第18話 帰る処
江崎連理に食って掛かる柳女
「柳女さんですね 先ほどお電話頂いた」
江崎連理は、訪ねて来た柳女を玄関で出迎える。
「加藤さんの――」
「どういうつもりですか」
開口一番、喧嘩腰で江崎に食って掛かる柳女。
江崎は取り乱すことなく、柳女に、何がでしょう、と問いかける。
柳女は、カウンセラーは心を回復させるのではないのか、と言い、江崎を厳しい視線で見据える。
「臣はここに通うようになってどんどんダメになってく!」
一気に言いたいことを吐き出す柳女。
柳女の言葉をじっと聞いていた江崎は、加藤の精神状態は把握している、とぽつりと言って、柳女を部屋の奥に招き入れる。
カウンセリング用の部屋で、江崎と柳女は向かい合って椅子に腰かけている。
これまでの依存を一気に断ち切ったのだから、加藤が不安定になるのは当然だと落ち着いた口調で説明する江崎。
あなたが断ち切らせた、と柳女は即座に言い放つ。
「違います」
江崎は即座に否定する。
加藤本人が自らの意志で依存を断ち切ったが、それでも安定できるようになりたいと言う加藤の希望に沿って治療しているのだと釈明する。
柳女は暫く黙ったまま視線を落とし、見てられない、とぽつりとこぼす。
「私は何も出来ない」
江崎は、そんなことはない、と柳女の言葉を否定する。
そして、不安定な人間に共鳴して一緒に落ち込むのも当人にとっては負担になるので、柳女は気持ちを確かに持って、加藤のそばにいるだけで良い、と柳女を落ち着かせようとする。
「待っていてあげてください 帰る処として」
それだけで大きな支えになる、と言い、江崎は、柳女自身は大丈夫なのかと問いかける。
柳女は予想外の質問に、え? と問い返す。
江崎は、加藤と柳女は共依存関係にあると指摘し、カウンセリングはいつでも請け負う、と続ける。
少しの沈黙の後、柳女は、自分には必要ないと返す。
江崎は、カウンセラーの相性もあるから自分でなくても、と続けるが、柳女は一言、必要ありません、と断る。
江崎はそれ以上はカウンセリングを勧める事無く、そうですか、と一言。
田中が見た加藤の顔
加藤と新人の田中が花を添えられたトイレに向かって手を合わせている。
マスクを着けて作業を開始した加藤の背中を田中は、じっと見つめると、あの、と声をかける。
柳女と喧嘩をしたのかと問いかける田中に、加藤は、いや? と短く否定し、田中に対して彼女の有無を問いかける。
いると答えた田中に対して、結婚は? と続けて問う。
婚約はしていると答えた田中は、相手が子供が産める内にと思ってますが、と続ける。
「お互い子供は好きなので」
田中の言葉の直後に加藤は嘔吐き、目の前の便器に向かって吐き出す。
大丈夫ですか、と駆け寄る田中に振り向き、大丈夫、と答える加藤。
加藤は、相手がいるなら早く結婚した方がいいと田中に忠告し、子供、家族は良いものだから、と続ける。
田中は、お互いに向き合っている加藤の表情の変化に戸惑う。
「だ…大丈夫ですか?」
柳女、過去を春野に告白する
柳女は加藤と現場でセックスをするまでの人生を春野に語った。
春野は静かに、なるほど、と相槌を打ち、話してくれてありがとう、と感謝を伝える。
続けて、あれからまだ加藤と会話が出来ていないのかと問いかける。
春野の問いかけに、はい、と肯定した柳女は、加藤はもう自分と現場に漂う死臭でも男性機能が沈黙したままではないかと心配そうに答える。
そうなのか? と相槌を打つのが精一杯の春野。
そんな気がする、と俯いたまま答える柳女は、どうしたらいいのかわからず途方に暮れる。
春野は、そんな柳女に反応せず、江崎が帰る処として待ってろと言ったのかと問いかけ、俺もそう思うと続ける。
お前らなら大丈夫だ、と空を見上げる春野。
