第94話 全員 生きて
目次
第93話のおさらい
レイ達はレウウィスに背後から爪で腹部を貫かれたエマを呆然と眺めていた。
やがてレウウィスに持ち上げられていたエマの身体は夥しい鮮血と共に地面に崩れ落ちる。
「ありがとう 本当に楽しかった」
レウウィスはうつ伏せに倒れているエマに触れて感謝を述べる。
エマを傷つけられた憎しみに顔を歪ませるレイたち。
レウウィスを一斉斉射する。
「君には 君達には最大の敬意を払おう」
レウウィスは不敵な表情でレイたちに向き直る。
レイは銃を撃ちながら、エマに対して心の中で”起きろ”と呼びかけ続ける。
エマは完全に自分のいる場所の感覚を失っていた。
俯せに倒れたまま睡魔に襲われるエマの前に、様々な幻が現れる。
これまでに起こってきた猟場での数々の悲劇。
そして自身を支える家族たち。
シスタークローネも現れ、不敵なセリフを吐き捨てていく。
やがてエマは自分の為すべきことを思い出し、体を動かそうと試みるが動くどころか意識は深い底へと沈んでいく。
そこにノーマンが現われ、エマの手をとる。
エマの沈みゆく意識を引き上げていくノーマン、そしてイザベラママ。
エマは意識を取り戻し、立ち上がっていた。
その手にはシェルターから持参した4連の銃口を持つタイプの銃がある。
オジサン、ヴァイオレット、ナイジェル、レイはエマが立ち上がっている事に気付く。
レイはエマが手にしている銃をじっと見つめていた。
声を出す事すらままならないエマは、考えていることを仲間たちに伝えることが出来ない。
包囲して撃てというレイの号令を聞き、エマはそれが自身の意図を汲んでくれたのだと理解していた。
レウウィスを包囲して銃弾を撃ち込む戦士たち。エマも4連の銃をレウウィスに向けて撃つ。
無数の銃弾の中に、レウウィスはエマの発射した奇妙な型の銃弾を見つける。
それが閃光弾であると気づいた時には既に炸裂していた。
レウウィスは、もはや閃光は避けられず、これ以上銃弾を食らうと再生は不可能、つまり既に詰みの状況にあることを悟り、心の中で負けを認める。
「やはり人間は良い」
呟いたレウウィスの目をオジサンが狙撃する。
レウウィスが仰向けになり地面に崩れ落ちていく。
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第94話 全員 生きて
レウウィスを仕留める
深手を負いながらも立ち上がったエマ。
その手にはシェルターから持参した4連の銃がある。
いち早くエマの意図に気付いたレイがレウウィスを包囲して一斉斉射を呼びかける。
オジサンもエマの銃を見て、それが閃光弾を発射することを思い出していた。
レイ達はレウウィスを取り囲んで銃弾を撃ち込んでいく。
銃を撃ちながら、レイは手応えを感じていた。
レウウィスはエマの銃が閃光弾を撃てるとは夢にも思っていないはずなので、エマが撃つ閃光弾も普通の銃弾としてしか認識しない。
飛んできた銃弾をこれまでと同様に掴んで止めようとするだろう。すると、銃弾に紛れて飛んできた閃光弾から避ける事は出来ない。
レウウィスに閃光を食らわせたら銃弾は手で防がれる事無く全身にヒットする。
そうすれば回復が追いつかないほどに撃ち込んで、急所である目を狙える。
(嗚呼)
大量の銃弾を全身に受けたレウウィスは笑っていた。
「やはり人間は良い」
屋根の上で銃を構えていたオジサンが、レウウィスの目を狙撃する。
急所を撃ち貫かれた最期の瞬間、レウウィスの脳裏にはこれまで生きてきた記憶が走馬灯のように甦っていた。
その中にはソンジュとムジカの映像もある。
歓喜もそこそこに
大の字に仰向けになって倒れたレウウィス。
ピクリとも動かない様子に、レイ、ナイジェル、オジサンは勝利を確信して快哉を叫ぶ。
深手を負い激しく息をつくのが精いっぱいのエマだったが、その視線は喜びに沸き返る仲間を見つめていた。
そしてその内心で、これで猟場が終わり、子供達が怯えることも、オジサンの長年の苦しみも終わるという感慨に浸る。
「やったよ みんな」
ヴァイオレットはこれまで犠牲になってきた仲間たちを思い涙する。
「やったよ…!」
レウウィスの打撃で吹っ飛ばされて全身を壁に強かに撃ち付けられたアダムのことを思い出したナイジェルは、アダムの元に駆け寄る。
ほとんどダメージを受けていない様子で、平気で立ち上がったアダムを見て、よかった、と喜ぶナイジェルとヴァイオレット。
レイはその異様なタフネスぶりにアダムが一体何者なのかという疑問を持つ。
エマもまたアダムの無事や、仲間たちにもケガがないことを喜んでいた。
負傷したペペの治療のことを考えながら、体力の限界に達したエマは地面に崩れ落ちていく。
