第140話 来たよ!
目次
第139話 鬼探し2のおさらい
ギルダの質問
(バレた!!?)
ソンジュとムジカをどうすれば救えるかという会話内容を、いつの間にか接近してきていたアイシェに聞かれていたことに気づいたドンとギルダ。
会話内容を全部聞かれたことを気にするドン。
そんなドンの視線に対し、ギルダは、まず気にするのはそこではないと考え、アイシェにどうしてと問いかける。
「あなた…言葉が解るの? アイシェ」
アイシェの過去
農園の職員として、食用児の廃棄ラインで働いていた鬼がいた。
その鬼は、ある日突然、顔の右半分が醜く歪んでしまう。
きちんと人間を食べていた。、しかし一向に治らない。
幼少期から顔の醜さを他の鬼にバカにされ、差別を受ける日々を過ごしていた彼は、自分の顔を呪いだと捉えていた。
そんなある日、鬼がいつものように廃棄ラインのベルトコンベアに乗ってくる食用児の赤子を選別していると、その中に顔の右目あたりに醜い痣がある個体を発見する。
その赤子に自分を重ねた鬼は、気づいたらその赤子をラインから救い出して、町外れにある自宅に連れ帰っていた。
廃棄処分される個体とは言え、農園の所有物を盗んだことを後悔し、おろおろする鬼。
いっそ食べてしまって証拠隠滅を図ることを考えるが、鬼は思いとどまって育てることにするのだった。
元々町から離れていたところに住んでいた彼は、赤子を飼うことを決めてからは更に森の奥へと隠れ住むようになり、さらに農園での仕事も辞めてしまう。
イチから、自分とは異なる種族である人間の赤子を育てる悪戦苦闘の日々の中が続く。
鬼は、アイシェと名付けた人間の赤子の成長とともに、いつしか自分自身を呪っていたことを忘れて幸せな日々を過ごすようになるのだった。
しかしある日、4人の側近を率いたノーマンがやって来てその幸せは破壊されることになる。
アイシェに隠れているよう指示して外の様子を見に行った鬼は側近たちの手により殺されてしまう。
隠れていたアイシェの元にやってきたシスロは、さきほど自分たちが殺した鬼がアイシェを愛情いっぱいに育てていたことなど考えもせずに彼女を保護するのだった。
「(許さない よくも…)」
アイシェは泣きはらした顔で、しかし憎しみを込めた視線をシスロに向けながら鬼の言葉で怨嗟を表現する。
「(殺してやる 殺してやる!!)」
安堵するドンとギルダ
アイシェはギルダが自分に対して、どうして、と言ったことがどういう意味なのかと深く追求していく。
「私が言葉が解ること? それともそれを黙っていたこと?」
「”嫌い”だから」
アイシェは自分を育てた父は鬼であり、人肉を食べていたが家族だったこと。
そんな父を殺したノーマンたちは仇であり、口もききたくないが、生き抜くために無知を装って従っているのだと答える。
「あんた達は?」
固唾を飲んで聞いていたドンとギルダにアイシェが問いかける。
アイシェはドンとギルダがなぜノーマンたちをはじめ人間が敵視する邪血を殺さず、逃がしたいのか、彼らとの違いを問う。
それに対し、違うというほど違わない、とドン。
鬼は憎いし怖いと思っているが、ソンジュとムジカは自分たちを助けてくれた恩人であり、友達だとドンは続ける。
そして、悪い鬼ばかりではないから争いたくない、というエマの言葉を紹介し、自分たちも出来ることなら鬼を絶滅させたくないからそのためにソンジュとムジカを探していると結論するのだった。
ギルダは、もしアイシェがノーマンから命令を受けた護衛兼刺客ならば自分とドンがムジカたちを守らなければと思っていたことを本人に告白する。
