第40話 ディスティニー
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動物園を楽しむ文芸部部員たち
ガラスの展示スペースの前でパンダを見ている文芸部部員たち。
「全然動かない」と不満をぽつりと漏らす響に、「そんなもんだ」とフォローする涼太郎。
パンダについて説明されている貼り紙からパンダの鳴き声が「メェー」であることを知った響は背を向けて座っているパンダに向かって鳴いて呼びかける。
無反応のパンダに何度も鳴くが反応が無いことに業を煮やした響は「おい。」と凄む。
素早く振り向くパンダ。
周りでパンダを見ていたお客たちがわっと盛り上がる。
響の声に応えたみたい、と花代子が喜ぶ。
電波でも出してんのか、と内心思いながら響を見るタカヤ。
響たちとは少し離れたところにいる花井とリカ。
自分たち文芸部の部員が来ることを花井に伝えていなかったのか、と響きに呆れるリカ。
気負わないのはいいんだけど、と花井は両手を腰に当てて俯く。
編集長を始めとしたお偉いさん一同が待機していると頭を抱える花井。
すごいね、というリカに、花井は、リカがノミネートされた時はそこそこでいいから緊張してね、と告げる。
うん、と素直に返事をするリカ。
花井は、響は自分が時代の寵児になろうとしていることを分かっているのか、と呟く。
動物園を堪能する一同。
ふれあいコーナーに向かう響たち。
響がアルパカを見て驚く。
ふれあい体験終了の看板が立てられている。
残念だ、という表情の響。
「可愛いな、触りたいな。」
柵をよじ登って中に入っちゃダメだ、と諫める花井に響は何かを訴えかけるような表情を向ける。
「そんな顔してもダメ! そこの看板にも書いてあるでしょ。」
涼太郎が「いや…」と割り込む。
「響のその顔は、やっちゃダメなの? じゃなくて、やるわけないでしょって顔ですよ。」
ルールを破るからやるだろう、と言う花井。
「響はルールは破っても、マナーは守ります。」
涼太郎が真剣な表情で答える。
「動物に触りたいからって、柵をよじ登るようなマネはしませんよ。」
花井は少し間を考え、たしかに、と答え、ごめんね、と響きに向かって謝る。
響は何も答えない。
花代子が、うさぎを触れるよ、と呼ぶ声に響が反応して走っていく。
響の自由な行動に焦る花井
時間経過し、動物園閉園のアナウンスが響く。
私たちも出よう、というリカに、パンダのぬいぐるみを持った花代子が同意する。
腕時計を見る花井。選考会まで30分だと知る。
(ここからは私の時間だ。)
あれ、リカが辺りを見回す。
「響ちゃんは?」
一同の中に響の姿が見えない。
え、と辺りを見回す花井。
大丈夫だろ、と暢気な花代子とリカとは対照的に、花井は次第に焦り始める。
スマホで響に電話するも出ない。
捜して来る、と言い残し、花井は「ひびきー」と駆け出す。
花井の背中を見ながら涼太郎が暢気に「忙しい人ですね。」と呟く。
捜しに行かなくていいの? と問うリカに、どこにいるかは大体わかる、と涼太郎。
「たぶん最後のアルパカ触りに行ったんでしょ。すぐ戻りますよ。」
涼太郎の言葉に、リカは、え、と反応する。
「柵登るとかみっともないことしないんじゃないの?」
涼太郎は、多分みっともなくない方法で、と答える。
アルパカの柵の鉄格子が開いている。
響はアルパカの首に抱きついて、へへー、と満足げな声を上げる。
ひびきー、どこー、という花井の声が聴こえてギクとなった響はアルパカを鉄格子の内側に誘導する。
「あっ!」
花井が響を発見した時には響は鉄格子を閉じていた。
何やってんの、と強い剣幕で響に迫る花井に響は、柵は登ってない、と答える。
響の首に手を回した花井が文芸部部員たちの元に戻る。
響がどこにいたのか問うリカに花井は、アルパカに挨拶してた、と答える。
花代子が涼太郎の言う通りだったと感心する。
選考会も始まるし、響と二人落ち着けるところに、と時計を見る花井。
