第56話 約束
第55話のおさらい
零は屋上で上級生から、パピコの電話番号について問い質されていた。
上級生はパピコを呼べと要求しながら零を殴り続ける。
その光景を前に中島は震えていた。
勇気を出して自分の上履きを投げつけて抵抗するも、零と共にボコボコにのされてしまい、二人は保健室で治療を受けるのだった。
駅のホームで中島と別れた零はスマホでパピコ関連のツイートを読みつつ自宅に向かう。
ツイートの内容は、パピコが未成年に手を出したことを過剰に非難するものばかりだった。
問題となっている旅行を示唆するパピコの自身のツイートには、リツイートが20万件を超えているのに対し、いいねは1000件もついていない。
横山田家の周囲は報道陣が取り囲み、大変な騒ぎになっていた。
母は零のケガの様子から誰かにやられたのかを問い質そうとする。
警察に電話するという母の主張をまともに受け止めること無く、零は自室に入っていく。
点けたテレビではちょうどワイドショーがパピコの話題について報じていた。
パピコが淫行条例に引っかからないかどうかで盛り上がっているのをBGMに、零はスマホでまとめサイトを確認する。
パピコを取り上げた記事のタイトルはゲスなものばかりだった。
ワイドショーはパピコが仕事契約したCM27本のスポンサーが降りたこと、そして映画やドラマの製作中止で違約金の額が30億という途方もない額を越えるのではないかと解説していた。
テレビを消し、零は呆然としていた。
やがてその目から涙が流れる。
零は立ち上がって、嗚咽する。まるで子供のように泣き続けていた。
夜、ベッドで寝ているとパピコから電話がかかってくる。
社長に相当怒られたというパピコに、零は、聞いて、と話を切り出す。
「僕達…わ……別…れよ…う…」
第56話 約束
2年
パピコに別れを切り出した零。
聞き返してくるパピコに零は再び言葉にする。
「僕たち…別れよう……」
突然のことにパピコは動揺し、別れるのは嫌だと繰り返す。
零はそんなパピコに理由を告げる。
「僕は……ちほさんの足を…ひっぱりたく…ないんだ…」
零は足を引っぱってない、とパピコは泣きながら零の言葉を否定する。
しかし零はそんなパピコの擁護を振り切るように、嗚咽を堪えながら、パピコを生き甲斐を奪いたくないと続ける。
生き甲斐は零だと言って、なんでと問いかけるパピコ。
「だって…お芝居楽しいって…最近お芝居一生の仕事にしたいって言ってたでしょ?」
零がいないことに意味はないとして、事務所をやめると言い始めたパピコに零は話を聞いて欲しいと呼びかける。
パピコは今から電話をして事務所や芸能界と縁を切ると仄めかす。
「またすぐ電話するから 切るね…」
「2年!! 2年……2年……したら…」
パピコは電話口で零の言葉に耳を傾ける。
「高校在学中に映画撮って、ぴあフィルムフェスティバルに映画出品して…映画監督になって………ちほさんを主演女優に、迎えに行くから…」
「待っててくれないかな……絶対……迎えに……行くから…」
激しく泣くパピコ。
パピコに引っ張られるように零も再び片手で顔を覆って泣き始める。
ひとしきり泣いた後、零の願いを聞き入れるパピコ。
「わ…かった…………グスッ…グスッ…」
「2年…待っててくれる?」
確認するように訊ねた零に、パピコは、うん、と答える。
「絶対……迎えに行くから…」
「うん……わかっ…た……」
「……切る…ね……」
零が電話を切ったあと、パピコは一人自室で声を上げて泣いていた。
ベッドに突っ伏し、泣き続ける。
ペットの犬「もち」はパピコに反応して鳴いている。
ひとしきり泣き続けたパピコは、バスルームの浴槽に服を着て、座った姿勢のまま頭にシャワーの水を受け続けていた。
テレビのリポーターはアメリカがハワイの首都ホノルルで、サタンに対して核を使用したことを伝えている。
核攻撃により生じたキノコ雲がもうもうと発達している。
しかしキノコ雲から全く無傷のサタンの姿が現れる。
「ああ!! こんな!! こんな絶望感がありますでしょうか!?」
感想
別れて良かったのか?