「なあアイシェ… ノーマンは… ボスはアイシェにムジカ達を殺す命令を――」
意を決してドンがアイシェに問いかける。
それに対しアイシェは、知らない、そんな命令は受けていない、と即答する。
「むしろ私はあんた達が――」
「よかった~!!」
安堵するドンとギルダ。
ノーマンがきちんと自分たちを保護するためにアイシェを護衛につけてくれていたこと、そしてソンジュとムジカをいきなり殺害することはしないときちんと考え直してくれていたと二人は涙を滲ませる。
唖然とするアイシェの手を取り二人はアイシェが刺客ではなかったことにも安堵し泣くのだった。
(ドンとギルダ…)
二人を見つめるアイシェ。
ギルダはノーマンが自分たちがソンジュとムジカを楽園に連れ帰らせたらすぐに殺す可能性に思い当たる。
でもしばらくは安全だろ、とドン。
交渉の余地を残してくれているので、少なくとも一番無情なやりかたではないと前向きな意見をギルダに返すと笑顔を浮かべる。
「よかった…! これで安心してムジカ達を捜せる…!!」
その頃、一人パーティから離れてきたハヤトはジンが率いる大勢のアダムのような体型の兵隊たちと合流して、報告業務を行っていた。
今日も手がかりはなしか、とジン。
ああ、とハヤトが返す。
「だがじき見つかる」
ジンが、いいか、と念を押すように言葉を続ける。
「邪血は見つけ次第俺達で殺す」
「全てはボスの命令通りに!!」
第139話 鬼探し2の振り返り感想
予想外だった
面白い。
見事に予想を裏切られた。
アイシェはノーマンが本当にドンとギルダの身を守るためにつけた護衛で、監視任務を負っていたのはハヤトだったのか。
アイシェはハヤトと組んでなどいなかった。
しかし、今回で鬼に対するイメージがかなり変わったなぁ。
廃棄されるはずの不良品扱いだった人間の赤子に醜い自分を重ねて救いだし、さらに鬼の言葉のみならず、人間の言葉までも解るように育てるとは……。
たとえ鬼が食用児の天敵であろうと、アイシェにとって鬼とは大切な親でもあった。
アイシェを育てていた鬼はその間も、自身の形質や知性を保つためにきちんと食用児を食べていたはずだ。
つまり知性さえ保っていられれば、自分の意思でアイシェのような特定の人間を食べないことも可能だということ。
ダイの大冒険のヒュンケルがモンスターに育てられていたエピソードを思い出した。
あれもマジで良い話だったなぁ。
最愛の父を殺されたアイシェにとってノーマンたちはむしろ仇だと言って良いだろう。
アイシェは彼らの事を恩人とも、ましてや味方だとすら考えていないのかもしれない。
つまりアイシェの立場は、鬼の絶滅を防ぐべく行動しているエマたち寄りといえる。
今後はドンやギルダにとどまらず、エマたちにとって強力な味方になっていくことを期待したい。
そして、前回予想していたとはいえ、このハヤトの豹変ぶり。
まさか刺客を大勢引き連れていたとは……。
ハヤトとジンはアイシェと違って完全にノーマンたちに心酔している。
だからノーマンの指示に従うのは当たり前なんだけど、ドンとギルダを欺いてソンジュとムジカ殺害のために行動している姿はショックだったわ。
あのちょっと抜けた親しみやすい性格の裏にこんな表情があったとは。
ドンとギルダはアイシェという信用できる味方を見つけることができた。
アイシェもソンジュとムジカを守る方向で動いてくれるだろう。
しかしすぐ近くで暗殺部隊が待機している。
この状況下で、果たしてドンたちはソンジュとムジカを救うことができるのか。
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第140話 来たよ!
