第45話 サタン
第44話のおさらい
新宿を歩く三人の若い男。
彼らの近くを通る女性たちはみんな、その中心にいる背の高いイケメンの陵に魅了されていた。
一緒に歩く男が言った声優の彼女についてゲスな呟きに、陵は得意げに反応する。
パピコは有名な番組にゲストとして登場していた。
その番組を、零はパピコの部屋で、本人と一緒に観ていた。
パピコから芸人はもちろん、スポーツ選手や俳優にも言い寄られると聞いた零は、その後一緒に風呂に入りながらなぜハイスペックな男たちよりも劣る自分と付き合っていていいのかと問いかける。
パピコは幸せそうな表情で零を肯定する。
「零は私のすべて。零は私の命。」
それが信じられない様子の零に、パピコは零の良い点スラスラと列挙し始める。
教室で、零は中島と向かい合って座っていた。
少し離れたところで男女で集まっているグループの中で、パピコのファンクラブに入ったという話題が聞こえてくる。
羨ましがるのはパピコと同じ髪型の女子生徒たち。
中島はスマホでクラスの掲示板を見ながら残念そうな声を上げる。
スマホには、ハタチになっても童貞そうな男子ベスト3というランキングの1位が中島、2位が零という結果が表示されている。
零はパピコと付き合ってるんだからいいよな、と中島が言うのを零は必死で止めようとする。
帰宅途中、零と中島が電車を待っていると、パピコの彼氏についての話題が聞こえてくる。
零はその会話に耳を澄ましていた。
中島はスマホを見ながら、パピコの廃盤になったAVがヤフオクで10万のプレミアム価格がついていると呟く。
その呟きに対して、全て持っているがもう見れないという零に、納得する中島。
パピコは東京ガールズアワードに出演し、大歓声の中でランウェイを歩いていた。
零はその様子をテレビのニュースで見ていた。
自室でそれを伝える零。
明日パピコと会う約束を取り付けて通話を切ると、直前までの明るさは一転、零はため息をつくのだった。
とある家庭で、主婦は「ETE 代わり 本物」とスマホで検索していた。
ホームで電車を待つサラリーマンはETEで「みんなのお願いベスト3」というページを閲覧している。
1位の「東京 震度 3」以下、2位から5位まではパピコ関する悪意のあるお願いだった。
陵は、これも偽モノか、とスマホを見ながら呟く。
陵が表示させていたページはETEだった。
みんなのお願いベスト5
1.パピコが街を破壊しまくる
2.パピコの裏ビデオが出る
3.パピコの彼氏が死ぬ
陵は、面白くない、と吐き捨てる。
「帰ってパソコンでダークウェブ漁ってみるか――」
第45話 サタン
母親との電話
零とパピコは、パピコが出演している超大物芸能人のトーク番組をパピコの部屋で一緒に見ていた。
あと出ていない番組は紅白くらいかな? という零に、確かに夢みたいだった、と振り返るパピコ。
零はこの大物芸能人に二人で食事に誘われたのかとパピコに問いかける。
誘われたけどそれはネタではないのか、と問い返すパピコに、本気だよと零。
パピコはスマホが鳴っていることに気付き、電話をとる。
電話をかけてきた相手は母親だった。
母親は挨拶もそこそこに、パピコがCMに何本も出ていることを指摘し、大金を稼いでいることを確認すると、欲しい物件を見つけたと話を切り出す。
一瞬何のことか分からない様子のパピコだったが、母親のためにマンションを購入しろという話だと理解して徐々に顔が曇っていく。
その物件の価格が1億5000万だと聞き、しばし沈黙するパピコ。
しかしほどなく、ええよー、と電話口でそれを了承するのだった。
零はその会話をテレビに視線の向けながらもじっと聞いていた。
あんたはええ子やね、と声を弾ませる母親に対して、大丈夫、と返すパピコの声は弱かった。
そして母親はさらに、兄たちの分も賃貸でいいのでお金を出すようにと頼み始める。
兄たちは母と一緒に住まないのかというパピコの質問に、母は彼氏を見つけたと答える。
パピコは寂しそうな表情でしばしの沈黙したあと、そっか、と返す。
母親はパピコの声音が変わったことにも全く無頓着な様子で仕送りも要求し、電話を切るのだった。
電話を終えて、さきほどとはうって変わって沈んだ表情をしているパピコを、零はじっと見つめていた。
ニューヨークに出現
