第92話 撃ちまくれ
目次
第91話のおさらい
レウウィスは、手元はぼんやり見えるようになってきているものの、まだまだ閃光によるダメージをまだ回復できていなかった。
レウウィスは自分を殺しに来るように、適当な人間を絶望に追い込み見逃し続けてきたことを思い出す。
これまでその「種蒔き」は実を結ぶことはなかったが、現在、相対しているエマ達には違うものを感じていた。
下手をすると自分を殺しかねない油断ならない人間のエマ達こそ、レウウィスが狩りたいと望んで止まない”人間”だと考えていた。
レウウィスはこれまでに無い殺意と仕掛けで自分を殺しにくるエマ達の行動に愉悦を覚えていた。顔を狂気に歪めてエマ達を追跡する。
エマはさきほど”気になっていたこと”をレイ、オジサン、ナイジェルに報告した時のことを思い出していた。
(どうしてあの鬼 あの時に 手をすぐに再生しなかったんだろう)
エマの言葉により何かに気付いたレイと、まだピンと来ていない様子のナイジェル。
エマは、ナイジェルが撃ち抜いたレウウィスの左手が深手だったのにすぐには自己修復しなかったことから、鬼の再生は自動ではなく自分の意思によるものではないかと指摘する。
そのエマの指摘を受けてレイは人間に細胞分裂の限界――ヘイフリック限界があるように、鬼にもレウウィスに限らず再生限度に回数があったり、あるいは再生に際して膨大なエナルギーを消費するのではないか、とその不利点に関して仮説を唱える。
ナイジェルは、ルーチェがすぐに回復していたことを思い出す。
エマはギリギリで手で防がれてしまったものの、オジサンがレウウィスを狙撃したことを正しかったのだと呼びかける。
それを受けてレイは、レウウィスに閃光弾が効いていて、その視覚が回復する前に、弱点の目に限らずレウウィスの身体全体を撃ちまくるという方針を示すのだった。
オジサンはエマ、レイ、ナイジェルとは別行動をとっていた。
オジサン以外の3人は追い縋ってくるレウウィスを交代で銃撃し、ギリギリでレウウィスの肉薄を許さない。
レイはレウウィスの様子から、閃光弾がまだ効いているが、徐々に回復してきていることを感じていた。
レウウィスの目は回復はしているものの、銃弾を掴めるほどではないと喝破したエマ。
狭い屋内であればレウウィスよりも自分たちが有利だと確信して攻撃を続ける。
元々の作戦で使用するはずだった武器を惜しみなく使う覚悟を見せていた。
その一斉斉射を受け、レウウィスは一旦銃弾を避ける為に身を隠す。
レウウィスは自分の弱点である再生限界に気付かれたことを内心で喜んでいた。
レウウィスは屋内での戦いをこれ以上継続することを止め、外に出て仕切り直そうと通路の壁を破壊する。
しかし、屋根の上でレウウィスが外に出てくるのを待ち構えていたていたオジサンがすかさず狙撃するのだった。
さらにエマ達は逃走するレウウィスの背中に弾丸を浴びせ続ける。
エマ達に反撃しようとしたレウウィスは、突如自分に向けて迫ってきた瓦礫を躱す。
そして、何が起こったのかと戸惑いを見せる。
「22194 22194 22194」
アダムはノーマンのナンバーを繰り返す。
前回第91話の詳細はこちらをクリックしてくださいね。
第92話 撃ちまくれ
アダム躍動
自分に向かって飛んできた巨大な瓦礫をよけたレウウィス。
戸惑っているレウウィスの前に、ノーマンの数字22194を念仏のように唱えるアダムがいる。
アダムの登場にただただ驚くレイとエマ。
「いけ!! アダム!! その怪物をブッとばせ!!!」
どこからか飛んできた指示に従い、アダムは一瞬でレウウィスと間合いを詰めて大ぶりのパンチを叩きつける。
空高く飛ばされながら、レウウィスは人間に腕を折られ、殴り飛ばされたことに戸惑っていた。
そしてアダムに関して思い出す。
(バイヨンが出資した新農園(ラムダ)からの試食品)
アダムの力に感嘆するエマ。
そしてヴァイオレットが合流したことを喜ぶ。
「今だ!! お前ら!! チャンスだ狙え!!」
オジサンからの指示に従い、エマ、レイ、ナイジェル、ヴァイオレットは銃で中空のレウウィスを狙う。