王都へ集う
11月7日。
儀祭(ティファリ)の開催まであと3日と迫っていた。
バイヨン、イヴェルク、ノウム、ドッザ、プポ、五摂家のそれぞれの領から次々と領主の家族たちが大勢の従者を引き連れて王都に向けて出発していく。
イヴェルク公は部下から五摂家の家族が王都に向かっていること、供物や”〇〇の御膳”がじき届くという報告を受けていた。
その頃、プポ卿は慌てた様子で、走り回ってドッザ卿を捜していた。
そんなプポ卿に、捜しても無駄だと声をかけるのはノウム卿だった。
ノウム卿はドッザ卿が自分たちに仕事を押し付けて遊びまわる横暴な鬼であると言い、さらに陛下やイヴェルク公が彼を甘やかすからつけあがる、とドッザ卿の悪口を続ける。
儀祭の間は辛抱だとノウム卿を諫めるバイヨン卿。
バイヨン卿はノウム卿に呼応するように、正直を申せばギーラン様の方が私は良かった、と本音を口にする。
バイヨン卿の言葉にノウム卿は驚いていた。
それは思っても口に出しては、とプポ卿は慌てる。
バイヨン卿は幼い頃にギーランと会った時、彼のことを美しく清廉だと感じていた。
そして、民のことを真に考えていたギーランがなぜ野良に落ちたのか、と悔やしそうに呟く。
その言葉を神妙な態度で聞くノウム卿とプポ卿。
一方、王都を攻めるべく行動していたギーラン一家は、大挙して王都に迫りつつあった。
ブラックホール
”穴”前に、必死で考えるエマとレイ。
レイは”穴”の先がどこかに繋がっていると確信していたが、同時に危険も感じていた。
ブツブツと呟き、考えをまとめようとする。
そんなレイにエマは、この先に〇〇がいる、と笑いかける。
エマの落ち着きに同調するように、だな、とレイは笑顔を見せる。
二人は手をつなぎ、もう片方の手で同時に立方体に触れる。
「え」
レイは床に寝転がっていた。
急いで飛び起き、周囲を見回す。
「レイ」
誰かがレイの名前を呼ぶ。
それはアンナ、トーマ、ラニオンの三人だった。
彼女たちはここにいるはずがないレイを見た驚きのあまり固まっている
自分がいる場所がアジト(楽園)だと気づいたレイは、部屋を飛び出す。
レイは走りながら、ついてきたアンナたちに、今が何年何月何日なのかを訊ねる。
一方、エマはレイとは全く異なる場所へと飛んでいた。
足元の暗い水面や、空にある太陽を見て、エマはついに目的地である”昼と夜の世界”に来たと確信する。
エマのそばに、空から一つ目の竜のような生物が降り立つ。
同時に、遠くから一体の鬼が近づいてくる。
鬼はエマに近づくにつれて、その体が若返っていく。
かつてエマが見た子供の鬼の姿になった〇〇が口を開く。
「やっとあえたね エマ」
それに対し、ちゃんと入口から来たよ〇〇、と答えるエマ。
きみならこれるとおもってたよ、と〇〇。
そして〇〇は、レイは”昼と夜の世界”にあと一歩のところで来れなかったが、家族の元へ帰ったとエマに説明する。
思ったよりもここに来ることは難しい、と暗にエマを讃える〇〇。
「イイ脳だね 君はとても美味しそう」
その言葉にビクつくエマ。
しかし〇〇から、何しに来たのかと問われると、エマは気を取り戻す。
(私の望む未来 全食用児を解放したい 鬼を殺したくない ノーマンを一人で行かせない!!)
「私は…”約束”を結び直しに来たの」
第140話 来たよ! の感想
”約束”の結び直し
やっと〇〇との対面。
しかしそう簡単にエマの願いが通るのかな?
そもそもなぜ〇〇との間でないと”約束”が成立しないのか。
そこからへんの謎も近々解き明かされるのではないかと期待が膨らむ。
とりあえず、すぐさまその願いが聞き入れられるとは思えない。
そんな都合よくいかないわな。
”約束”を結び直すにあたり、おそらくエマは大きな葛藤に直面することになるのではないか。
”約束”の結び直しの代償は、エマ個人に振りかかるものとは限らない。
食用児全体か、最悪、人間の世界にまで及ぶものなのかもしれない。
ギーランと現五摂家の関係
ギーランはバイヨン、ノウム、プポの三人からは、今もその身を惜しまれる存在だったようだ。
確か、ギーランが野良に落ちてしまったのは何者かの謀略のためだったはずだ。
それを仕掛けたのはおそらくギーランに代わって五摂家になったドッザ卿なのか?
今後、ギーランの過去の描写に期待したい。
以上、約束のネバーランド第140話のネタバレを含む感想と考察でした。
続きはこちらです。
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