第89話 合流
目次
第88話のおさらい
無数の銃による乱射を手で受け切ったレウウィス。
その様子を壁の陰から見ていたエマは、すぐそばに来ていたペペと共にレウウィスの仮面を破壊の作戦遂行のためにその場から離れる。
レウウィスはエマ達の仮面を破壊しようという思惑を読んでいた。
バイヨン達を殺害した強力な武器を持っているが、さきほどの乱射の中に交えて来なかったことでその武器が希少であることまでも見抜いていたのだった。
狩るか狩られるかの緊張感にニヤリと笑うレウウィス。
レウウィスから遠ざかるように街を走っていたエマとペペは、策の実行の為にそれぞれに分かれる。
事前の作戦会議を思い出すエマ。
レウウィス打倒の為に、オリバー達は作戦に総員参加なのはもちろん、この村自体を最大限活用するのだという。
第1に動きを止める罠を張り、第2にその罠に7人で誘い込む。そして第3に専用銃で狙撃。
オリバーはレウウィス打倒作戦を大まかに3つにフェーズ分けし、エマを第2のフェーズに参加するよう呼びかけていた。
作戦遂行の為、エマは一軒の家の中に潜む。
銃をわざと大げさに動かし音をレウウィスに感知させる。
その音を聞いたレウウィスが動き出す。
エマはレウウィスを屋内に誘い込もうとしていた。
しかしレウウィスは家のドアが不自然に開いているのを見て笑みを浮かべる。
エマから離れた所で作業を行っていたペペはレウウィスの接近に気付く。
レウウィスはペペの存在に気付き、その場に足を止める。
ペペはレウウィスがエマの陽動を見抜いて自分の方に向かってきた来たことに気付く
このままでは自分やナイジェル、エマまでもが死に、作戦自体が頓挫してしまうことを恐れ、ペペは姿を現してレウウィスに向けて銃撃する。
地面をえぐる銃弾。そして銃弾は水道管を傷つけており、水が勢いよく噴出する。
攻撃の失敗により、ペペはふり構わずレウウィスから逃げ出すのだった。
ペペをはレウウィスに追いかけられるも、振り向いて呟く。
「エマの言った通りだぜ」
事前のエマとの打ち合わせ通り、エマがレウウィスの背後に電線を持って登場すると、水道管の破裂によってしとどに濡れた地面に電線を投げるのだった。
激しい電撃がレウウィスをの動きを止める。
それはオリバーの立てた作戦だった。
エマはペペと分れる前に、レウウィスが自分たちの策や思惑を全て読み、それを潰しに来ると読んでいた。
それを利用しようと考えたエマは、レウウィスにエマを陽動役だと勘違いさせ、実は注意をひきつけることを目的とせずに動いていたのだった。
電撃で動きを止めたレウウィスをナイジェルが2階から狙撃する。
しかしレウウィスに素早く防がれてしまい、一発しかない特殊弾を失ってしまう。
勝利を確信したレウウィスがエマに爪を突き立てようとした瞬間、突如レウウィスの仮面に何者かによる銃弾が直撃する。
レウウィスの顔面に屋根から狙撃を行ったのはオジサンだった。
その手には特殊弾を発射する専用銃が握られている。
エマはオジサンの方を向き、笑顔を浮かべる。
レウウィスは悲鳴すら上げず、銃弾による衝撃そのまま体を曲げていた。
「久し振りだな レウウィス」
オジサンがレウウィスに銃口を向ける。
第89話 合流
弱点を露出するレウウィス
屋根の上にオジサンとレイの姿を発見し、エマは二人が生きていたこと、そして村まで来てくれたことを喜ぶ。
ペペ、ナイジェルは思わぬ援軍に驚いていた。
そして、レウウィスを撃った銃が、唯一仮面を破壊出来る専用銃であることにペペが気付く。
レウウィスの仮面に特殊弾を命中させたオジサンはレウウィスをじっと観察するように見下ろす。
