第61話 靴下
第60話のおさらい
東京に無数のカラスが落下していく。
テレビは海上のサタンに攻撃を続けているものの、サタンは無傷であり、あと3日で東京に着くペースで進んでいると伝える。
サタンの接近と因果関係は不明だが、ここ数日で関東圏で自殺者数が増えていた。
テレビはその理由を、サタンから出ている波長が生物に脳に害を及ぼしているのではないかと報じる。
東京から地方への疎開の動きも始まっていた。
そんな状況下にあって、零は映画の撮影を行っていた。
一方パピコはスタジオで番組収録に参加していた。
本番開始前、パピコは体調が優れないものの、すぐに大丈夫だと宣言して撮影に臨むのだった。
零と中島は駅に向かっていた。
中島は、カラスが死んでいる原因はおそらくサタンによるもので、ニューヨークでも起きていたのだという。
東京は人が減ったと呟く零。
中島は両親が金沢に帰ると言い出したと答える。
親戚全員が関東圏である零は、終末を描いた映画が好きな父が、東京に残って最後まで見届けるらしいと続ける。
撮影を終えたパピコは、体調が良くなったとマネージャーに報告していた。
サタンが近づいているために体調不良が起こる。
他のスタジオでも体調不良が出ているとマネージャー。
パピコは、防衛省からメール来て、サタンが上陸したらまた来て欲しいとの要請があったことを報告する。
マネージャーはパピコが命を張って日本を守るのはおかしい、法律で強制力がないと言って、無視を勧める。
パピコはマネージャーに薬局に寄るよう頼むのだった。
帰宅したパピコは、鬼頭軍曹とヘフナー伍長がパピコのAVを興味深そうに見ていることに気付く。
テレビを消して、トイレに向かうパピコ。
鬼頭軍曹とヘフナー伍長は真っ黒な画面を見つめて沈黙していた。
ヘフナー伍長が、交尾は意味がないどころか人体に有害だと教わったと切り出す。
二人は喘ぎ声の真似をし合うと、ヘフナー伍長は鬼頭軍曹に手を合わせるよう呼びかける。
互いに手を合わせて、軽く握り、暫し見つめ合う。
「きゃっ」
突然手を離す鬼頭軍曹。
「なんです? 今の声は……」
ヘフナー伍長も、鬼頭軍曹と同様に頬を染めていた。
自分の思いがけない反応に、戸惑う鬼頭軍曹。
何故か心拍数が上がってる気がするとヘフナー伍長は鬼頭軍曹を見つめる。
鬼頭軍曹は、自分も、と言って、ヘフナー伍長の手の上に自分の手を重ねる。
トイレに入っていたパピコは、両手で顔を覆っていた。
「どうしよう……零…くん…零くん……」
妊娠検査薬の結果を再度確かめるパピコ。
検査結果は陽性だった。
第61話 靴下
電話
パピコは靴も履かずに外に出ると、おもむろに零に電話をかけ始める。
マンションから出たパピコを、ちょうど買い出しから戻った桃ノ木少佐と塩沢上等兵が見つけていた。
しかしパピコは立ち止まって自分を見ている二人を無視し、スマホを耳に当てたまま住宅街に向けて歩き始める。
呼び出し音が続く。不安そうなパピコ。
その頃、零は母との食事中だった。
零のスマホの着信がパピコからだと気付いた母に、取らなくていいのかと促され、零は電話に出る。
沈黙しているパピコに、どうしたのかと訊ねる零。
パピコは、子供が出来た、と言い出し辛そうに切り出すのだった。
黙ってしまった零に不安を覚えたパピコは、どうしようと繰り返し始める。
零は目を閉じ、震える手でスマホを顔に押し付けるようにしていたかと思うと、天を仰ぐ。
その目から涙が流れていく。
「ちほさん…家…? 今からそっち行く。」
「私も……そっち向かってる」
「本当!? すぐ行く!!」
靴も履かずに玄関から出ようとする零に、母が今頃どこに行くのかと訊ねる。
「うん!! ちょっと!!」
零はそう答えて、夜の住宅街に駆け出すのだった。
歓喜
二人は走り始めていた。
「やっ!! 神っ様っ やった!!」
零は息を切らしつつ、ガッツポーズをしながら夜の街を走る。
互いを求め、二人は夢中で走る。
二人が出会ったのはいつか二人乗りした自転車で下った坂道だった。
ゆっくり歩み寄っていく二人。
手が触れる距離まで近づいて、二人はお互いに靴を履いていない事に気付く。
「本当……? 僕と…ちほさん……の……」
「産婦人科に行ってくるけど、たぶん間違いないと思う……」
パピコを抱きしめて、嬉しい、と呟く零。
本当に? と聞き返すパピコ。その目から涙が流れる。
「零くんまだ…高校生だよ。」
「大丈夫なの? 産むよ…あたし…」
「もちろん!! もちろん!! すっごい嬉しい!!」
零はパピコを抱きしめたまま、幸せと呟く。
「ああ…ちほさん。ちほさん……ちほさん……」
パピコは零が本当に心の底から喜んでいることを確信してほほ笑む。
二人は並んで歩き出していた。
パピコが事務所と話し合って今後のことを考えなければと呟く。
高校やめて働こうかなという零に、ちゃんと卒業してとパピコ。
「でも…子供養わないと。」
「いいの…私 何億持ってると思ってんの。」
それじゃヒモみたいだと零は顔を曇らせる。
「いいよ、ヒモで。」
「僕がやだもん。」
「……でも高校は卒業して。」
感想
靴も履かずにお互いの元へ駆けていく二人。
二人の溢れる想いが伝わってくる演出がいいな~。
もちろん、まだ働くことができない高校生が女性を妊娠させるのはどうかと思う。
でも愛する人の妊娠を共に喜び、高校をやめて働こうとする零の反応が本来は当たり前なんだよな……。
お互いに心の底から好きな相手であれば、自然とそうなるということだと思う。
そして、何億持ってると思うの? と言って零を高校卒業するよう諭すパピコもかっこいい。
互いに暫く会う機会を持たないはずだったが、事態は変わったわけだ。
二人の絆はより強固になった。
そして、着々と東京に近づくサタン……。
以上、ギガント第61話のネタバレを含む感想と考察でした。
第62話に続きます。
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