第49話 教えて
第48話のおさらい
すんでのところでレイに逃げられた鬼は、レイが残した「06-32で会おう」と大木に彫り込まれた文字を見ていた。
鬼は、暗号の意味は分からなくてもレイ以外の子供は生きていると直感する。
一方、鬼から安全を確保できる逃げ道を教えるというソンジュとムジカについて行くエマとレイ、そして子供達。
道中エマとレイはソンジュから聞いていた世界に関する情報をドンとギルダに話す。
鬼の社会に身を置いている絶望と、人間の社会に行くことが出来れば安全が確保できると喜ぶ子供達。
そのために、漠然とした目標だった「ミネルヴァに会う」がエマ達にとって確固とした目標になった。
さらに、子供達は無茶を繰り返すエマとレイが心配なあまりエマとレイに説教する。
無茶をするなという子供達からのメッセージをエマとレイは素直に受け取るのだった。
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「おいしい…」
料理のおいしさに感動しているエマ、ドン、ギルダ、他の子供達。
「何これ」
「料理」
レイが短く答える。
どうやったらこんなおいしく作れるの? と騒ぐ子供達。
ムジカに教わった通りつくっただけだと説明するレイ。
レイは、なんか適当な作り方だった、という指摘に対して、じゃ才能だわ、と軽く答える。
ムジカは火を起こせた子供を褒めている。
エマがなんとも言えない表情で手に持ったコップの中身を見ている。
それを見たレイが、どうした? と声をかける。
「ご飯がおいしいって幸せだなぁって」
エマは笑顔で答える。
料理を囲んで車座になっている他の子供達もまた笑顔で料理を食べている。
ソンジュとムジカにエマ達が助けられてから既に3日が経過していた。
その間、ひたすら目的地に向かって地下通路という名の迷路を進む一行。
生きる術を学ぶ子供達
回想。
地図を囲むソンジュ、そしてエマ達。
「南東 そっちの方角へ行きたいのか…」
地図上を棒で差しているソンジュ。
「だったら森を北側から抜けて回り込んだ方がいい」
ソンジュのすぐ右隣にいるエマは、北から? と問いかける。
南東に真っ直ぐ進むと森を出た先に”野生鬼”の縄張りが二か所あるとムジカが説明する。
「ああいうのか……」
森で襲われた巨大な鬼の異様を思い出し青くなるドン。
北から回れば荒野があるだけで”鬼”の集落もない、とソンジュ。
5日あれば森を抜けられ、その後1日歩くとエマ達の目的地であるB06-32に到着できると続ける。
ソンジュとムジカは、その僅かな期間に少しではあるが、この『外』を生き抜く最低限の知識と技術をエマ達に教えると宣言する。
火の起こし方、料理の作り方、食べられる食材の見分け方、薬草の見分け方及び使い方。
ソンジュに同行を願ったエマの本当の目的
エマは弓を引き絞り、矢を放つ。
放たれた矢は地下通路の壁に置いた切り株の的のほぼ中心にヒットする。
「すごーいエマ!」
ドミニクとアシリアが興奮している。
やっぱちげーな、とドンが呟く。
フードを被るソンジュ。
一度地上に出て川を渡るため、その前に周囲の警戒を行うとムジカに説明する。
気を付けて、とムジカ。
「ソンジュ地上行くの?」
ソンジュの背中にエマが声をかける。
ああ、と肯定するソンジュに、エマは自分も連れて行って欲しいと頼む。
「私も地上を見ておきたい」
無茶はしない、邪魔にならないよう気を付けるから、と続ける。
賑やかな子供達の輪から外れてソンジュと相対しているエマ。
ソンジュは、絶対に自分と馬のような生き物から離れないことを条件にエマの願いを聞き入れる。
地上。
エマは馬のような生き物にソンジュと一緒に乗っていた。
「わぁ」
森の中に流れる川を前に感嘆の声を上げるエマ。
「川自体は水深も浅い 水は冷たいが歩いて渡れる」
ソンジュが説明する。
「問題は追手だ」
エマとソンジュを載せた馬が森の中を走る。
「近くに追手はいないか いたらどう逃げるか」とソンジュ。
「わかった 探すし考える」と返答するエマ。
ソンジュだけが馬から降りる。
周囲を警戒するソンジュ。
追手いなさそうだね、とエマがソンジュに声をかける。
肯定し、良かったな、と返すソンジュ。
「それで? お前の目的は?」
エマに振り返ってソンジュが問いかける。
「!」
ドキっとするエマ。
「ただ気分転換や下見がしたくてついてきたわけじゃないだろう」
「うん…」
エマはソンジュに促されて、ソンジュに同行した本当の目的を話す。
「教えてほしくて…」
「何を?」
「生き物の殺し方」
エマは真剣な表情で、ソンジュを確りと見ながら答える。
ソンジュは沈黙する。
エマは理由を話し始める。
3日間で料理や可食植物、薬草、弓及び銛の使い方を教わったが、自分で狩りを行っていない。
ソンジュ・ムジカと同行できるあと2日の間にきちんとこなせるようにしておきたい。
