第2話 出口
目次
第1話のおさらい
孤児院で大勢の子供達や優しいママと幸せな日々を送っていたエマ。
しかし、里親の元へ出発したコニーが忘れて行った大切なぬいぐるみ”リトルバーニー”を届ける為に、規則で禁じられてきた”外”と通じている門へと向かったエマとノーマンは、そこで生き絶えたコニーを目撃する。
コニーの死体を容器に入れて収穫だとする異形の怪物、食人鬼。
そして、コニーを里親の元に送る為に外に出ていたママは、食人鬼の忠実な配下であることを知ったエマとノーマンは、GFハウスが自分たちを家畜として生育するための施設であることを悟り、子供達全員で脱出することを誓うのだった。
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第2話 出口
普段通りに
自分たちが食用人間として育てられているという、ハウスの真実を知ってしまったエマは悪夢にうなされるようになっていた。
朝、食堂に向買ったエマはいつも通りの微笑で子供達に優しく接しているママを見つめる。
エマは、昨夜ノーマンと一緒に見た光景が夢だったかのように錯覚するのだった。
食堂にいつもと変わらない様子でノーマンがやってくる。
それを見て、エマもまた明るく挨拶を返す。
昨夜、二人は門からハウスへと戻る道すがら、明日以降も普段通りに振る舞おうと話し合っていた。
リトルバーニーを車の下に忘れていったことに気づくが、それが誰の仕業かまではわからないとノーマンは冷静に呟く。
「行ったこと 知ったこと 逃げること 何一つこちらから明かすことはない」
エマとノーマンは、いつも通りに朝食を済ませ、テストもこなす。
二人は真実に気づいていることを顔に出さず、誰にも言うことなく、ハウスから逃げ出す方法を自分たちで見つけるよう努めるのだった。
日常に潜む意図
自由時間。
外で子供たちが遊んでいる輪から外れるエマとノーマン。
エマはノーマンに、ハウスの格子窓が内側からは届かない位置で固定してあり、さらにネジ穴が潰されていることに今朝初めて気づいたと報告する。
そしてエマは、あれは檻だ、と結論づける。
自分たちが飼育されている食用人間であると言う前提で日常風景を眺め、そこにさりげなく潜む様々な意図に次々と気づいていくエマたち。
食事は、好き嫌いなく食べられる”餌”。
全員が着用している白い服も汚れが目立ち、衛星管理に最適。
生育及び健康状態を保つための規則正しい生活。
エマとノーマンは、商品である子供達の品質保持の為だと喝破していた。
しかし、テストに関しては、むしろ子供達に教育を授けることは管理者たちにとってはリスクがあるはずではと疑問を感じる二人。
(また6歳)
(此の所並の出荷が…)
(そろそろこのフルスコア3匹…)
門で聞いた鬼が資料を読み上げていたその内容から、肉の等級の決定要因に少なくとも年齢、テストの成績が関わっていることを推測する二人。
同時に、テストで良い点を取っても肉の質には繋がらないのでは、疑問を持つ。
思考する二人
ノーマンは、自分たちはハウス、あるいは世界を知っていたつもりで何も知らなかったと口にする。
21世紀半ばにもかかわらずテレビ、ラジオは無し。身の回りのもの全ては時代錯誤の作り物。
自分たちが生きている世界は、あくまで鬼が用意した箱庭に過ぎない。
(本当の世界は 「外」は未知!!)
急いで「外」を知り、逃げなくてはコニーと同じ運命を辿る。
二人はまず、ママのことよりも情報の整理をすることに。
直近で犠牲になったコニー、その前の出所者はハオ、その前はセディ。
周期からして次の出荷が最短で2ヶ月後だと推測したノーマンは、それまでに子供達全員で脱出する方法を考案する必要があるとエマに告げる。
脱走時の出口は門にするのか、それとも森か。
門は出荷時以外は閉まっているので森からだと指摘するエマ。
それに開く際には鬼がいる、と同意するノーマン。
脱走の時間帯はママがハウスから離れる「出荷の夜」、もしくは子供達が外で自由に動ける「昼間の遊び時間」か。
出荷の夜は誰かが犠牲になるのと、年少者が起きていられるかわからないからダメだとノーマンが指摘。
結論として、昼間に森を抜けて外へ出る方針を固める。
探索
今、考えた脱走の方針が正しいか、実行可能か否かは森の先がどうなっているかによる、と考えた二人は柵の向こうの探索を開始する。
前を走るノーマンが、ママ…、と呟くのを聞いたエマは、ノーマンの手が震えていたことに気づく。
自分たちのたった一人の母親だったママが、まさか鬼と結託して食用として子供と接していた事実を知って、平気でいられるはずがない、とノーマンの気持ちを慮るエマ。
ノーマンは、昨日、あれだけママを慕っていたコニーを出荷して尚、ママの表情がいつもと何一つ変わらないことに戦慄を覚えていた。
ママが、笑顔の裏で幾人もの子供達を出荷してきた、鬼の冷酷な配下だと理解したエマとノーマン。
しかし、それならば何故自分たちに優しくしてくれたのか。
二人は森の切れ間に現れた、高い塀を前にしていた。
エマは近くの木に登り、塀の向こうを見通そうとするが、塀に邪魔されて確認ができない。
しかし、塀の幅が2〜3メートルあることをノーマンに報告する。
