第77話 無知な雑魚共
目次
第76話のおさらい
テーブルを囲み豪勢な食事に興じている5人の鬼。
ノウスがGFからの”特上”の脱走者を捕まえていた事を指摘し、5人の鬼全ての食事をする手が止まる。
バイヨン卿は、黙っておいた方が見つけた時の興奮が高まるかと思ったのですが、と笑う。
GF農園出身のエマの存在に、いてもたってもいられずに、本来はもう少し間隔を空けて行うはずだった狩りを前倒しにする鬼達。
街にやってきた鬼だったが、そこには人の気配は無く、静まり返っている。
鬼達は人の気配が無い街を探索する。
一軒の家に入ったノウスとノウマ。
隠れている子供を探している最中に、カタッ、という外からの音に敏感に反応する。
ルーチェは路地を走り去るフードを被った子供をエマだと信じ、従者と共に追いかける。
鬼に追われながら、フードの下で、ニッ、と笑うのはジリアン。
その頃、ルーカスは風車小屋の、湖への抜け穴に子供達と身を潜めていた。
エマとオリバーは銃器を携え、壁に身を隠して鬼の様子を窺っている。
回想。予想外に早く音楽が鳴り、焦るレジスタンスのメンバーたち。そして泣き叫ぶ子供達。
早過ぎる狩りの時間の到来に、オリバーは、準備は済ませていたが、集落にいる全ての子供を含めての作戦の最終確認は行っていなかった事を悔やみ、歯噛みする。
そしてリーダーとしてどう動くべきか、追い詰められながらも必死に思考した末、オリバーは子供達に向けて堂々と鬼から自由に慣れるのだと宣言する。
幾分か冷静さを取り戻したレジスタンスのメンバーを中心に、同じく泣き止んだ子供達が広場から逃げる。
作戦は、まずレジスタンスのメンバー、エマを加えて10人は4隊に分かれ、鬼を分断。
レウウィスをエマとオリバーで15分間だけ引きつけ、その間にレウウィス以外の鬼、バイヨン、ノウスとノウマ、ルーチェの3組を潰す。
ルーカスは、とにかくレウウィスさえ遠ざけてしまえば他の3組を潰せる勝算はあるのだという。
(敵の虚を衝く 獲物をナメきった怪物の虚を)
鬼に対して仕掛けるのは奇襲であり、チャンスは一度きりだとルーカスは、レジスタンスのメンバーに告げる。
レジスタンスのメンバーは、各自の担当の鬼から必死に逃げる。
丸腰のメンバーは、いつものように何もできずに逃げるフリをするように努める。
それぞれの鬼に追い詰められるレジスタンスのメンバーたちだったが、ジリアンは不敵に笑い笛を吹く。
同時に、他の場所でもザック、ソーニャが笛を吹く。
合図を確認したオリバーが手元のスイッチを押すと、森で大きな爆発が起こる。
爆発に一瞬気をとられ、鬼達は追い詰めていたはずの子供が居なくなっている事に驚く。
樹上で銃を携えているジリアンとナイジェル。
さぁ計画実行、とルーカスが呟く。
「狩りの時間だ」
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第77話 無知な雑魚共
反乱を察知する鬼たち
鬼達は、森での爆発にも慌てる様子を見せない。
レウウィスは爆発の後に漂ってきた臭気から火災は発生しておらず、猟場にもダメージは無いと判断する。
バイヨン卿もまたこの爆発が音だけであることを喝破していた。
そして、広場の静まり返った様子、さらにいつも狩りの時と違う雰囲気からバイヨン卿は子供達の反乱を察知する。
(そうか GVの並肉諸君が必死になって あの弱者たちが)
(いじらしい)
仮面の下で笑うバイヨン卿。
レウウィスは、いつもの狩りの時と同じGV出身者たちだとしながらも、彼らの戦術にデジャブを覚え、ニヤリと笑う。
立ち尽くしていたレウウィスを、物陰に隠れて観察していたエマとオリバーはレウウィスが動き始めたのを確認してから自分たちもそれも呼応するように、小走りにその場を去る。
森の中で鬼達の分断に成功したレジスタンスメンバーたち。
子供達を見つけられず憤るルーチェ。
「生意気だ人間のくせに!」
手下に子供達を探す事を命じる。
ノウスとノウマは子供達のいつもと違う様子を面白いと感じ、遊んでやろう、と余裕たっぷりに子供達の探索に乗り出す。
屈辱の記憶を胸に反撃
探索に動き出したルーチェ達を、ジリアンは樹上から睨みつけていた。
思い出していたのは、昔、姉をルーチェに殺された時の記憶。
ジリアンは血を流し倒れている姉のそばにしゃがみこみ、迫ってくるルーチェに怯えていた。
(「キャハッ 10秒あげるよ」)
嗤うルーチェ。
ナイジェルもまた、ルーチェにやられた弟(妹?)を思い出しながらも、ジリアンと同じように冷徹な視線をルーチェたちに向けている。
サンディ、ソーニャもまたそれぞれ、大切な者を奪われた時の事を脳裏に描きながらノウス、ノウマを観察している。
鬼たちをそれぞれの場所に誘き出し、分断に成功したレジスタンスのメンバーたち。
分断に成功した合図――爆発から15分稼ぐのを目的にした次の作戦が始まる。
(狙うのは仮面の下 目の奥の核 ブチ抜いてやる!!)
