響 小説家になる方法 最新第97話新作ネタバレ含む感想と考察。響の意外な反応に花井は……。

第97話 新作

第96話のおさらい

花井は涼太郎に対し、響が『お伽の庭』の前に書いた小説があるのかと問いかけていた。

 

客のいる前では、とやりとりを渋る涼太郎に花井は他の二人の女性客に圧力をかけて追い出し、二人だけが残され緊迫した空気の中、花井は涼太郎への追及を続ける。

 

花井はリカが響に感じていたという違和感を話し始める。
2年前、響と涼太郎が文芸部に入部して間もない頃に涼太郎と部室で二人きりになった際、涼太郎は響の小説を読んだことがないと言った。

 

しかしリカは、涼太郎はその後、名だたる文豪は自殺しているので、響が小説家になっても幸せになれるとは思えない、と言っていたことを挙げ、まるで小説を書いたことのない女子高生と文豪を同列に語ることに違和感を覚えていたのだった。

 

リカが覚えた次の違和感は、響が誰にも内緒で小説を投稿したと知った時だった。
響は部誌で書いた短編小説を特に照れる様子を見せることなく自分に読ませてくれたので、この点にも違和感があたのだという。

 

リカは、響は小説を書いたなら、身近な涼太郎を始めとして普通に周りの人間に見せるだろうと結論する。
しかし『お伽の庭』に関しては周囲には一切見せなかった事実を挙げ、リカは、何か理由があるのかな、と花井に問う。

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最後にリカは、響が『木蓮』に小説を投稿した理由を花井に問いかける。

 

花井は響が『感想だけ聞きたかった』『自分の価値観を確認したかった』と言っていたことを思い出し、すぐに違和感を覚えるのだった。

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響が自身の価値観を疑う何かが『お伽の庭』執筆前にあったのだろうという推測は、ひとつの答えを生む。

 

花井は、響が『お伽の庭』以前に書いた作品があるのではないかと涼太郎を追求する。
そして響が目立つことを避けるため、この才能を世に出さないよう、あえて彼女の小説を酷評した、と続ける。

 

わかりません、と言う涼太郎の反応から、花井は涼太郎が否定はしないと受け取っていた。
花井は響の原稿の存在を確信して立ち去ろうとする。

 

「少しでいいから響のことを考えてやってくれないかな。」
涼太郎は既にある原稿を使うとしても手直しがあるし、一度は退学してまでマスコミを遠ざけたのに連載が始まったら響の周りがまた騒がしくなる、と続けて響の連載に難色を示す。

 

しかし花井は、嫌われても恨まれても響の小説は世に出したいと言い、立ち去ろうとする。

 

涼太郎が花井に、原稿はありますよ、と声をかけ、立ち止まらせる。

 

カウンター内から出て花井に近づいていく涼太郎。

 

そして花井が店に入ってきた時に涼太郎にしてみせたように、人指し指で花井を呼び寄せる。

 

無防備に近づいてきた花井の喉を涼太郎は突如右手で締め上げるのだった。

 

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そして涼太郎は左手のフォークを花井の顔の前にかざし、これはケーキを食べたり、頸動脈を刺したりするのに使うのだと脅し文句を言ったあと、花井の首元目がけてフォークを刺そうとする。

 

次の瞬間、響が現れ、松葉杖の先で涼太郎の脇を思いっきり突く。

 

強烈な一撃を食らい、涼太郎は花井の首から手を離す。

 

警察を呼ぶという花井に、響は、前後はわからないが、芝居だろうと指摘するのだった。

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響は、涼太郎が自分が来ている事に気付いていたと告げる。

 

涼太郎もそれに同意し、響の言っていた芝居という指摘を暗に肯定する。
花井が本気で文芸に取り組んでる様に、響のことを本気で守りたい奴もいることを知ってほしいという涼太郎。

 

その主張に花井はキレた花井。
響の松葉杖を何度も涼太郎の顔に振り下ろす。

 

涼太郎は、ごめんなさい、と謝るばかりで、特に反撃はしない。

 

どういう流れなのか全く響は、二人のやりとりをただただ不思議に思うだけだった。

前回、第96話の詳細は以下をクリックしてくださいね。

 