加藤と柳女なら新しい形で絆が蘇る、加藤がカウンセリングを受けに行ったのも柳女のお陰だと柳女を励ます。
大丈夫、と根拠もなく言う春野を見ながら、無責任に、と呟くように言う柳女。
「でも…そうだといいな…」
春野は、柳女から聞いた江崎の印象を聞くまでは江崎は変人だと思って柳女を心配していたと告白する。
しかし、きちんと心を理解している人だと安心した様子の春野。
だから大丈夫、という春野に対して柳女は、はい、と返事をする。
柳女と加藤の電話
日が落ちて、加藤は住宅街を一人歩いていた。
柳女は加藤のスマホに電話するが、加藤は電話に出ない。
会話も無く、関係がギクシャクしているとはいえ、連絡なしに帰宅しないことを不審に思う柳女。
待つべきなのか、動くべきなのかと悩み始めた柳女のスマホが鳴る。
電話の相手は加藤だった。
どこにいるのかと問う柳女に対して、前の家、と短く答える加藤。
一軒家に入った加藤の目に、かつて妻と二人の子供に囲まれて幸せだった頃の幻が一瞬だけ映る。
どうやって家に入ったのかと柳女に問われ、加藤は、手放してなかった、と告白する。
加藤はほこりの積もったソファを触りながら、咳き込む。
「ごめんな…最低だよな」
受話器越しの加藤を思う柳女は、悪いことなんて何もない、と加藤を庇う発言をする。
柳女に礼を言い、柳女に隠してることはこれだけだった、と加藤。
柳女は加藤に引っ張られて気分が落ち込むのを避けるように胸を張り、今日は帰ってくるのかと訊ねる。
ああ、と答えた加藤は続けて柳女に先日の冷たく当たってしまった態度を詫びる。
大丈夫だから、と答える柳女。
加藤は自分の起こした事故で亡くした家族の美夏、真帆、歩に会いたかったのだと柳女に心の内を明かす。
電話越しに泣いている加藤を思い、ただ、うん、静かに受け止める柳女。
切るよ、という加藤に、柳女は戸惑いながらも、すぐに料理を作り始めるよ、と暗に加藤に早く帰ってくるようにという意味を言外に含ませて伝える。
「ああ ありがとう――」
両目から一筋流れる涙を拭うこともせず、加藤は電話を切る。
加藤の家の玄関のドアに何者かの手がかかり、ドアが開く。
事件発生
(しっかりしないと…)
五十嵐は同僚の刑事の運転する助手席で先日、春野の前で演じた失態を反芻していた。
春野に身を以って止めてもらわなければ電車に轢かれていたことを思い出す。
そもそも、それ以前にからエンド連続殺人事件の被害者関係者の前で泣いたり、今回、晶に似た男を追って走行中の電車に向かって行ったりと、五十嵐は晶の死後何をやっているのかと反省する。
しっかりしないと、と突然独り言を言い出した五十嵐に、運転席の刑事は自分の事かと驚く。
こっちのこと、と慌てて否定する五十嵐。
その時、本部から無線が入る。
無線に出ると、ENDの文字に並べられた死体が発見された、という情報を伝えられる。
驚く二人。
無線は続けて二人に現場へ行くように命じ、その場所を伝え始める。
感想
これは……被害者は加藤かな。
電話を切った後に加藤の家のドアを開けた人物が犯行を行ったのだろう。
ミスリードの可能性もあるけど、じゃあ誰が加藤の家を訪ねるのか? という話。
考えられるのは管理人の存在だが、それはまず無いだろう。
家を加藤の代わりに管理してくれている人がいるのだったらソファにほこりが積もるだろうか?
これはもう多分、犯人だろう。
あと、メタな視点から言えば、加藤が電話を切る時の柳女とのやりとりがフラグ以外の何物でもない(笑)。
犯人は橘に関係する人間へとターゲットを定め始めたのか?
となると春野や柳女も危ない?
以上ルードエンド第18話のネタバレを含む感想と考察でした。
第19話の詳細はこちらをクリックしてくださいね。
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