ジリアンはルーチェに銃の照準を合わせ、狙撃する。
銃弾はルーチェの仮面に直撃する。
真後ろに首をのけ反ったかと思うと、勢いよくすぐに顔を戻し、樹上を指さす。
「そこだ! そこにいるぞ!!」
樹上に立つジリアンを発見するルーチェたち。
ジリアンは身を隠そうしない。
ジリアンが両手に携えた銃器を見て、呆然とするルーチェ。
「食らえ」
ルーチェたちに向けた両手の銃で、ジリアンが斉射を開始する。
手下は銃弾を食らって倒れていく。
ルーチェはとっさに地面に伏せ、何とか銃弾をかわそうとする。
しかし伏せていても右肩に銃弾を受け、さらに別角度から仮面に銃弾が直撃する。
ジリアンとナイジェルの猛攻
仮面に撃ってきた銃弾の軌道上に、ルーチェは自分を睨みつけるナイジェルの姿を見つけて仮面――弱点を意識した攻撃がマグレではないことを知る。
彼らの狙いが自分の命だと判断したルーチェだったが、弱点である目を守る仮面は猟場に用意した銃器では砕けないほど硬い事を知っており、自分も手下も再生するという好材料と併せて自身が優位に立っていると疑わない。
(そう 何も知らない雑魚共が何発乱射しようとムダなんだよ)
ルーチェは手下たちに樹上で銃を連射するジリアンとナイジェルを捕えるように命じる。
ジリアンは登って来たルーチェの手下たちを打ち落としていく。
しかしその度に再生し、再び樹に登ってくる手下たち。
ナイジェルはルーチェの仮面を狙う。
しかしルーチェは銃弾を避けようともせず、仮面に銃弾が当たってもジリアンとナイジェルを直視し続ける。
撃ち落としては再び登って来る手下たちの猛攻に、ジリアンは顔を歪ませながらも銃で応戦し続ける。
「ムダムダムダムダムダムダムダムダムダ」
「ブペェッ」
楽しそうに笑っていたルーチェの仮面に再び銃弾がヒットする。
(うっとうしい)
ルーチェは舌打ちをしながらジリアンを睨む。
しかし、怒りながらも冷静にジリアンの持つ銃の弾がもうじき切れる事を確認していた。
ジリアンの銃は、最後の弾を弾倉に送り込もうとしている。
(ほら切れるぞ さぁ)
「今だ 一息に叩き殺せ!!」
ルーチェは手下たちに命じる。
しかし手下たちは動かない。
「死んでる!? 僕の手下が全て…!?」
動かない手下たちの死体の中で立ち尽くすルーチェ。
ルーチェを追い詰める
ジリアンが樹上から地面に降りる。
「最初からアンタなんか狙ってない」
右手の銃を捨てながら、ルーチェに近づいていくジリアン。
ルーチェを始めとした、貴族たちのつけている仮面が硬く、そして手下たちのお面には弱点があることを知っていたと告げる。
ジリアンたちは、ルーカスによる作戦の説明を思い出していた。
手下の仮面は硬さこそ貴族のそれと同じだが、構造が違っており、目の周り以外は比較的簡単に破る事が出来る。
ルーカスは、手下たちの仮面の側面から狙い、再生の隙を与えないほど連射して顔ごと仮面をはぎ取る事で、まずは手下を掃討するようにとメンバーたちに具体的な策を授けていた。
ルーチェを狙ったのは、それを悟られないようにするためだと口にするジリアンたち。
ルーカスは、ルーチェの性格から、目元を狙って行けば怒りで冷静さを失い、狙いは自分であると意識すると見抜いていた。
(「逆上 慢心 一斉射撃 全てを使って気を逸らし奴から手下を奪い取れ」)
ルーカスの戦略に忠実に従い、手下を掃討する事に成功したジリアンとナイジェルはルーチェに近づいていく。
(何だコイツ 何なんだコイツら)
木の幹を背に、ジリアンとナイジェルに追い詰められるルーチェ。
(雑魚のくせに 昨日までは雑魚だった そう確かに雑魚だったはずなのに!!)