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第97話 新作

響の部屋へ

響、涼太郎、花井の3人は、響の部屋に来ていた。
響は自分がブックカフェに行ったのは、リカから花井が涼太郎のところに行ったと聞いたからと理由を話す。

 

響は押し入れから取り出した原稿用紙の束を花井に渡す。

 

「『ティンカーベル』……」
題名を呟く花井。

 

響はそれが中学3年生の時に1年かけて初執筆した小説だと説明する。
「よくわかったわね。私も書いていたこと忘れてた。」

 

花井は原稿の束が長編に必要な300枚程度はあると確認していた。

 

響は、花井と涼太郎が何の話をしていたのかと問いかける。

 

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『ティンカーベル』

響の父、母は1階の居間でテレビを観ている。

 

花井が来たことから、また何かを始めるのかと呟く父。

 

昨日、響から海外に行くことを聞いたばかりだと続ける母。

 

しかし二人は、涼太郎がいるから変なことにはならない、涼太郎が認めたなら仕方ない、と再びテレビに集中する。

 

響の部屋では、花井が今回の件に関して説明を始めていた。
小論社から9月に創刊予定の新雑誌の話があるが、それには響の新連載を始めることが条件。
しかし受験の時期にある響には連載はさせられないので、代わりにこの原稿を使わせてほしい、と『ティンカーベル』を持ったまま花井が響に頼む。

 

新雑誌の名前について尋ねる響。

 

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花井はその質問に、まだ決まってはいないが、編集長である自分がある程度自由に決められると思う、と答える。
「翌檜(あすなろ)とか、林檎とか…」

 

誰が書くの? と響が続けて質問する。

 

花井は新雑誌は「木蓮」との差別化を図るために若い作家を中心に作りたい、サブカルに寄らず、若い作家のきちんとした文章を載せたい、と構想を答える。

 

「山本とかどう? 暇そうだったよ。」

 

響の何気ない一言を、あの人は超売れっ子だ、と否定する花井。
バイト紹介の際も、響だからという理由で時間を割いてくれたのだと付け加える。

 

「それで、響はどうするんだ。」
涼太郎が切り込んでいく。

 

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響の意外な反応

花井は、響の手間は極力する少なくするから協力して、と響に熱心に頼み込む。

 

「私は海底都市の女の子の話を書きたい!」
笑顔で答える響。

 

「ん?」
響の意外な反応に、花井は状況をよく把握できていない。

 

「季節は秋で、退廃的ノルタルジック、センチメンタル、海底都市で一人で育った女の子が21になって地上に出てきたお話。」

 

簡単にどんな話かを説明する響に、花井は響が高3で新作を書く暇がないことを指摘し、『ティンカーベル』を使わせて欲しいと続ける。
しかし、響の新作の構想が気になる花井は、21の女の子が言葉を話せるのか、と質問する。

 

響は、21なら話せる、頭のいいイルカにでも教えてもらったのでは? と言って、さきほどよりもさらに詳しく話の設定を説明していく。

 

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滑らかに説明を続ける響に、花井は、『ティンカーベル』を使いたくないのか? と素直な疑問をぶつける。

 

それに対し、あんまり、と答える響。
3年前に書いたもので、とんでもなく粗いから、と明確にその理由を述べる。

 

花井は、あくまで斜め読みした感想だが、と前置きし、涼太郎が酷評したかは知らないが文体は響の作家性が出ていると評価する。

 

酷評? と響は花井の言葉にピンと来ていない様子だった。
そして、『ティンカーベル』に関して、涼太郎から聞いたのかと問う。

 

花井はこの小説が涼太郎に酷評されたわけではないのか、と質問を返す。

 

俺をなんだと思ってんですか、と言う涼太郎に、頭のイカレた奴だと思ってる、と返す花井。

 

涼太郎は中3の時に響から渡された『ティンカーベル』を読み、全然わからない、とあくまで正直に響に感想を告げたことを告白する。

 

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響は、中3当時にキレイだと思っていた文章をひたすら列挙したものに過ぎないから、小説の形になってない、と評価する。
しかし初執筆で文章を書くことにしっくり来たから、次はきちんとした作品を、ということで『お伽の庭』を書いたのだと説明する。

 

