第30話 ロボ
第29話のおさらい
拘置所で寝ていたパピコ。
パピコは世間の騒ぎには気づいていなかった。
その頃、自室を巨人の手に襲撃された零は、巨人と対峙していた。
巨人の手をかわし、両親の誘導を無視して机に向かう零。
そして零は巨人の手に捕まってしまう。
巨人に掴まれた零は、部屋の外連れ去られようとしていた。
しかし零は机付近からカッターを手に取っていた。
カッターの刃を巨人の手に思いっきり突き立て、切り裂いていく。
反撃を受けた巨人は、零を握っていた手を離し、悪態をつきながら去っていくのだった。
夜が明けると、付近の路上には昨夜の巨人たちによる横暴により亡くなった人たちが倒れていた。
無事に朝を迎えた零と両親はリビングで食事をしていた。
テレビのニュースは自衛隊が動いている様子をレポートしている。
自衛隊が動いたことで零の両親は完全に平静を取り戻していた。
スマホで情報収集をしていた零は、ツイッターのタイムライン上のあるツイートに目を留める。
それは”パピコ釈放運動委員会”というアカウントによる、六本木の巨人を2時間で倒したパピコを釈放しよう、という内容だった。
東京中の監視カメラを調べてもパピコが一般人を害した事実はない、という内容も含まれており、それを読んでパピコが無実だと安心する零。
”無実のパピコ 真のヒーローを釈放せよ!!”
パピコ釈放委員会のツイートは続く。
テレビは、市街地で巨人に立ちして一斉に銃撃を開始する模様を伝える緊急生放送を行っていた。
銃弾を受け、血を吹き出して次々に巨人が倒れていく。
その作戦は東京各地で同時に行われていた。
自衛隊が巨人たちを倒していく映像を見て、零の両親はどこか楽観的な様子を見せていた。
しかしスマホで情報を集めていた零は、安心するのはまだ早いとばかりに、いや、と呟く。
零が見ていたETEの掲示板では、巨大ロボ、という書き込みが連続で投稿されている。
その時、ちょうどテレビの画面には渋谷駅に巨大ロボが現れた様子が映し出されていた。
中継のリポーターは自衛隊が退避していく模様を伝えている。
「これは!! なすすべありません!!」
前進を続ける巨大ロボ。
第29話の詳細は上記リンクをクリックしてくださいね。
第30話 ロボ
巨大ロボに蹂躙されていく渋谷
リビングのテレビ画面にくぎ付けになっている零と両親。
画面には巨大なロボが渋谷に出現している様子が映し出されている。
リポーターはその巨大ロボットがハリウッド映画でみたものだと実況を続ける。
想像を絶する光景を目のあたりにして零も両親もただただ驚愕していた。
ロボットの肩部から一気に何発も射出された弾はビルに命中する。
巨大ロボットに対する有効な攻撃手段を持たない自衛隊員は、その場に立ち尽くしてロボットの行進を見ているしか出来なかった。
しかし崩壊していく建物の瓦礫を避けるために蜘蛛の子を散らしたように退避していく。
その様子を、成すすべなく撤退していく、と実況するリポーター。
リポーターはヘリコプター上から、巨大ロボットに蹂躙されていく渋谷の街を俯瞰しながら報道を続けていた。
「渋谷が!! 渋谷が地獄絵図です!!」
CMに切り替わると同時に、力なくソファに腰を下ろす父。
再開した報道番組は、安倍総理の動向を伝えていた。
それを見ることなく、零はもちを抱き上げて自室へと戻っていく。
まだ散らかったままの自室で、零は机に向かってスマホを操作していた。
”安倍首相 ETEとは因果関係が証明できない。自衛隊の総力を結集して対応する。”
「はあ。……大丈夫……なのかよ……」
ニュース記事、そしてそのコメント欄を読んでいく。
だから言ってるだろ!!
パピコをさっさと出せ
この間に何人死んだと
思ってんだよ!!