「ルーカスが教えてくれたわ アンタは手下がいなきゃ大した腕力もない」
ジリアンはルーチェの仮面を右手で外し、顔に銃口を突きつける。
「ゲームセットよ 覚悟しなお坊っちゃん」
感想
積年の恨み
ジリアンとナイジェルは、ルーカスに授けてもらった戦略を忠実に実行して見事にルーチェを追い詰めた。
具体的な作戦を伝授されても、それを実行できるとは限らない。
究極には、何が何でも成功させるという覚悟がこの結果を引き寄せたのだと思う。
二人もまた、テオと同様に大切な人間を鬼に弄ばれた挙句殺されてしまった過去があった。
にもかかわらず、これまで、鬼たちに反撃したいという気持ちを抑えて情報収集に徹し、他の子供達の犠牲も甘んじて受け入れなくてはいけなかった。
自分たちと同じような立場の人間が量産されていくのを横目で見て、彼らは何を想ったのだろう。
その胸中はいかばかりか……。察するに余りある。
ジリアンやナイジェルたちの鬼への憎しみという核に、長年、鬼から被害を受け続けた来た恨みが降り積もり、強大な鬼という敵に対しても怯まずに作戦を決行する鉄の意思が形成されたと言って良いのではないか。
そんな積年の想いに突き動かされるようにして、今のところジリアンとナイジェルは見事にこの作戦を成功させている。
彼らの想いは、ルーチェを追い詰める原動力となった。
しかし、ラストで仮面を剥ぎ取って一見は完璧に追い詰めたように見えるが、果たしてこのままサクッと斃せるのだろうか。
メタな視点から言えば、ジリアンが勝ち誇って喋り過ぎなのがフラグにならないか心配だ。
これまでの経緯、積もり積もった恨みを考えると、ドヤるのも無理はないけどしかしこういう展開は大概やられた方の反撃の前フリだったりするからなぁ……。
次回は冒頭で普通に撃ち殺してくれる事を期待したいけど、でもそうはならない。
あくまで予想だけど。
ルーチェには何か、貴族として、奥の手があるんじゃないか。
理性を失って暴走、そして変身とか。
それこそドラゴンボールのフリーザの変身のような……。
あっさり倒したら倒したで嬉しいけど。
本当の強敵はレウウィスだろうし、彼相手には犠牲者が出る事は必至だろう。
後に待っている激戦を思えば、あっさりルーチェを倒してしまっても緊張感が無くなることはない。
ノウスとノウマ、バイヨンはどう追い詰める
ジリアン、ナイジェルの二人だけではなく、ノウス・ノウマと接敵中のサンディ・ソーニャのコンビもまた彼らに積年の恨みがある。
ジリアン・ナイジェルのコンビのように敵を追い詰めることができるのか。
ノウス・ノーマは手下を用いず、自ら向かってくるので、今のところは少なくともルーチェよりも強キャラ感がある。
ルーカスが策を授けているはずだけど、一体どんな方法で戦うのだろう……。
銃器を使うことことは確かだろうけど、ルーチェ同様に狙撃しても仮面を貫くことは出来ない。
それはバイヨンも同じだ。
今回、バイヨンの仮面の下の顔が描写されたが、人間で言う額と鼻の位置にそれぞれ一つずつ目があるようだ。
バイヨンもまた、レウウィスと同様に割と早くGV出身者たちの反乱に気付いた。
GV出身者たちの行動を”いじらしい”と見下す様から、慢心がある事が確認できる。
ルーカスがそれを見抜いていないわけがないので、まず付け込む隙はそこになってくるだろう。
しかし、バイヨンにも配下がいる。
ルーチェの時と同じように手下の仮面は構造的に貴族の物より強くはないんだろうけど、バイヨンにも似たそのシャープなフォルムからルーチェの配下よりも強そうに見える。
バイヨンを相手にするのは今回出てこなかった、ザック、ペペ、ポーラ、ヴァイオレットの内のいずれか2人、もしくは全員になる?
果たして、レウウィスを孤立させるために15分の足止めが出来るのか。
そして、恐らくはレウウィスに対して何かを仕掛けるであろうエマとオリバーの今後どう動くのか。
緊張感のある戦いはまだ序盤。
続きが楽しみだ。
レウウィスの直感
レジスタンスから一番危険視されているレウウィスに対しては、果たしてルーカスはどんな作戦を練ったのだろう。
やはり今回の話からも、バイヨン、ノウスとノウマ、ルーチェに比べるとレウウィスからは底が知れない印象を受ける。
レウウィスが最後に歯ごたえを覚えた敵であるオジサン・ルーカスとその仲間たちを想起させる”やり口”に、レウウィスは笑った。
生死をかけた戦いを望むレウウィスにとって、強者との戦いが迫っているという期待感は至上の喜びなのだろう。
森で起きた爆発や、広場を始めとした街の様子からすぐにそれを察知したレウウィスの強キャラ感はやはり鬼達の中でも飛び抜けている。
ルーカスの作戦に期待。
この先何週かに渡って戦いが行われるんだろけど、続きが楽しみでならない。
以上、約束のネバーランド第77話のネタバレを含む感想と考察でした。
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