これは別れた……ことになるのか?
そもそも零は石垣島に行く前から、どんどん高みに昇っていくパピコの邪魔になりたくなかったんだろうな。
パピコが英雄として祭り上げられた当初から、離れたところからパピコを見つめながら、何か物思いに耽っているように見えた。
今回の零は、パピコに対して自分の考えを伝えていて男らしいと思う反面、これで良かったのかなとも思った。
厳しい意見を言うと、これって逃げなんじゃないかな……?
だってパピコは別れたくないって言ってる……。零のことを必要としてるのは明らかだろう。
その時の感情に任せた発言なのかもしれないけど、零と別れるくらいなら芸能界を捨てるという勢いだった。
そこまで自分の事を必要としてくれていて、尚且つ自分も好きにも拘らず、二年間距離を置こうというのは零のワガママでもある気がしてならない。
二人で工夫してこの危機を乗り越えていこう、とした方が良かったのではないか?
二年は短いようで長い。
果たして心に穴が空いてしまったパピコが、他の男に迫られて靡かないのだろうか。
そんな保証はどこにもない。
零は好きな女について、相手も自分の事を想ってくれている限りは、絶対にその手を離してはならないということを知らない。
まだ高校生で若いから当然と言えば当然なんだけど、でもやっぱちょっと甘いよなーと思う。
仮にこのまま別れた状態が続くとして、二年後にお互いに寄りを戻せるかどうかはパピコが他の男に靡かないかどうかがカギだと思う。
零が他の女性に心奪われる可能性もないことはないが、零は別に女性に言い寄られるような魅力を持っていない。
その逆に、芸能界にいるパピコには日頃から魅力的な男からの誘惑が多過ぎるし、何より今は心に負ったダメージが大き過ぎる。
女性全員がとは言わないけど、辛いときに誰かに縋りたくなるのは女性の方が多いと、あくまで個人的な経験から思う。
女性を口説く一番最適なタイミングは、傷心の時だと言われる。
零はパピコと別れると言った。
でもそれはあくまで物理的に会わないというだけで、連絡は欠かすことなく、彼女の心をケアしてあげたら良いと思うんだよなー。
サタンがアメリカから日本へ
サタンによる被害がとんでもないことになっている。
まさか被害地域がアメリカ本土からハワイに移っているとは……。
しかもホノルルってハワイの首都じゃん……。
そこに核を投下するって、どんだけ追い詰められてるんだよ……。
サタンはアメリカ本土の東の端に位置しているニューヨークからずっと西進し、ハワイまで到達してきた。その延長線上にあるのは日本列島だ。
パピコと零のスキャンダルに沸き立っている日本列島だが、もうじきそんな平和な時間は終わる。
アメリカに出現したサタンはとんでもなく強い。
アメリカで活躍していたヒーローは残らずやられてしまったようだ。
日本でサタンにまともに対処できるのは桃ノ木少佐たち未来から来た戦士と、パピコくらいだろう。
核攻撃が効かなかった以上、自衛隊の装備では対処は不可能であることを意味していると言って良いと思う。
桃ノ木少佐たちの力は未知数。そしてパピコは零に別れを切り出されて傷心……。
この戦力でサタンに対抗できるのだろうか。
もしサタンが日本に上陸したとして、果たしてどんな戦いが展開されるのかな……。
激突の時は静かに近づいている。
最近は随分と敵との戦いがご無沙汰だったし、この世界の住人である零やパピコたちには悪いけど、ものすごく楽しみ。
以上、ギガント第56話のネタバレを含む感想と考察でした。
第57話に続きます。
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