ETEにより手痛い打撃を受けたにも関わらず、ETEの代替となるサイトを求めてデザインが模倣されているサイトを探索し続ける人たちがいた。
陵は、日本以外にはETEがまだあることに気付く。
特にアメリカでは、大統領がETEの科学的根拠を認めていないため、ブロッキングをしていないのだった。
アメリカのETEに書き込めないのかという女の問いかけに、めんどくさいな、と陵は呟く。
零はパピコが父をプロデューサーとする映画に出演することを中島に話していた。
中島にジャンルを問われ、ゴヂラとパピコが闘うと答える零。
下校時、だからしばらくパピコと会えない、と元気がない零と一緒に歩く中島は、街行く人がパピコの名を呟きながら楽しそうに駆けていくのに気づく。
零は父が映画のテスト映像を撮ると言っていたことを思い出す。
行ってみようぜ、と走り始める中島。
街中に巨大化したパピコが水着を着て立っていた。
野次馬たちはパピコを眺めて歓声を上げる。
映画のテスト映像は普通は秘密で撮るものなのに、これでは映画をやると言っているようなものだと呟く中島。
零と中島はもっとパピコの近くに行こうと再び走り出す。
撮影テストの現場に到着すると、人々はパピコに向けてスマホを向けていた。
制作スタッフたちからかっこよく構えて、と指示を受けるパピコ。
恐怖
帰宅し、母と夕飯を食べながらパピコの映像テストの話をしていると、テレビ画面の上部に、ニューヨークにサタン出現という緊急速報が流れる。
番組は急遽報道番組になり、ニューヨークからの中継に切り替わる。
画面がニューヨークに切り替わると、映し出されたのは巨大なサタンだった。
実況をするはずのリポーターは、あまりのショックに泣きはじめてしまう。
零と母親もテーブルに顔を伏せて震えていた。
「なんだ……アレ。凄い……アレ……」
「零………零……怖い…見れない……」
零はリモコンでテレビの電源を切る。
「なんだ……今の…なんだ…今の……」
感想
これまでの個体と違うのか?
束の間の平和だったか……。
サタンが現れたのはニューヨークだけど、東京に災禍が降りかからないとは限らないからなー。
地球を覆うギガストラクチャーが敵のAI(なのかどうかまだ不明だけど)だとしたらまだまだ日本もETEの脅威に晒されていると思う。
零と母親がテレビに映ったサタンの姿に震えていたけど、東京の惨状を味わった人からすれば当然の反応なんだろうな。
というかこのサタン、東京に現れた奴らよりも大きくないか?
それに加えて何か、さらに恐怖を煽る要素が付加されている個体なのだろうか。
中継している現場のリポーターや、零や母親の怖がり方が尋常ではない。
確かアメリカにもパピコと同様に巨大化するヒーローがいたはずだけど、もし勝てなかったらどうなってしまうんだろう。
ニューヨークはおろか、下手すれば全米各地の都市がほぼ滅亡するんじゃないか。
それは人類にとって相当堪えると思うわ。経済的にはもちろん、世界最強の軍事大国であるアメリカが勝てないということは、どの国も対抗する術がないことを意味している。
ひょっとしたらパピコが万が一の時にはサタンと戦う要員として、ニューヨークに向かうことになるのか?
今からではとても間に合わない気がするが……。
クソ親
やはり出てきたパピコの母親。
どこまでも実の娘にタカるつもりであり、それが当たり前なんだろうなこの酷い親にとっては。
パピコと母親のやりとりが本当に気分悪い。
あのがめつい母親が、パピコが売れまくっている状況を見逃すはずがないわな。
しかし1億5000万のマンションとかふざけてるわ。
電話での会話ですでにムカツク。
零とその両親という家族が出きたわけだし、実の家族とはいえ見捨ててしまえばいいのに……。
本当にマンション代支払っちゃうのかな……。気分悪いからやめてほしい。
零もなー、パピコが誰と何を話しているのか大体わかっているんだろうから、止めてあげたらいいのに……。
手切れ金としていくらか渡して縁を切ったらいいと思う。
サタンの対処が気になるけど、パピコの今後の家族との関係も気になる。
敵を倒すのと同様、家族との関係でもスカッとさせて欲しい。
以上、ギガント第45話のネタバレを含む感想と考察でした。
第46話に続きます。
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