意識のないエマを抱き上げ、レイは必死に呼びかける。
再会
バイヨンの爪を腹部に受けたオリバーが意識を取り戻す。
痛みでまともに起き上がることも出来ない。
しかしそれにも関わらず、戦う意思を見せる。
その視線の先には今なお治療を受けているザックやサンディの姿がある。
戦況を気にするオリバーに、子供達は答えを口ごもるばかり。
そこにナイジェルが到着する。
戦闘の結果を問われ、ナイジェルは全員を斃したことを笑顔で報告する。
一瞬の間の後、塹壕に子供達の歓喜が響く。
他の仲間を心配しているルーカスに、今来ると答えるナイジェル。
間もなくペペに肩を貸したヴァイオレットと、エマを背負ったオジサンが現れる。
エマの治療を必死に呼びかけるオジサン。すぐにルーカスに気付く。
言葉もなく見つめ合ったあと、互いに歩み寄りそれぞれの肩に顔を埋め合う。
「生きてた…本当に良かった!」
笑顔のルーカス。
「こっちの台詞だバカ野郎!」
オジサンも笑う。
エマとペペの治療が先だと二人は地面に横たえられる。
オジサンは、早く手当をしてすぐにGPを出ないと、と呟く。
その理由を、屋敷にいるバイヨンの手下に気付かれる前に逃げるためだと続ける。
まだ負傷者がいる為に動けないという子供達。
ボスを斃したのだから、屋敷の怪物を斃してから逃げることは出来ないのかという子供達からの提案をオジサンは、情報がない、と一蹴する。
情報を得ていたバイヨン達に比べて、屋敷の手下たちに関しては全くわからない。
加えて自分たちが消耗し切っているので、屋敷に攻勢をかけて犠牲者を増やすのは得策ではないとオジサンは説明する。
治療にあたっていた子供がルーカスに薬が不足していることを報告する。
その言葉に固まるオジサンとルーカス。
ヴァイオレットは傍らに倒れている大量の負傷者を見て、薬の不足を理解する。
レイはせめてエマの止血をしようと呼びかける。
シェルターに戻れば輸血もその為の器具もあるし、ハウスから持ってきた薬も多少はある。
加えて、レイの脳裏にはムジカからもらってきていた薬のことも頭をよぎっていた。
最低限の応急処置をしてすぐにシェルターに向けて出発することを提案するレイ。
「今すぐ連れ帰りゃエマはきっと…まだ助かる!」
(いや それができなきゃエマは死ぬ)
レイは何としても死なせないと表情を強張らせる。その脳裏ではエマの言葉を思い出していた。
(誰一人死なせない 全員生きてこの密猟場を出るの)
必死なレイの呼びかけに子供達は言葉を失う。
「けど……」
ナイジェルが重い口を開く。
「エマ…確かここに4日かけて来たって…」
オジサンは、最短距離でいけば一日半で戻れる道もある、と呟く。
しかしそのルートは来た道よりも険しく、大勢の子供達や、ましてや負傷者を連れて踏破することは難しいと考えていた。
オジサンは妙案がないかと必死に思考を回転させる。
「置いて行って」
突然の言葉に、え、とルーカスが振り返る。
「俺達を置いて行ってルーカス」
オリバーが薄く笑みを浮かべている。
感想
決断出来るのか
オリバーは、負傷者の自分たちを置いて無事な人間だけでシェルターに向かえと言った。
そんなこと出来るわけないだろうに……。
そうなるとルーカスやその他の無事な面々も残ることになるのでは……。
オジサンの言った通り、ボスは斃したものの、まだまだ屋敷には数も正体も不明の鬼の手下たちがいる。
もし猟場に残る場合、手下の数があまりにも多ければ、現在ルーカス達の主だった戦力は半分が伏しているから、今後の彼らからの攻撃を凌ぐことは難しい気がする……。
今後、バイヨンたちがやられた事を知った手下たちが他の貴族鬼に報告することで、猟場に新しい持ち主が現れるだろう。
少なくともバイヨンは鬼の社会では中々の名士っぽいから、食用児達に殺されたという事実は鬼達に衝撃を与えるはずだけだけど……。
そうなったら、残ったメンバーはまた以前と同様か、もしくは1日に狩る人数が制限されていた以前よりも激しい戦いの日々になっていくんじゃないか。
オリバーの猟場に残るという宣言の際の表情からは諦めしか読み取れない。
こんな表情で、自分たちを犠牲に生きてと言われてルーカスやオジサンが置いていけるかな……。
ルーカスはリーダーとして残酷な選択を迫られた。
多くの無事な子供達の命を救う為にオリバー達少数の負傷者を切り捨てるという決断が果たしてルーカスに出来るのか。
オリバーの提案は合理的だと思う。でも人間は合理だけで生きてはいないのよ……。
ルーカスには彼らを見捨てられないでしょう……。
ひょっとしたらオリバーは集落に仕掛けた最終手段を発動させるつもりなのか?
