第38話 覚悟
前回、37話の詳細は以下をクリックしてくださいね。
新人賞受賞後の山本
勁草新人賞を獲得した山本に祝福の言葉をかけるスーツの男。
小説だけでは生活できないから今やっている仕事はやめてはいけない。
受賞作『オリヴィエに花束』の単行本の手直しをしてほしい。
男の注文を黙って聞く山本。
パーテーションで区切られた空間にいる二人。
スーツの男は物語の構成に注文をつけていく。
「本を出す以上可能な限りクオリティーを上げてほしいんで、よろしくお願いします。」
打ち合わせをする二人。時間経過して、そろそろ会場に行こうと男が山本を誘う。
「今日が、小説家山本春平の誕生日だ。」
フラッシュの光が降り注ぐ壇上で花束を抱く山本。
編集者の北村へ手紙の中で口下手を謝る山本。
工事現場で働く山本は上司のお疲れ、という挨拶に返事をすることすらできない。
返事をしろ、と蹴りを食らっても黙っている山本。
小説でメシが食えると本気で思っているのか、と毒づく上司。
(今日が、小説家山本春平の誕生日だ。)
山本は、北村がかけてくれた言葉を胸に小説で人間関係の失態を返すと手紙の中で決意する。
続けて、何度でも小説の直しをやると伝える山本。
北村から山本に電話がかかってくる。
作業着姿で電話に出る山本に伝えられたのは『オリヴィエに花束』が芥川賞にノミネートされたという朗報だった。
北村は、電話先で信じられないような表情の山本に、今は芥川をとって一人前と言う風潮がある、賞をとれれば仕事も小説一本に絞れる、と伝える。
近いようで遠い芥川賞
芥川賞は伊藤忠司が受賞。
居酒屋で山本と一緒に待っている北村の元に電話で伝えられる。
芥川賞候補4回の常連だったから、ついに、か、とサバサバした様子の北村。
無表情なりに落ち込む山本を、今日は飲もう、と北村が励ます。
再び山本から北村へのメール。
芥川賞がとれなくて情けない。
しかし24歳が受賞しては芥川賞の沽券にかかわるので、今回は最終候補に残っただけで良し。
芥川賞をとって一人前というなら次こそ必ずとります、とメールで北村に伝える山本。
喫茶店で向かい合って座っている山本と北村。
「丹波さんか……」
芥川賞ノミネート3回目でも芥川賞を取れない山本。
北村は、審査員にもよるが、もうちょっと、あと一歩が足りない、と山本に告げる。
「芥川賞、惜しかったな。」
工事現場の上司がアスファルトに座っている山本に労いの声をかける。
山本は、驚きを浮かべた表情で上司を見上げる。
一応気にしてる、と言う上司。
「小説のことは全然知らねーけど、あの賞とったら小説でメシ食えるくれーすげーんだろ。」
「さっさととって俺をギャフンと言わせてくれ。」
黙って見上げている山本。驚いた表情は消えない。
「だからそんな意外かよ。別に俺はおめーのこと敵とか思ってねーよ。」
「お前が俺らをどう思ってるか知らねーけど。」
上司が缶コーヒーを山本に渡す。
山本は受けとって缶コーヒーを見つめる。
上司にたかろうとする部下の頭を上司がはたく。
山本を見て、「残念会すっか。」と山本に呼びかける。
居酒屋で仕事仲間と飲んでいる山本。
迷走の末、覚悟に至る山本
山本から北村へのメール。
自分に足りない「あと一歩」がみつかった。
人は一人では生きていないという世界の真理に29歳で気づいた。
(なんか開眼しちゃってんな。)
メールを読んだ北村が顎に手を当てて考える。
(人間煮詰まると手の届くトコに簡単な正解作っちまう。)
(さて、正念場だな。)
それから3年、山本は芥川賞のノミネートされることすらなくなる。
上司が山本に小説の調子を聞くが山本は答えない。
上手くいかない時もある、と山本を励まし、キャバクラ奢るからたまには付き合えと声をかける。
無邪気に喜ぶ部下たちの中、山本は俯いている。
北村への手紙。
バイトを辞めた。
色々試してきたが、初期衝動を形にすべく原点に立ち返る。
芥川賞を受賞したのは猪又コウジ。
テレビではミュージシャンの猪又が獲ったと騒いでいる。
囲み取材のインタビューで猪又が答えている。
「僕なんかより受賞に相応しい作家さんいっぱいいると思うんですけど。いや例えば誰って言われると困るけど。」
山本は雨の中、俯きながらとぼとぼと歩いている。
どうしろってんだよ、と呟きながら踏切にを越えていく。
時が経ち、テレビ番組で鬼島が一緒に出演している女性と会話している。
前回の芥川賞はミュージシャンの猪又が獲ったがそれより大きな話題を呼びそう、という」女性に、50年ぶりの芥川直木ダブルノミネートだから、と答える鬼島。
ノミネート作の中に山本の名前がある。
初詣でごった返す神社。山本は賽銭箱の前で目を閉じて手を合わせる。
目を開ける。
(今回芥川とれなかったら、死のう。)
境内を去る山本と入れ違いに、響たち文芸部部員がやって来て鈴をならす。
揃って手を合わせて目を閉じる。
他の部員がお参りを終えてもずっと手を合わせ続けている花代子にタカヤが注意する。
リカの、何をお願いした? という疑問に響は「世界平和」と答える。
「特に今、身近で神様に手を借りなきゃいけないことってないから。」
(2週間後には芥川賞・直木賞の発表なんだけど。)
リカは呆れた様子で響を見ている。
(まあこの子には関係ないか。)
バーゲン行くよと笑顔のリカ。タコを上げたいと響。
彼女たちの前を独り山本が歩いている。
感想
山本の新人賞受賞後から4度の芥川賞ノミネートの歴史。
20代前半で新人賞を獲るという、才能のある作家である山本がひたすら真摯に小説を書き続けても今一歩のところで芥川賞を逃す。
芥川賞直木賞のノミネートに何度も選出される作家はいるけど、山本の人生を見ているとそういう小説家がどんな気分なのか、どれほど過酷かということを思い知らされる。
3度目の正直を越え、4度目のチャンスを得た山本は、さすがにそこに響のような存在は想像しなかっただろう。
この執念の男山本と響が芥川賞で対決するわけだ。
芥川賞を獲れなかったら自殺するという山本。一体どういう顛末となるのか。
以上、響 小説家になる方法 第38話 覚悟のネタバレ感想と考察でした。
次回、39話の詳細は以下をクリックしてくださいね。
コメントを残す