レウウィスは逃げ場がないことをまずいと感じていたが、中空に浮いていてよけることが出来ない。
エマたちはレウウィスに対して一斉斉射するが、レウウィスは斃される事無く地面に着地するとすぐに弾を避けるべく横移動を繰り返す。
(この期におよんでまだよけやがる)
レイは必死にレウウィスを狙う。
「エマ! アダムとはそこで会った!」
ヴァイオレットは一旦撃つのを止めて、確認したい、閃光は? と短く問いかける。
エマは、閃光弾は撃ったがもう効果は切れる、と短く答える。
そして、攻撃を当てさえすればダメージになるから目に限らず狙って銃弾を当てて、と指示する。
わかった、と言ってから笛を吹き、ヴァイオレットが声を張る。
「アダム!! 投げまくれ!!」
その言葉に従うアダム。
建物の大きな瓦礫を両手で持ち上げる。
投げられたそれをまた躱しながら、レウウィスは自身の再生能力低下をエマたちに気づかれていることを察し、やりづらいく感じていた。
そして、老いもあって再生を繰り返してきた自身の身体にガタがきているのを認める。
(老いとは何とも歯痒いものだ)
まぁでもこんなのものか、とレウウィスは頭を切り替える。
エマたちから食らわされた電撃によって、死滅した全身の細胞を再生したのを始め、閃光弾で視神経を失い、銃撃によって手を飛ばされた。
レウウィスの反撃
レウウィスは”昔、無茶苦茶に暴れ過ぎたせい”でもあるが、ここまで動いたのは久しぶりだと感じていた。
かつて多くの人間を容易く葬ってきたレウウィスは、体中に銃弾を受けながらも不敵に笑う。
(せっかく何百年ぶりに楽しいのにここで斃れる私ではないよ)
踵を返して疾走るうレウウィス。エマたちから距離を取る。
エマ達はレウウィスの視覚が回復し切るまでがチャンスであり、この策をしくじれば自分たちの負けなので、それまで防ぎきれば、と考えていた。
そしてエマ達は、レウウィスに対する銃撃に手応えを感じていた。
しかし同時にそれだけでは止めを刺すには足りないこともわかっていた。
「させないよ」
レウウィスがヴァイオレットに一直線に向かう。
そこにエマが閃光弾を投げ込むが、レウウィスはピンを抜いた音からその位置や方向を把握し閃光弾が光を発する前に顔を守る。
そこにレイの銃撃。
これも察知していたレウウィスは横移動でレイの弾を躱していく。
レウウィスは目の前のレイにばかり注目していたが、屋根の上にいるオジサンが自分の下あごを撃ち抜いてきたことに驚く。
まさかエマが……!?
エマとナイジェルは急速に近づいてくる何かの気配を感じていた。
アダムが立て続けにレウウィスに向かって崩壊した家の瓦礫を投げつける。
アダムを単調だと評し、複雑な思考や動作が難しいかなとレウウィス。
「よく見給え その先には二人がいたはずだよ」
当たる寸前で回避に成功する二人。
視力が回復してきたレウウィスはアダムに対して一瞬で間合いを詰めるとその鳩尾を思いっきり殴って家の外壁に叩きつける。
さらに、オジサンはバランスを崩して落ちそうになっている。
(アダム!! オジサン!!)
二人の危機を感じたエマ。
レイはレウウィスが今にも視力を回復するのを警戒し、これが最後のチャンスだと考えて指示を飛ばす。
「撃ち尽くすぞ!!」
それに従い再び一斉斉射を行おうとエマ達は銃を構える。
しかし次の瞬間、レウウィスの長い爪がエマの腹を背後から貫いていた。
「え」
エマは驚愕の表情を浮かべ、声を出していた。
残念、時間切れだ、とレウウィスはエマに背後から声をかける。
「エマーーーー!」
明らかに深手を負ったエマを目の当たりにし、誰ともなく叫ぶ。
感想
エマの安否は?
アダムとヴァイオレットの援軍によりレウウィスをいい感じに追い詰めたかと思えばこのラスト……。
このレウウィスの爪は刺すことに特化してるわけではなく、切り裂く形状になってるように見える。
ここまで深々と刺したのであれば引き抜くのは不自然だ。
振り下ろしてしまうことでエマは腹から股にかけて切り裂かれて即死じゃないのこれ?
