第49話 天使
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花代子の軽はずみな行動
室で原稿用紙を読んでいる花代子。
「気付いたら響ちゃんに書いてもらった小説、また丸々読んじゃった。」
「ちょっとワンシーン読み返すだけのつもりだったのに。」
響の小説が一番読んでる小説家かもとつぶやき、ベッドに寝転がる花代子。
(でも、プロの人のほうが面白いハズだよね。友達だから、面白く感じるのかな…)
新人賞に出したら最終選考に残るのかな、考えた花代子。
花代子の元にNF文庫の月島初子から電話が入る。
花代子の投稿した響の小説『漆黒のヴァンパイアと眠る月』が新人賞大賞を受賞したと言われ、放心状態の花代子。
後輩と響に関するやりとりで楽しむリカ
学校。
男子生徒が二人、部活動の話題で会話している。
全国を目指せるのはテニス部だろう、とテニス部に入部すると言う男子生徒。
もう一人の男子生徒が文科系で3年に凄い人がいるとか、と話題を持ち出す。
文化部ですごいのはナントカ甲子園とかそういうのか? と問いかける男子生徒。
文芸部の部室。
「次回作書いてんスか!?」
「つってもまだ、編集さんとプロット詰めてる段階だけどね。」
1年生の後輩二人に囲まれたリカが答える。
「プロットってなんスか!?」
「構成。」
「すごーい、かっこいー!」
リカが中空を見ながら言う。
「高校生のうちにもう一冊、本、出したいんだよね。集大成! みたいなの。」
「フツーに本出すとか言ってっし!」
「言ってることがもう高校生じゃないよね! 世界違いスギんだけど!」
じゃあ次は芥川賞、と1年がリカに勢いよく問いかける。
リカは何も言わず、笑顔を返す。
後輩たちは、四季降る塔も芥川クラスに面白かった、響よりリカ派ですから、と言う。
本当にー? とリカが問いかけると、ホントにって聞かれるとキツイ、気持ちの問題、と笑う後輩たち。
「まあ次は賞とか響ちゃんとか考えずに書くよ。」
後輩が、響を身近な知ってる人間のように言うリカに驚く。
「ひょっとしてリカちゃん、響の正体知ってンスか?」
「んー? 響ちゃんは昨日会ったじゃん。」
「そっちじゃなくて!」
「じゃあ知んない。」
「えー、リカちゃんクラスでも知んないの?」
「だからさーいないんだって! CG!」
響、飛ぶ
屋上へ向かう階段を登っていくサキ。
登り切って、入り口の戸を開ける。
屋上では、立って文庫本を読む響の姿があった。
ブレザーに左手を通さず、左肩にかけた状態で、風が響の制服を揺らしている。
半年前に読んだ『お伽の庭』に感動し、どんな人ならこんな小説が書けるのかと思っていたサキ。
目の前にいる、自分と大して年の違わない響が、15歳で芥川賞・直木賞同時受賞の天才だと心の中で改めて確認する。
「話って?」
サキを見ながら問いかける響。
サキは少しの間ぼうっとして、本当に、『お伽の庭』の「響」なんですか、と問いかける。
響は黙ったまま人差し指を口元で立ててみせる。
(現実感がない。)
(私は昨日高校生になって、文芸部に入って、今日、目の前に、神様みたいな人がいる。)
サキは、どうして周りに「響」であることを隠すのか問う。
大げさに騒がれそうで面倒だと即答する響。
「だから咲希も周りに言わないでね。」
(「響」が、私の名前を…)
呆然としているサキ。
話はそれだけ? と響がサキに問いかける。
サキは鞄から紙の束を出す。
「私の小説…読んでほしい……」
小説書くんだ、読みたい、と当然のように答える響。
(読みたい…)
響に小説を渡すサキ。
(そもそも、この人は本当に「響」なのかな。昨日は、ふとそう感じたけど。)
(だって、「響」っていったら神様みたいな人で。それこそ、空も飛べるような…)
急に強い風が吹き、サキが響に渡そうとしていた原稿の一枚が飛んでいく。