その視線を追うようにエマもまたレウウィスの様子を見る。
レウウィスは顔に手を添えようとする。
しかし仮面はバラバラに砕けて地に落ち、レウウィスはついに顔=弱点を露わにする。
仮面破壊に成功し喜ぶ戦士たち。
レウウィスは自分の仮面を見事に砕いてみせた戦士たちを内心で褒めつつ態勢を立て直そうとする。
すかさすエマが銃口を向けてきたことにもワクワクしながら、レウウィスは戦いを受けて立つのだった。
閃光弾
自分に向かって走ってくるペペが口で手榴弾らしき物体のピンを抜いている。
それに対して弾き返そうと構えるレウウィス。
ペペが投げた手榴弾はレウウィスの前でで外装が開いて剥がれ落ち、中から閃光弾が現れる。
レウウィスの不意を突く形で閃光が放出されたのを確認し、エマ、ペペ、ナイジェルは笑顔を浮かべる。
オジサンとレイは屋根の上で並んで片膝を立ててしゃがみ、銃口をレウウィスに対して向けている。
ルーカスは事前に、仮面が割れてからが勝負だとオリバーとエマに念を押していた。
仮面を破壊出来てもそこで攻撃を停止させず、間髪を入れずに、まずは感覚を奪うことの重要性を説く。
閃光弾は視界のみならず様々な感覚を失わせるのだった。
レウウィスは上体を大きく泳がせていた。
そんな窮地に陥りつつも、内心ではどこか冷静さを失わない。
その様子を、効いていると判断したエマ、ペペ、ナイジェル。
仮面の保護を失い、閃光弾によって動きを止めたレウウィスの急所を狙う。
オジサンは銃を構えたまま彼らの戦いぶりをじっと見ていた。
この作戦をエマたちに授けたルーカスの考えを内心で冷静に褒める。
バランスを崩し、地面に手をついて顔を伏すレウウィス。
(「いける!! 今なら討てる!!」)
好機と見たエマたちがレウウィスをを狙おうとしたその瞬間、彼は自分の面の破片を辺り一帯に向かて大量に投げる。
何とか回避や防御を行う戦士たち。
「ぐあっ」
その中でペペだけが一人、破片を躱しきれずに声を上げる。
その声を聞き、レウウィスはニヤリと笑う。
その様子を見て目を見開くエマ。
レウウィスの機転
つぎの瞬間、一瞬でペペとの間合いを詰めたレウウィスが、その爪による一撃でペペの左肩を深々と切り裂く。
ペペが傷から血を吹き出し始めてから、エマ達はようやくレウウィスがペペを攻撃していた事に気付く。
あまりにも高速で移動したためにその場にいた誰もレウウィスの挙動を感じることが出来ずにいた。
地面に崩れ落ちるペペを見てエマは顔を引き攣らせる。
ナイジェルは、レウウィスの視界を奪っていたはずなのに何故ペペがピンポイントで攻撃を受けたのか分からず困惑する。
(音だ)
レイはすぐにレウウィスが失っていた視覚を聴覚で補っていたことに気づいていた。
レウウィスは一瞬で仮面の破片を周囲に放り、それに反応して呻き声を上げたペペだけを聴覚で補足していたのだった。
閃光弾で虚を衝いたにも関わらず、レウウィスが一瞬で聴覚を活用するという機転を見せたことに気付き、レイは戦慄する。
(場所を変えて狙い直す!!)
立ちすくんでいたレイを置いて、オジサンはいち早く行動を開始していた。
屋根の上で走って移動し、先程よりと位置を変えてから、素早くレウウィスに狙撃を行う。
銃弾が近付いてくる中、レウウィスは銃弾の放たれた方向に反応し、腕に貫通させて勢いを弱めた弾を歯でキャッチしてみせる。
再狙撃が失敗に終わり舌を鳴らすオジサン。
レウウィスは再び地面に散らばっている破片を拾い上げてオジサンに向けて投げる。
散弾銃のようなそれをオジサンは伏せることで何とか躱していく。
(オッサンの狙撃すら防がれた…!?)