見張りはいない。
そして、塀に耳をつけて、ノーマンが周囲はとても静かであることを確認する。
ノーマンに、どう思う? と問われたエマは塀に触れ、この塀は普通では登れないが、自分やノーマンならロープ一本で上れると自信を見せる。
うん、と笑顔でうなづくノーマン。
問題はどうやって子供達全員を連れ出すか、と思考を回転させる。
見張りはママ一人、周囲に鬼の気配はしない。
食用人間の農園だが、表向きはあくまで孤児院であり、子供達が気付くことを想定していないとすれば、逃亡を阻む前提で作られていないのではないか。
そうなると、現状では自分たちの逃亡を明らかに阻むものは堅くて高い塀、ただ一つ。
二人は、ロープがあれば超えられる=全員逃亡できる公算が成り立つことに表情を明るくする。
自由時間の終わりを察知し、二人は急いでハウスへと戻るのだった。
宣戦布告
ママが、子供達の集まったハウスの前でベルを鳴らしている。
メガネの女の子が二人足りないことに気づく。
いないのはナイラと、とメガネの女の子がママに報告していると、一人の男の子が走ってくる。
「ママーーーッ」
まだ戻ってきていない二人の内の一人、マルクが、森でナイラと逸れてしまい、探したけど見つからなかった、とママに涙ながらに訴える。
不安そうな表情の子供達。
日が没していく。
ママは懐中時計を取り出しそれを確認した後、マルクに、大丈夫よ、と笑いかける。
「みんなここから動かないで いいわね?」
どこかへ歩いていくのを見守る子供達。
森に消えたかと思うと、ママはすぐに子供達の前に姿を現すのだった。
ママはその腕に、眠っている少女ナイラを抱えている。
「疲れて眠っちゃったのね ほらケガ一つないわ」
子供達の間に一気に安堵が広がる。
しかしその光景を前に、ノーマンは戦慄していた。
「早すぎる…」
まるでどこにいるのかがあらかじめわかっているかのような行動を見て、エマは、ママが昔から子供達を見つけるのがうまかったことを思い出す。
そして、ナイラを探しにいく直前にママが懐中時計を見ていたが、あれは時計ではなく発信器であり、自分たちの体に埋められているのかもしれないと気づくのだった。
だとすると、脱走の決行の際はおろか、計画がバレた時点で終わりだとエマは恐怖する。
懐中時計式の発信器を使う様を、ママは自分たちにわざと見せた。
門でエマたちが置き去りにしたリトルバーニーが誰かの手によって持ち込まれたことにきちんと気づいている。
エマとノーマンは、これがママの、鬼を目撃したであろう子供に対する牽制であり、それが誰であろうと逃さないという宣戦布告だと理解するのだった。
感想
認識の急転換を迫られるエマとノーマン
自分たちが食用に育てられている家畜であるという自覚は、エマとノーマンにパラダイムの転換を強いた。
これまでは、孤児である自分たちを守り育ててくれていたハウスは、実は檻でしかなかった。
美味しい食事は餌であり、白い服も規則正しい生活も全てが品質管理の為。
子供はただご飯と清潔な環境があればいいわけではない。
保護者から愛情を受け、精神的な安定を得た状態が、子供がより健全に成長するためには有用だ。
つまり、自分たちに向けられていたママの愛情も、あくまで子供達の健全な成長を阻害しないためのママの演技と言えるだろう。
日常全てが食用人間としての生育を促すためという意図の元用意されていた。
ハウスの中で、エマとノーマンだけがハウスの真実に目覚めた。
(実際はもう一人、子供の中に真実を知っている人間がいるのだが…)
そして二人は、何も知らない幼い子供達も含めた全員でこの環境から逃げるという挑戦を開始する。
やるべきことは山積み
より成功確率の高い脱出計画を立てるために、まずはハウスや、これまで規則で禁じられてきた森の柵の外、あるいは門など、敷地内におけるにあらゆる事ついて正しい知識を得なくてはならない。
そうして、森の柵の外側には塀があるだけだと知ったエマたちは、これなら脱走が可能かもしれないと希望を見出す。
しかしその矢先にママによる、発信器の存在をあからさまなに自分たちに知らせるような宣戦布告とも受け取れる行動により気勢を削がれるエマとノーマン。
やはりリトルバーニーを門に置いてきてしまったことは失敗だった。
それが無ければ、幾分かママの子供達が脱走する事への警戒を遅らせることが出来たかもしれない。
ママにバレずに脱走計画を進めていきたいエマたちと、コニーの出荷を目撃し、脱走を企てるかもしれない子供をあぶり出したいママとのがっぷり四つの知恵勝負が始まった。
先の展開を知っているだけに、第1話、そして続く第2話の巧さを再確認した思いだ。
ここからさらに、1話毎にテンションは高まっていく。
多分、この文章を読んでいる中に幾らかはいるであろう、約束のネバーランドを漫画で読んだことがない人は、絶対に漫画で読むべきだ。
当サイトの下手な文章で概略を知って満足とか勿体無さ過ぎる。
あくまで話の流れの確認程度だと思って、ぜひ原作を手にとって欲しい。
以上、約束のネバーランド第2話のネタバレを含む感想と考察でした。
第3話に続きます。
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