。
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第37話 直視
バトル開始
三体の巨人によって破壊されていた新宿都心に、巨大化したパピコが現れるのを、零の母は自宅リビングのテレビで観ていた。
ちほヨハンソンに特赦、という速報が画面上部に流れている。
パピコの元に三体の巨人が集まろうとしていた。
零が乗っている電車内では、新宿にパピコが現れたことで他の乗客が盛り上がりを見せていた。
窓の外の様子に乗客の視線が釘付けになる。
零は電車内に伝わる地響きで、パピコと巨人の戦いは始まろうとしていることを悟っていた。
いやだ、無理、と何度も繰り返す。
「そんなの…やだよ…」
敵の連続パンチをかわすパピコ。
ワイドショーはスタジオの画面が切り替わっていた。話題はパピコへの特赦措置について。
スタジオはアメリカの三大ネットワークの全てが新宿の中継を行っている、つまり全世界がこの戦いを見ていることを伝えていた。
世界中が見ている中でパピコが殺されることが恐ろしい、危険な中継だとやり取りするコメンテーターたち。
電車内ではパピコを応援する声が溢れていた。
零も他の乗客に倣い、窓の外を不安げに見つめる。
劣勢
パピコの顔に敵巨人の放った右ストレートがクリーンヒットする。
乗客から悲鳴が上がる。
その一撃をきっかけに、パピコは三体に囲まれてリンチ状態になっていた。
零はビルとビルの間で行われているその光景を見つめている。
顔を殴られ、後ろに吹っ飛んだ先にいるもう一体の巨人に背中を殴られる。
前方に吹っ飛ぶパピコ。ビルに隠れて、零の視界からパピコが消える。
乗客から上がる悲鳴。
窮地に追い込まれたパピコを目撃し、既に泣き腫らしていた零に震えが走る。
地響きだけが、パピコたちが見えない零を始めとした乗客たちに、戦いがまだ続きていることを教えていた。
テレビではパピコの戦いが中継されている。
一方的にやられているパピコを信じられない様子で零の母が見つめていた。
「無理です!! これは!! ああ!! 直視できません!!」
パピコが三体に囲まれて滅茶苦茶にタコ殴りにされている様子がテレビに映し出されていた。
零は視界から消えたパピコの様子を知るためにスマホでツイッターを起動する。
関連ツイートは、パピコの劣勢を伝えるものばかりだった。
窮地
「ちほさん……ちほさん……」
テレビで映しちゃダメなやつ、パピコ死んじゃう、など不穏なワードを目の当たりにして零は泣いていた。
「やだ…いやだ…いや…いや…」
とうとう三体の巨人に捕まるパピコ。
その光景を、地上の自衛隊員たちは何もできずに見つめていた。
零は床にへたりこんでいた。
それでもパピコの動向を知ろうとツイッターを見続ける。
見てられないからテレビを消した、モザイクなしでいいのか、首がもげる、バラバラやだ、など先ほどよりもさらに不穏なワードが並んでいる。
「ああああああ」
パピコが絶体絶命にあることを知ってもなお、零にはただ泣くことしかできなかった。
鼻と口から血を流し、ぐったりとしているパピコの体を一体の巨人が支える。
そしてパピコの背後からはもう一体の巨人がパピコの首を両手で掴む。
「ああああああ ちほさんあああああ」
パピコの首に巨人の力が加わっていく。
感想
どう逆転する?
これ、完全にやられる流れでは……?
ピンチで終わると言うことは次号でどうにかしてこれを切り抜けるというのが連載漫画のセオリーだったりするが、この状況では逆転の目が全く見えない……。
自衛隊の武器もほぼ役に立たないし、パピコに仲間がいるわけではないから助けに来る存在も期待できない。
もし救援があるとすれば、アメリカで戦っていたヒーローとか?
どうにかして切り抜けるんだろうけど、どんな方法があるのかな……。
デバイスをいじって一気に小さくなることで敵の拘束を抜けられないか。
それぐらいしか思いつかない。
それに窮地を脱したところで、どう戦えばいいのか。
一体でもヤバそうな敵なのに、三対一で戦わないといけないというのがそもそも無茶だ……。
いくら巨大化に伴って筋力や防御力も上がっているとはいえ、特別な攻撃手段があるわけでもないので、この結果は想像できた。
しかし実際にパピコがやられているところを直視するのは辛いし、ツイッターの阿鼻叫喚ツイートでパピコの戦況を知るのもまた辛い。
ここまでこの漫画を読んで、パピコが良いヤツで幸せになって欲しい人間だと知っている一読者からしたら、ツイッター実況で恋人のやられる様をチェックしている零の追体験をしているような気分になるわ。
パピコはこの残酷な現実をどう引っ繰り返すのだろうか。
テレビ中継
ワイドショーはこの中継は危険と言いながらも、どうやらツイッターによると実際はパピコの戦いを中継しているようだ。
三対一、しかも容赦ない攻撃を仕掛けてくる敵を相手に、裸の女性がリンチを食らう。
とんでもなくヤバイ絵だと思う。
ツイートにもあったけど、それをテレビで映していいのか?
ワイドショーの出演者は、この中継は危険、パピコが殺されることを恐れている、と言っていた。
それにも関わらず、結局は映すと。
配慮があるような、ないような……。
ひょっとして、これから映す映像はそういうリスクがある映像だと前置きしたってこと?
実際リアルでこういうことがあったら、映すのだろうか。
出演者たちが危惧したような事態になることを思えば映すべきではない。
ただ、視聴者が最も気になることだし、報道という使命の他、視聴率という観点からもテレビ局はこの戦いの様子を映したいだろう。
実際も可能な限り中継はしそうだ。それでピンチになったらスタジオに切り替え、かな。
おそらくリアルなら、完全に巨人に捕らえられたラストの状況になったらスタジオに移るだろう。
人がバラバラにされる瞬間を中継することになったら放送倫理上、まずいじゃ済まない。
しかし零は泣くことしかできないわな……。
恋人のピンチに際して、何もできないのは辛いだろう。
以上、ギガント 第37話のネタバレを含む感想と考察でした。
第38話に続きます。
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