この期に及んでパピコを釈放しない
政府は虐殺者と変わらない。
速やかにパピコに土下座して止めて
もらってほしい。
膨大な量のコメントはパピコの力で撃退しろという論調が目立っていた。
総攻撃
渋谷の街に自衛隊の戦車や戦闘ヘリコプターが結集していく。
テレビでは渋谷の俯瞰の映像が流れていた。
巨大ロボットの攻撃を受け続けたことで、渋谷の各地で火と黒煙が上がっている。
そしてリポーターは、巨大ロボットが渋谷から新宿方面に移動していくことを伝える。
”ざまあああああ トンキンざまああああ”
”シブヤ逝ったああああ”
ETEの掲示板ではひどい書き込みが続いていた。
戦闘ヘリコプターが巨大ロボットに向けて射撃を開始する。
地上では戦車もその攻撃に参加し、巨大な的となったロボットはパーツを弾けさせていく。
リポーターは自衛隊の総攻撃が巨大ロボットに効いており、グラつかせているとアナウンスしていた。
巨大ロボットは肩部を中心に体中から弾を射出して自衛隊に反撃する。
弾は戦闘ヘリコプターを一気に何台も撃墜していくのだった。
戦車も巨大ロボットの行進する衝撃によって大きくバランスを崩してしまう。
零は机でスマホから情報を収集していた。
youtubeには”パピコ釈放希望!”、”パピコ復活希望!! みんなで署名しよう!!”といった内容の動画がアップされていた。
その内の一つを再生すると、もう日本国民のほとんどがもうパピコに頼るしか方法がない、と訴えかけるものだった。
おおおお、と階下から父の声が聞こえてきたのが気になり、零はリビングに戻る。
父は降りてきた零には反応せず画面に釘付けになっていた。
そして再び、おおおおー、と声を上げる。
地上の戦車の砲撃が巨大ロボットに次々とヒットする。
巨大ロボットはバランスを失い、胴体を傾けていく。
「おぉっしゃあああああ」
ソファから腰を浮かして、思わず叫ぶ父親。
巨大ロボットはアスファルトに横倒しになり、動くことを止めていた。
テレビに安倍総理が映し出され、国民に向けて状況の報告と説明をしている。
「今回は自衛隊の作戦が成功しました。自衛隊の戦力はかなり減ってしまいました。また犠牲者の数もこれから、」
「自衛隊、すっげーじゃん 超見直した!!」
拍手しながら喜ぶ父親。
零はその傍らに立ち、無言でテレビ画面を眺めていた。
感想
自衛隊の勝利
自衛隊がマジで頑張った。
自衛隊は現実のみならず、フィクションに置いても最近は割と活躍している印象がある。
これまで、そして今でも基本的にはそうなのだが、敵が強大であることを表現する為に、どうしても引き立て役としてやられてしまうことが多い。
しかし今回の話の中では多くの犠牲者を出しながら、苦戦しつつも見事な勝利を収めた。
俯瞰の背景の中を生き生きと動く巨大ロボットと、戦闘ヘリコプターや戦車による攻防はすごい迫力だった。
この圧倒的な画力。マジですごいなぁ。
巨大ロボットは創作ではすでに身近だが、現実に敵として顕現したらそれは人知を超えた恐るべき存在でしかない。
そんな得体の知れない敵に対して果敢に攻撃を加え、あまつさえ倒してしまうというのは本当にすごいと思う。
多分自分も、テレビの前で零の父と同じような反応になるんだろうな~と思った。
スポーツ中継見て熱くなって叫ぶようなタイプ自分みたいな人間はほぼ間違いなくそうなるだろう。
絶対敵わないと思っていた相手をたおすのを目の当たりにすれば、そりゃ盛り上がるよ。
でもこれで終わるわけがない。
パピコの解放はいつ?
今回の自衛隊の勝利。
この一時的な勝利こそが、この後の絶望をより深いものにするという展開だろうな。
徹底的に絶望的な状況になり、満を持してパピコが登場する、と。
でもそんな理想的な流れになるかどうか不安もある。
何しろ政府はまだETEと一連の災害の関係性を認めていないようだし、パピコの処遇に関しても、どこまでも法に則っていく方針のように見える。
正直にパピコを収監し続けていたなら、ETEに東京を攻められ続けている以上、間もなく日本は致命的な被害を受けてしまうだろう。
法治国家として厳格に法を運用しようとしていく姿勢はとても素晴らしいことではあると思うけど、状況が状況だし、フィクションの中だからこそ、どんな手段を使ってでも日本がぶっ壊されていくのを止めてみせて欲しい。
パピコを解放して敵にぶつけるのが現状ではもっとも有効だと政府がどの時点で認められるかだな。
政治は結果だとして、政治家が胆力を伴った行動を起こすところが見たい。
しかし、この漫画ではここまで国家権力の内幕がほぼ描写されていない。政府はおろか、警察や自衛隊の名前有りの登場人物が出て来ていない。
というか、首相は安倍さんそのまんまじゃん。これっていいのかな(笑)。
現状では、名前ありの政治家は安倍さんだけ。そして彼らの動きは描写されない。
やはり今後も、この漫画は零とパピコとその周辺にフォーカスを当てて物語が進行していくと見るべきか
となると、やはりパピコが自発的に動く可能性の方が高いのかな。
でも日本が得体の知れない攻撃を受けているという情報をパピコが知る機会が、東京拘置所が攻撃を受けでもしない限りは無いっぽいから、政府関係者……法務大臣が超法規的措置として東京拘置所に連絡するか、もしくはパピコの元を直接訪ねて日本が見舞われている脅威の排除を直接依頼するみたいな展開になっていく?
次号はより大きな脅威に東京が晒されるのか。
それとも案外今回はロボットを倒したことで一段落するのか。
そしてパピコ待望論が盛り上がって……とか?
どこまでも先が読めない展開で、次号が楽しみ。
以上、ギガント第30話のネタバレを含む感想と考察でした。
第31話に続きます。
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