涼太郎に内緒にしていた理由を花井に問われ、響はただ単に口出しされるのを嫌ったのと、そもそも涼太郎が小説に興味が無いからだと答える。
「ていうかなんで知ってんの?」

 

花井は真相が明らかになったことで、なるほどね、と呟く。

 

「それで、」
響は花井を真っ直ぐ見据える。
「原稿はいつまでに必要なの?」

 

一瞬の沈黙の後、花井は俯いて、今は受験に集中して、新雑誌にはこの原稿を使わせて、と答えるのだった。

 

えー、とつまらなそうな様子の響。

 

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センスの塊

花井は帰りの電車の中で早速響から預かった『ティンカーベル』を読み始めていた。

 

翌日も引き続き、小論社の自分のデスクで読み続け、読了する。

 

隣の席の坪井が、新人の原稿か、と訊ねる。

 

その問いかけに、書いた当時は中3で女の子、と意味深な答え方をする花井。

 

響効果か、と坪井。
中3ではまともな文章になってないだろ、と続ける。

 

花井は、話の筋はバラバラだが、小説に必要な各要素がセンスの塊で、文体を魅せるだけの文章の集まりだと評価する。
「中3でもう才能しか感じない。たぶんこの子は、生まれた時から天才だったんだろうな……」

 

なんの話だ? とピンと来ていない坪井。

 

そこに編集長が現れる。
「話をつけたか?」

 

花井が顔を上げると、編集長は営業の戸板部長、金子、制作の森尾を引き連れていた。
「響は書くのか?」
単刀直入な質問をする編集長。

 

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同時並行

北瀬戸高校職員室。

 

響は教師の前にしゃがみこみ、留学関連の話を聞いていた。

 

「公立カレッジ」制度に関しての説明を受ける響。
イギリスの大学は3年制で、留学生はいきなり大学に入ることができない。
公立カレッジとは大学入学準備の為に入る学校で、そこで1年間勉強しながら入りたい大学を決めるのだという。

 

イギリスの大学に入試はなく、公立カレッジの成績、論文で合否が決定する。

 

公立カレッジに入るには日本の高校の卒業証明書、そして英語のテストであるIELTS(アイエルツ)5.5以上の証明書の二つが必要であり、IELTSの試験は毎年冬にやっている。

 

なのでこれからは英語の勉強だけに集中しろ、と教師が結論する。

 

その時、響の携帯に花井から電話がかかってくる。

 

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かけ直そう、と呟いた響に、出版の人からの電話なら、今した試験の話を早く伝えるために出た方がいい、と教師。

 

響は、別に急がない、と答えるが、教師は、仕事に関わることは早い方が良い、と断言する。
教師は、小説を書いてほしいのだろうが、響がこれから半年程で英語をマスターしないといけないという事情を先方に説明しておくように、と続ける。

 

電話に出た響に、まず花井が伝えたのは『ティンカーベル』への賛辞だった。
新雑誌の連載なら間違いなく反響が来る、と絶賛し、花井はさらに、その上でね、と前置きする。
「海底都市の話を書いてみない……?」

 

それに対し響は、だから書くって! と即答する。

 

花井は、本来は受験期の真っ只中の響から受け取るのは『ティンカーベル』で十分、と言いながらも、響が海底都市の話をしだすから、と自分が心変わりした理由を切り出す。
小説は書きたいと思った時が書くべき時であり、何より自分が読んでみたい、と花井。

 

だから書くって、と響は繰り返す。

 

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簡単に言わないで、という花井に、響は、簡単には言ってない、今年は小説書くつもりなかったし、と答える。
「でも純文で新雑誌なんて生まれて今まで聞いたことない。楽しそう。参加したい。」

 

花井は響に、受験に絶対合格することと、9月創刊の新雑誌に向けて、来月6月中に小説の全体像を固めておくことを告げる。

 

うんわかった、と簡単な返事で電話を切った響に、話はついたか、と教師が質問する。

 

「うん、9月から新連載が始まるって。」

 

教師は口をあんぐりと開き、言葉を失う。

 

試験もちゃんとするから、という響を前に、教師は、話ってここまで通じないものか、とがっくりと項垂れていた。
「天才か……言っとくが、試験は鮎喰の都合は聞いてくれんぞ。」