その場に立ったまま、レイはオジサンの行動を見ていた。
「良い」
レウウィスは顔に手を当てて、繰り返す。
「良い良い良い良い良い良い良い 良い!!」
その間、レイに駆け寄ったオジサンは一旦退避を指示する。
レウウィスの喜び
「ワアッハッハハハハッツ」
レウウィスはこれ以上ないくらいに愉快な様子で笑う。
「ドキドキしたぞ!! 何百年ぶりだ!!?」
オジサンからの狙撃を受けて出来た手の傷がプチプチと音を立てて治っていく。
次の瞬間、一軒の家の壁に向けて突きを行うレウウィス。
手は壁を貫通し、外壁に徐々に亀裂が走っていく。
「嘘だろ!!?」
ナイジェルの待機していた窓辺にも亀裂が生じていた。
急いで退避するナイジェル。
レイとオジサンは屋根の上を移動し、エマはレウウィスが壁に突きを入れているすぐそばで倒れているペペを何とか起こそうとしていた。
崩れた家を背に悠然と歩くレウウィス。
そして、ペットが被っていた帽子をゆっくりと拾い上げると自身の頭に載せる。
エマ、ペペ、ナイジェル、レイ、オジサンは一軒の家に集合していた。
「おいでパルウゥスどこにいる?」
レウウィスはペットに向けて手探りで手を伸ばす。
「ああ そうだ まだ見えない フラフラするよ」
パルウゥスを肩に乗せ立ち上がり、話しかける。
「そう…まるで若気の至りで呑みすぎて愚かにも二日酔いを迎えた朝のようだ しかしね」
前に伸ばした腕の先にパルウゥスを移動させる。
「それもまた楽しくてたまらないよ」
確かに一瞬、死を感じられたことを喜ぶレウウィス。
「私は今生きている 生きている 生きている」
レウウィスは快哉を叫ぶ。
「生きているのだ素晴らしい!!」
深手を負い、横たわっているペペに、しっかしして、と声をかけるエマ。
万策尽きる
「止血はした」
ペペの応急処置にあたっていたレイがエマに話しかける。
「けど今はそれ以上何もできない 彼はここに置いて行こう」
悲痛に顔を歪めるエマ。
「くそっ…!」
ナイジェルが毒づく。
「チクショウ…どこまで…どこまで怪物なんだあの野郎…!」
当初立てた作戦通り、仮面を破壊し、閃光弾による不意を突いた一撃も目論見通り視界を奪っている。
なのにナイジェルは自分たちがここまで追いつめられていることを悔しがる。
(全て奴は超えてくる…!!)
オジサンが一同に向けて呟く。
「万策尽きたぞ どうする? どう奴を斃す?」
感想
作戦通り
前回ラストで仮面を破壊することに成功した。
それに加えて今回、完全にレウウィスの不意を衝くことで閃光弾の光をその目に直撃させて視界を奪うことが出来た。
見事に弱点を露出させ、さらに視界を奪ったことでエマ達に大きな勝機が訪れたはず。
しかしレウウィスは一瞬でその状況をひっくり返してしまった。
レウウィスの予想から外れた攻撃だった閃光弾は確実に功を奏していた。
でもレウウィスは失った視覚に拘泥せず、聴覚で補うことを思いつくという機転でこの危機を乗り切ってみせたのには驚いたな。
敵よりも強力過ぎるフィジカルが無ければこのアイデアをレウウィスは実行できなかった。
レウウィスは知能が高い。他の鬼達が特別低いというわけではないが、やはりレウウィスは知能もフィジカルも飛び抜けているという印象を持った。
ペペと間合いを詰める際の高速移動が恐ろしいというのはもう事前にわかっていたけど、まさか正拳突きに一軒家を一撃で破壊するほどの威力があろうとは……。
敏捷性というよりも膂力自体が半端じゃないということだ。
しかもパワーに頼り切ったバカではなく、きちんと思考する知能を持っている。
いよいよレウウィスが恐ろしい相手だという感を深めるばかりだ。
レウウィスの本気
やはりレウウィスは他の鬼とは次元が違った。
エマ達の目論見通り、用意していた作戦が成功していたにも関わらずレウウィスを斃すには至らず、それどころか追い詰められつつある。
レイとオジサンという想定外の援軍により何とかまだ打つ手がありそうな感じだけど、それでも旗色は決して良くないと言えるだろう。
逆にレウウィスを一瞬でも追い詰めたからこそ、「死」を感じたレウウィスはそれを喜んだ。
レウウィスを本気にする前に仕留められれば一番良かったのだが……、そうもいかないわな。
本気モードのレウウィスを相手にまともに戦ったなら、エマたちの勝ち目はかなり薄いだろう。
しかしまだレウウィスの視界が回復し切っていない今ならば、知恵次第で何とか切り抜けられるくらいの余地は残されている展開だと思う。
ラストのエマ達の様子を見ると、対レウウィス用の作戦はもう、ナイジェルがルーカスから託された最後の手段くらいしか残されていないのではないか。
それが一体何なのか分からないが、おそらくそれを起動させることが今後の彼らの目的になるのではないか。
この緊張感の中、エマ達はこれ以上の損害を出さずにレウウィスを斃せるのか。
オジサンはルーカスと再会を果たすことができるのか。
気になる展開が続く。
以上、約束のネバーランド第89話のネタバレを含む感想と考察でした。
第90話に続きます。
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