ここから生き残るのはいくらなんでも無理があるような気がする。
バイヨンに爪で腹を貫かれたオリバーとちょっと重なった。
そういやオリバーは生きているな……。
バックナンバーで確認してみたけど、オリバーがバイヨンに刺されてあ時は、バイヨンがオリバーの腹に爪を突き刺した瞬間にはルーカスが銃でバイヨンに止めを刺していたし、腕が胴体から離れていた。
それに、バイヨンの爪はレウウィスほどには長くはなかった。
つまり、エマが食らった一撃は致命傷となる可能性が大だと思う。
視覚が回復したのと併せて、これは一転大ピンチ。
もしエマがこれ以上傷を広げないようにするのであれば、誰かが弱点である目を貫いてレウウィスの動きを止めるしかないのではないか。
電撃も有効だけどその準備は出来ていないように見えるし、戦士たちの中でスナイプ能力の高いオジサンも屋根から落ちるのを回避したばかりで銃を構えてすらいない。
これは次週が楽しみだわ。爪を引き抜くのは不自然だけど、そこに合理的な理由があるならそれでいいや。
アダムに関する疑問
レウウィスのモノローグによりアダムの情報が補足された。
”バイヨンが出資した新農園(ラムダ)からの試食品”。
このセリフのコマでは、アダムのバックに、おそらくは実験を受ける前、痩せていた頃の姿が背後にオーバーラップしている。
胸板や肩の筋肉を見る限り、どうもアダムは筋骨隆々の身体つきだったっぽい。
顔は見えなかったけど、イケメンの雰囲気を感じる。
”複雑な思考や動作はまだ難しいかな”。
これもレウウィスのモノローグから。
アダムは学習し、成長する可能性があるということなのか。
てっきり実験の結果、人並外れた筋力を手にしたのと引き換えに知能が低いままなのかと思っていたけど……。
しかし、ラムダから試食品として提供されていたのにバイヨン達はなぜアダムを食べなかったのだろう。
狩りの対象として楽しむことを選択しただけなのか。
アダムが狩りに参加している様子はなかった。
多分、風車小屋でずっと待機していたことが多かったのではないかと思う。
レウウィス達はお楽しみとしてとっておくつもりだったのか……?
でもヴァイオレットが笛を吹いてアダムに”(瓦礫を)投げまくれ”と命じたということは、どうもヴァイオレットたちとアダムが一緒に戦闘をするのは初めてではないっぽい?
ヴァイオレットに”その怪物をブッ飛ばせ”と命令されてその通りレウウィスをワンパンでブッ飛ばしてるし、さながらプログラムみたいな一面があるようだ。
戦闘自体はこれが初めてで、普段から笛を吹いて指示していたのは日常生活における力作業の時とかだった可能性もあるか。
不思議なのは持ち場である風車小屋からなぜこのオリバー達で決起するタイミングで動けたのか。
広場に向かったペペが、アダムが風車小屋の入口にいないことを不思議がっていたことからアダムの行動はオリバー達とは意思が統一されていたわけではなかったということだと思う。
どうもアダムは誰かに指示されてエマ達の援軍として駆けつけたわけではないぽいんだよなぁ……。
自分の意思でレウウィスを探していた、というより、呼び寄せられていたというのが一番近いような……。
ただ、レウウィスを攻撃したのはヴァイオレットからの指示があったからだった。
そもそもアダムがノーマンの数字を知っているということは、比較的最近までラムダにいたということになる。
最近来たはずのアダムがこの猟場において異分子であることは間違いない。
エマが猟場に来るまでGV農園出身者だけだったのが、まずアダムがやってきて、次にエマがやってきた。
アダムに関する興味と疑問は尽きない。
レウウィスが強い
人間の死体の山を背景にレウウィスの若い頃の姿が描かれていたけど、こんなやつに勝てるわけないわ……。
ノウスに近い体型だけど、筋肉量が尋常ではない。
現在のレウウィスのひょろひょろ加減は確かに老人的であり、本人が自覚していた通り、少なくとも外見だけを見る限りでは現代の姿の方が衰えを感じさせる。
しかしレウウィスが強いことには何の変わりもない。
動きは早いし知能も高い。
加えてエマたちが何とかレウウィスと戦えていた理由である、レウウィスから奪っていた視覚が回復した。
さらに、エマが致命傷に近い傷を負ってしまった。
果たしてエマの運命は? レウウィスを無事倒しきることが出来るのか。
以上、約束のネバーランド第92話のネタバレを含む感想と考察でした。
第93話に続きます。
コメントを残す