それがどんなものなのかはまだ明かされていないけど、恐らく不可逆的な地形の変化を伴うものだと思う。
もし集落と屋敷とを遮断するような手段だったなら、それを発動して数日耐えてシェルターからの助けを待つとか?
オリバーが”俺を置いて行って”と言ったなら犠牲になるつもりだというのが分かるけど、”俺達”って言ってたから生き残る算段はあっての提案だと思いたいところ。
猟場は第二のシェルターに?
仮にもしルーカスが残るとしたら、以降の鬼の攻勢を凌ぐ策があるのだろうか。
エマが来る前と比べてルーカスの何が一番違うか。
一番大きいのはペン型端末でこれまで行けなかった扉の奥に行った経験だろう。
その経験の中で得た人間の世界に通じる道が各所にあるという情報ももちろんルーカスに希望を与えるものだったけど、直近では制御室の存在の方がインパクトはデカイ気がする。
制御室を使って以前より守備を固められるとか?
以前より鬼に生活を脅かされる事無く生活していけるという目算は立たないかな……。
猟場は元々シェルターと同じで、ウィリアムが食用児に残した生存確率を高める為の施設だった。
ここにきてその機能が発揮されるという展開はおかしくないと思うんだけど……。
元々シェルターと同様の施設にいるのであれば今すぐ動く理由はない。
大所帯で鬼に遭遇する危険な荒野を移動するより遥かに安全だ。
……ただ、猟場を本格的にシェルターにするには現在は鬼の棲み処となっている屋敷が重要だったりするかも。
もしそうだったら次の領主が決まるまでに屋敷を制圧しなくてはならないからやっぱり無理か……。
現在の戦力では屋敷に攻めて制圧するのはひょっとしたらボスを斃すのと同じか、もしくはそれより難しいと思う。
果たしてルーカスはどんな決断を下すのか。
再会
待ちに待ったオジサンとルーカスの再会!
割とあっさりだったけど、あまりドラマチックになり過ぎなくてリアルだと思った。
重傷者を抱え、まだ正体不明の鬼が屋敷にいることから状況はまだまだ逼迫していると言えるし、いい歳の男同士の再会なんてこんなもんだ。
医療器具や薬も不足しているし、もしルーカスがオリバー達を見捨てることが出来なければ、オジサンとルーカスにはお互い積もる話はあるはずなのに、ほとんど話せないまま別れることになる。
仮に、もしルーカスが鬼の攻勢を防ぎ、きちんと猟場からシェルターへと変革を進めて生きていればまた会う機会はあるだろう。
でもそんな都合よくいかないだろうし、ここでの別れは今生の別れとなる可能性大だと思う。
そうなると、さすがにオジサンの本名は来週発表されるかな? 別れ際までに名前を呼ばない方が不自然だし、流石に期待して良いと思うが……。
シェルターに辿り着くまで気を失っていたエマが目を覚まして、そこで知るという展開もある。でももしそうならそこまで引き延ばすのか(笑)。
オジサンの名前に重要な伏線があるか、もしくはこれまでに出た伏線の回収が期待出来るのかも?
次のミッション
来た時よりも困難なルートを大勢の子供達を連れて、負傷したエマを抱えてシェルターまで帰還する。
次週の展開如何によってはルーカスや大勢の子供達は猟場に残るかもしれないけど、深手を負って死にかけのエマを連れて難しいルートを踏破するというだけでも中々緊張感があって良いミッションだと思う。
この疲労困憊の中で矢継ぎ早に問題が降ってくる展開は好きだ。ギリギリ感があって最高。
でも案外ダイジェストで終わったりするんだよなー。
話自体が進んでいたり、謎が解かれているわけではないから、あまり長く続くと若干の間延び感は否めなくなっていく。
気になるのはレウウィスの走馬灯の中に会ったソンジュとムジカの存在。
一体どんな関係だったのだろう。気になる。
読者としては面白い展開を期待するのみ。
以上、約束のネバーランド第94話のネタバレを含む感想と考察でした。
第95話に続きます。
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