あ…、と風に踊る1枚の原稿用紙を見つめているサキ。
響が原稿用紙に向けて駆け出し、屋上の柵を乗り越える。
それを呆然と見つめるサキ。
響は柵からジャンプして風に飛ばされていた1枚の原稿用紙を掴む。
落ちるギリギリの地点で着地して、サキの方を振り返る響。
「確かに預かった。」
軽く頬を染めるサキ。
花代子の告白
「……また飛び降りるつもりか?」
その様子を見ていたタカヤが問いかける。タカヤの隣には目を伏せた花代子がいる。
しないわよ、去年も別に飛び降りるつもりなかったし、と柵に登る響。
サキは、また? 去年も? と響の言葉に疑問を持つ。
「話が済んだなら代わってくれ。響、かよから話があるそうだ。」
花代子は目を伏せて、響と目を合わせようとしない。
何? と問いかける響。
響ちゃん…あのね…怒らないで聞いてほしいんだけど……、とまで口にしてタカヤに代弁を頼む花代子。
自分で謝らないと意味がない、と語気強くツッコむタカヤ。
何? 怒らないから、と言葉を促す響。
タカヤが観念して、目を閉じたまま話し始める。
「響が以前こいつにやった小説をこのアホが勝手に新人賞に投稿して、そしたら大賞取って、出版社だのアニメの会社だの絡んだ大事になってんだと。」
話を聞いて放心状態になるサキ。
「……は?」
反応を見るために、響の方を見る。
響の表情が硬直する。
「ほう…」
ごめんなさい、と何度も繰り返す花代子。
ナリサワファーム
花代子と電話をして、やっと連絡をくれた、と喜ぶ女性。
「あらためましてっ、私花代子ちゃんの担当になります、NF文庫の月島初子ですっ。」
一度直接会いたいと言う月島は、来てくれるの? 来てくれる方がありがたい、高校生なら来週土曜は、と提案する。
「え、今から…?」
さっきまでのハイテンションからいくらかトーンダウンする月島。
私は大丈夫だけど花代子ちゃんは大丈夫? と電話先の花代子に問うが、はっ、と思い出し、ちょうどいい、待ってると電話を切る。
「津久井さん、花代子ちゃん今からここに来るって!」
月島が、すぐそばで電話している津久井に報告する。
「ちょうど今、作家と連絡とれたから。」
津久井は電話口の相手に向けて言う。
「これから会ってオッケーもらうから、NF新人賞とのコラボ企画もう進めちゃって。」
「制作会社もう決めちゃおう、来年の枠でいける? オッケーそれで。」
電話を切った津久井。
「さあ、アニメ化だ。」
感想
花代子が何気なく投稿した響著作の小説があっけなく大賞を受賞してしまうという、花代子の浅はかさと響の天才性を描いた冒頭。
新たなトラブルを響に呼び込んだ花代子にイライラする人も少なくないのではないか。
自分もその一人だったりする(笑)。物語を転がしていくうえで花代子のような存在は必要なのだろう。
多分、作者の柳本光晴先生も楽しんで描いているキャラではないかと予想する。
サキはどんな立ち位置になっていくのか。
文学を愛し、響に似た無鉄砲さを持っているサキは、果たして響の新たなライバルとなっていくのだろうか。
響に渡したサキの書いた小説の評価は?
気になることばかりだ。
花代子が響に勝手に小説を投稿したことを告白した時の響の表情はかなり新鮮だと思う。
いつも冷静な響にこんな顔をさせられるのは作中でも花代子くらいだろう。
響の一番の天敵は花代子なのかもしれない。
月島と津久井という新キャラが出てきた。
月島はともかく、津久井は海千山千の業界人であり、ビジネスマンといった風情の男。
ある程度時間を経た今もなお日本中の話題をかっさらっている響が津久井と接触することでバレてしまったら響の望む平穏な生活が一気に崩れてしまう。
果たして響は自分の日常を守り切れるのか。
以上、響 小説家になる方法 第49話のネタバレ感想でした。
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