第38話 行方
第37話のおさらい
新宿に巨大化したパピコが現れたのをテレビは中継していた。
それを零の母は自宅リビングのテレビで観ている。
画面上部には、ちほヨハンソンに特赦、という速報が流れている。
パピコと三体の巨人との戦いが始まろうとしていた。
新宿都心で停車していた零が乗っている電車の中では、パピコの登場により大いに盛り上がっていた。
しかし零は一人、恋人が死地に赴こうとしているのを予感し、いやだ、と何度も繰り返す。
敵による連続パンチをパピコは見事にかわしてみせる。
ワイドショーではその戦いの様子を映さず、スタジオを映している。
話題はパピコへの特赦措置について、そして現在の新宿の様子はアメリカの三大ネットワークの全て、つまり全世界に中継されていることを伝えていた。
世界中の衆人環視の元、パピコが殺されることが恐ろしい、これは危険な中継だと恐れるコメンテーターたち。
電車内ではパピコを応援する声が上がっていた。
零も他の乗客と同様、窓の外を不安げな視線で見つめる。
敵巨人の放った右ストレートを食らい、弾かれたように頭を揺らすパピコ。
その光景に乗客から悲鳴が上がる。
そのクリーンヒットを境に、パピコは三体からの打撃を食らうようになっていた。
三対に完全に囲まれると、間もなくリンチ状態へと事態が悪化していく。
ビルに隠れてしまい、既に零のいる電車内からはパピコの様子を見ることは出来なかった。
一方、テレビではパピコの戦いが中継されていた。
リンチ状態のパピコを零の母は信じられない様子で見つめていた。
残酷な光景を前に、直視できません、とリポーター。
パピコが三体からタコ殴りにされている様子は今なおテレビに映し出されていた。
零はパピコの動向を知ろうとツイッターを起動する。
そうして検索して出てきたパピコ関連のツイートは、どれもがパピコの劣勢を伝えるものだった。
テレビで映しちゃダメなやつ、パピコ死んじゃう、などの不吉な言葉の羅列に零は泣いていた。
パピコは三体の巨人によって捕まっていた。
それを何もできずに見上げるだけの地上の自衛隊員たち。
零は腰が砕けたように床にへたりこむ。
しかしツイッターを見ることは止めなかった。
見てられないからテレビを消した。
モザイクなしでいいのか。
首がもげる。
バラバラ、など、内容はさきほどよりも凄惨になっていた。
「ああああああ」
零はパピコが絶体絶命にあることを十分に知っていた。
しかしただ泣くことしかできない。
パピコは鼻と口から血を流し、虚ろな視線を宙空に投げてぐったりとしていた。
その体を一体の巨人が支えて、もう一体がパピコの背後から首を両手で掴む。
悲痛な叫び声を上げる零。
パピコの首に万力のような巨人の力が加わっていく。
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第38話 行方
バラバラ?
ワイドショーはETEで行われていた新しい提案が可決されたことを伝える。
それは「パピコがバラバラになって死ぬ」が投票結果の第一位になったという情報だった。
その結果を実現するかのように、パピコを捕まえた二体の破壊神は、一体がパピコの腰を持ち、もう一体は顔を引っ張っていた。
抵抗できずに涙を浮かべるパピコ。
その脳裏には笑顔で、ちほさん、と呼び続ける零が思い浮かんでいた。
電車で、零は膝をつき、涙を浮かべてスマホを見つめていた。
周りの乗客たちはパピコが死んだと口々に呟く。
零は首を何度も振り、ツイッターの実況を見つめる。
パピコがバラバラになったと悲鳴を上げる乗客たち。
零の母が観ていたワイドショーでも、パピコがバラバラになってしまったと伝えていた。
画面を見つめて、呆然とする零の母。
零は首を何度も振り、うそだ、と呟きながらツイッターを読み進める。
その大半はパピコがバラバラになったことを嘆くものだったが、そういったツイートの中にパピコが一瞬で消えたように見えたという内容を零は発見していた。
起死回生
実際、パピコはバラバラにはなっていなかった。
小さくなって、敵を観察するように見上げながら、息を切らせて地上を駆けていた。
走りながら巨大化デバイスに触れる。
「負けて!! たまるかっ!!」
ワイドショーも、パピコが崩れ落ちたかのように見えたが、消えてしまったのではないかと騒ぎ始める。
零の母は息を呑んで事態を見守る。
そして、巨人たちがパピコを探しまわっている様子から、パピコが消えたとアナウンスが続く。
零はスマホの画面を見つめながら呟く。
「ちがう……あの時と一緒だ…」
ツイッターでも、パピコがバラバラになったのか、それとも消えたのか、どちらなのか困惑するつぶやきが増え始めていた。
自衛隊もパピコもだめ、東京が終わったなど、一向に事態が良くならないことを嘆く声もある。
乗客もこの先どうするのかと不安の声を上げ始める。
しかし零は諦めてはいなかった。
「いや……こんな…ことで…」
じっとスマホを見つめていた零は確信した様子で呟く。
「ちほさんは……死なない…」
パピコは一体の巨人の背を駆け上がっていた。
一体の巨人が背中をしきりに気にしている様子を、まるで虫を払っているかのような動き、とリポーターが伝える。
「いけ…」
零はスマホを見つめたまま、自然と呟いていた。
さらに言葉に力を込める。
「いけ!!」
一体の巨人の胸元が急激に膨らんでいく。
巨人の内部で巨大化したパピコは、メキメキと音を立てて巨人の体を勢いよく突き破る。
崩れ落ちる巨人。
「きゃーっ」
歓声を上げる零の母。
テレビの前のソファの上で興奮した様子で拍手しながら何度も飛び上がる。
ワイドショーは、巨人の内側からパピコが巨人を食い破って出てきたことを伝えていた。
感想
犯罪者からヒーローへ
お母さんの反応が超かわいい(笑)。
やられたと思ったら起死回生の反撃……。そりゃ飛びあがって拍手もしますわ。
まだ二体残っているし、新宿が救われたわけではない。
でもそれまで日本は三体の敵に為す術なく、やられっぱなしだった。
それを思えばパピコの攻撃は新宿を見守っていた人たちに大きな勇気を与えるものだっただろう。
乗客の中の一人が言っていたけど、元々、三体もの敵を一度に一人で相手しようなんて無茶でしかない。
三体に捕まり、バラバラにされかける大ピンチに陥るのも無理はなかった。
数的劣勢の中、まずは、よく一体倒した。
やはりパピコが奴らに対抗するにはこの方法しかない。
彼女にまともな武器も必殺技も無い以上、敵の体が六本木の破壊神のように微妙に隙間が空いているなら、小さくなってもぐりこんで一気に巨大化し、内部からぶち破るのが有効らしい。
これはシンプルな攻撃方法だが、防ぐのは難しいのではないか。
このまま残り二体も同じように倒したなら、パピコは間違いなく日本を救ったヒーローになる。
大臣から依頼を受けていたし、六本木の街を破壊した罪は恩赦の扱いになるのかな……。
犯罪者から一転、ヒーロー。
幼少期にウルトラマンに憧れていたパピコは一体どう思うんだろう。
しかしまだ戦いは終わっていない。
果たして次号で残り二体に対してどう戦うのか。楽しみだ。
以上、ギガント第38話のネタバレを含む感想と考察でした。
第39話に続きます。
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