 

「大丈夫、最悪でも死にはしないよ。」

 

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感想

響の予想外の態度

まず今回の話で、響はやりたいことがいくつもできて良かったなー、と思った。

 

留学に加えて、新しい作品の執筆。

 

響の高校最後の年も充実しそうだ。

 

特に若いうちは、色々と欲張った方がいいと思う。

 

しかし響が、ここ一年は仕事しない、とあれだけの迫力ある態度で言い切ったにも関わらず、花井に対して自分から新作を書くと申し出るとは全くの予想外だった。

 

前の号の時点では、響が「仕事をしない」と言ったらテコでもきかないと思っていたから、正直、処女作があったとしてもその提供を新雑誌にしてくれるかどうかすら危ういと思っていたわ……。だから拍子抜けの感はある。

 

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でも花井は、とりあえず響が処女作を提供してくれるのに加えて、新作の執筆にも前向きという願ってもない状況に対して、安堵するというより、彼女が受験期にあることを終始気にかけていた。

 

響の人生を思いやる姿勢は決して建前やポーズなどではなかった証左と言えるだろう。

 

それを感じたから響が新作を書く気になった……という訳ではないだろう。
でも、大人になったら少しは花井の心遣いに思いを馳せてほしいなーと思った。
花井は響に仕事をさせず、新雑誌創刊という大チャンスをふいにすることも覚悟していたはずだ。

 

これから、響が合格できるか、小説がきちんと仕上がるか、でまた心労が溜まりそうな気もするけど、一番の山は越えたと言ってよいのかな?

 

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受験期にある響のことを思って仕事をさせたくない、でも新雑誌に響の連載が必要、という苦しい状況は花井を消耗させたことだろう。

 

とりあえずは、そんな閉塞状況からは解放されたわけで……。

 

花井が言っていた、小説は書きたいときに書くべき、という言葉は、響は言われるまでもないと思っているのではないか。

 

だからこそ新作の執筆を申し出たのだと思う。

 

留学に関して頭を巡らせながら、仕事をしないと言い切っていたのにそれとは裏腹に新作の着想を得ていた響は、やはり天才なのだろう。

 

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リカお手柄

今回の件で、リカの果たした役割は大きかった。

 

響の処女作の存在に関して花井に伝えたこと、響に連絡したこと、いずれもいい仕事だった。

 

フィンランドにいながらこの働きぶり。天才というより、秀才だなぁと思う。
欠落した部分がないから尖っていないとでもいうか……。

 

今後もしばらくは電話でのやりとりか、もしくは長期休暇期間に日本に里帰りする時が登場の機会になると思われる。

 

響が留学することになったら、イギリス、もしくはフィンランドで会う話がありそう。

 

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涼太郎

花井の、つまりリカの推理は完全には当たっていなかったようだ。

 

別に涼太郎に酷評されたから処女作を公表しなかったわけではなく、単に忘れていただけ。
それにそもそも自分でもあまり納得のいった作品にはなっていなかった。積極的に見せるものではなかったということか。

 

涼太郎の感想は、よくわからない、という正直なものだった。
それに対して響がショックを受けるはずはなかった。

 

響にはどこまでも恐れなどないんだな。
自分の作品がどう思われるかもそうだけど、あらゆる局面で迷わず行動を起こしている。

 

周囲との軋轢は起こしやすいが、結果として物事を良い方向に進めていけると無意識で思っている感じが羨ましい。

 

いや、良い方向に進まなくても後悔しない潔さというべきか。

 

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教師が素晴らしい

きちんと響の進路に関して調べて、響が目指すべきところ、やるべきことを整理してみせた。

 

教師なら当然の仕事と思うのは良くない。
面倒くさがって何かしら理由をつけてやらない人なんていくらでもいると思う。
その場合、響なら実力行使に出るんだろうけど(笑)。

 

それに加えて、花井から電話が来た時も、仕事に関わることは早い方がいい、と素早い事情の説明を促した。

 

これも響のことを想ってのアドバイスとして正しいと思う。

 

今後もこの教師の出番はありそうだなぁ。

 

以上、響 小説家になる方法第97話のネタバレを含む感想と考察でした。

第98話に続きます。

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