これまで全て誰かにやってもらっていたに肉、魚、野菜、果物などの命を自分の前に並べるという事を、この先自分の手で行わなければならない。
馬から下りてソンジュの目の前に立つエマ。
「動物を捕って殺して食べる方法 狩りの仕方を教えてください」
儀程(グプナ)
空を鳥が飛んでいる。
ソンジュが空を指差す。
エマは弓に矢をつがえて、空を旋回する鳥の動きを計る。
首元に穴の空いた鳥の胴体に触れるエマ。
「あたたかい……まだ生きてる」
「上手く仕留めた」
エマに近づいていくソンジュ。
「次は儀程(グプナ)だ」
「”グプナ”?」
問い返すエマ。
ソンジュから差し出されたそれはコニーの胸に刺さっていた植物だった。
それを見てエマの心臓が高鳴る。
「それ……」
「気を付けて持て」
ソンジュはエマに植物を手渡す。
「ヴィダという吸血植物だ どこにでも自生している」
「これを獲物の胸に刺せ」
エマはソンジュとじっと見つめる。
「神に糧を捧げる 神が受け取ったら花が開く」
グプナについて説明するソンジュ。
「そしたらその肉は食べてもいい」
「それが儀程 ”鬼”の伝統的な肉の屠り方だ」
ソンジュは、グプナは血抜きも兼ねており、行うと肉が長く持つ、と付け加える。
「生きてる内に刺すの?」
エマは手の中のヴィダを見ながらソンジュに問いかける。
でなきゃ血抜きにはならない、とソンジュ。
「大丈夫気絶している 苦痛はないよ」
この花は妹の胸にも刺さってた、とエマ。
「コニーって言ってね 笑顔が可愛い優しい子だった」
見たことがあったのか、というソンジュの問いかけに、うん、と答えるエマ。
「そっか…この花…生きてる内に……」
コニー。
ハオ…。
セディ…。
みんな……。
エマの脳裏に、これまで農園をめでたく”退所”してきた子供達の顔が思い浮かぶ。
ノーマン……。
エマは手の中のヴィダを見つめたまま泣くのを我慢するように歯を食いしばる。
「痛い思い…してないといいな」
エマは誰にともなく呟く。
「怖い思いもしてないといいな…」
黙って聞いていたソンジュがエマに声をかける。
「儀程は神への感謝だ 敬意なしには成立しない」
「安心しろ お前の兄弟達もきっと苦しい思いはしていないよ」
エマは歯を食いしばり、うん、と答える。
エマがヴィダを持ったまま動かない様子を見て、ソンジュが、やめておくか、と水を向ける。
大丈夫、と力強く答えたエマはヴィダを一端地面に置き、手を顔の前で組んで祈ると、手に取ったヴィダを鳥の胸に突き刺す。
花の蕾が見事に開く。
「ありがとうソンジュ」
馬に乗り地下へと戻るエマとソンジュ。
エマは自分達が食べられそうになったことや、これまでに食べてきたことを改めて自覚し、この先も食べなければ食べられると考える。
コニーやノーマン達の胸で咲くヴィダを想うエマ。
ソンジュは、どうしたエマ? と静かに思い詰めたような様子のエマに問いかける。
エマはソンジュに振り向く。
「何でもない」
その表情に無理矢理浮かべたような笑顔が貼りついている。
無事地下に戻ったソンジュとエマを迎える子供達。
ソンジュはエマが仕留めた獲物を持って歩いていき、エマは子供たちと笑いあっている。
エマをじっと見つめるレイ。
「ま―――たお前は一人で!」
レイはエマの頭をわしゃわしゃと乱雑に撫でると、最後に頭をぽんと触る。
「うまいメシをつくろう 川を渡って明日も歩くぞ」
森の出口は近い。
子供達と一緒にエマとレイが地下通路の奥へと歩いていく。
感想
1話でコニーの胸から突き出ていた植物の正体が判明した。
あの傷口を見ればコニーの胸に刺したものであって、コニーの胸、その内部を突き破って出てきたものではないと分かるんだけど、これでちょっとスッキリした。
あれは儀礼であり、血抜きも兼ねた、ある意味合理的な行為だったんだなぁ。
エマは自分たちが鬼たちにとっては食料であることを改めて知ったのだろう。
そして、同時に自分もまた何かの命を狩って食を得ていることを自覚した。
そこに自分たち人間と鬼との違いは無い。
GF農園のような畜産、あるいは養殖行為は、人間だって同様に牛や豚、その他多くの動物で行っている。
消費者であった自分もそういった行為に婉曲的に加担しているわけで、鬼のやっていることと大差ない。
それでも自分は生きていくために狩らなければならないし、鬼に狩られることを避けていかなくてはならない。
賢いエマ、あるいはレイであればもっと色々思うところがあったに違いない。
中々深い回だった。
子供達は、あと少しでソンジュやムジカと別れ、また危険が待ち構えている未知に飛び込んでいく。
でも、個人的にはもう少し和気藹々と安心している子供達を見ていたい気持ちもある。
次が楽しみ。
以上、約束のネバーランド第49話のネタバレ感想と考察でした。
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