「それじゃみんな今日はそろそろ…」
花井の声に被せるように、リカが、これからメインイベント、と文芸部部員たちに言う。
「ディスティニーランドに行くよー!」
リカが笑顔で右腕を宙に突き出す。
笑顔の涼太郎と花代子。仏頂面のタカヤ。
花井は響と一緒にその光景を見つめている。
一瞬言葉を失って、「アンタも?」と響に問いかける花井。
「ふみもね。入場料お願いします。」
響はさも当然のように答える。
花井は響に近づき口元に手のひらを立てて「今日なんのために来たか忘れちゃった?」と問いかける。
「だから、もし賞とったらそっち行くし、落ちたらみんなでナイトパレードっていうの見るの。」
花井と同じく手のひらを口元に立て答える響。
盛り上がる文芸部部員たち。
何線で行けばいいの? というリカの問いに観念したように「……京葉線…」と答える花井。
芥川賞直木賞決定
築地の料亭新喜楽。
店の周りをマスコミが取り囲んでいる。
選考会が終わったあとすぐに帝国ホテルで記者会見があるため、近くで知らせを待つ作家たち。
ファミレスで向かい合って座っている女性が二人。
少女趣味な服を着ている、というショートカットの女性の問いに、ハナが今日のために19800円で買ってくれた、と答えるロングヘアーの女性。
超高級品じゃん、と返すショートカットの女性。
しかし他が良過ぎるから期待しない方がいい、幸はダントツで大穴だと続ける。
「ひどい! 昨日前祝いしてくれたじゃん!」
「今日になったら祝えないからね。」
喫茶店でテーブルを挟んで無言で向かい合う男二人。
ジャケットを着た男がスマホを見る。
「……二時間経ったか。長引いてんな。」
受賞の是非に関わらず連絡が来るけど、と言うとスマホが鳴る。
帝国ホテルの受賞会見会場にはマスコミ関係者で席がほぼ埋まっている。
壇上のホワイトボードに向かっていくスタッフたち。
手には紙を持っている。
ホワイトボードに向かってカメラのフラッシュが浴びせられる。
スタッフが芥川賞、直木賞それぞれの受賞作品名を貼り出す位置に紙を貼る。
芥川賞には響の「お伽の庭」と豊増幸の「屍と花」。
直木賞には響の「お伽の庭」。
ディスティニーランド。
スマホを耳に当てて呆然としている花井。
響は夜空にライトアップされた西洋式の城を模した建物の前に静かに佇んでいる。
感想
響が歴史を変えた瞬間。
緊張して待っていた他の候補者たちをよそに、文芸部部員たちと一緒にテーマパークを楽しんでいた響。
あまりにも他の候補者たちとは違い過ぎる。
全く気負っていない響に芥川賞直木賞ダブル受賞という名誉が与えられ、その飛び抜けた才能が社会的に認められたんだなぁ。
新人賞に「お伽の庭」を投稿して以来、新人賞受賞など、あまりにもとんとん拍子に自分の状況が変わったわけだけど、響自身はほとんど何も変わらなかった。
変わったとしたら、これまで涼太郎以外の同年代の友達がいなかったにも拘わらず、文芸部の部員たちと仲良くなったことくらいか。
客観的に見たら新人賞や芥川直木ダブル受賞などの結果の方が人生において大きな変化だと思うが、まだ学生である響にとっては友達が出来たことの方が重要なんだろうなと感じた。
でなければ、文芸部部員全員にわざわざ声をかけて、動物園やディスティニーランドに連れてきたりしないだろう。
文芸部部員たちは、もう大切な仲間なんだろうな。涼太郎以外の友達が出来て良かった。
しかし、取材NGを貫いてきた響は、果たして記者会見をどう乗り切るのか。
新人賞の受賞パーティーでは無礼なことをしてきた田中を、その場に集まった作家などの参加者を一顧だにせずパイプ椅子で後頭部を痛打したという実績があるので、心配と、それと同じくらい痛快な展開を望みたい。
楽しみ。
以上、響 小説家になる方法 第40話 ディスティニーのネタバレ感想と考察でした。
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