夢で見たあの子のために最新第6話の感想(ネタバレ含む)と考察。一登を想うが故に、「火の男」追跡の軍資金稼ぎに走る千里。そして、その報いを受ける。

第6話

第5話のおさらい

回想。

幼少時の惠南。

父が主婦を殺害したとして警察に逮捕された。

それ以降、アパートにはひどい落書きをされ、母は惠南に「罪を犯したら大切な人も巻き込んで必ず罰が下る。」と言い残し、首吊り自殺を図る。
夢に見たあの子のために 第5話 惠南と母

孤児となった惠南はもみじ園に入園するが、入園の経緯を知っていた他の子供達から迫害を受けていた。

しかしその様子を静観していただけの千里は、ある日、子供達が惠南の本から破りとったボール状にページを丸めたものをバットで打つ遊びをしようと自分を誘う男の子と喧嘩し、取り戻したページを惠南に返す。

惠南は、自分とは全く違う境遇の千里が、自分を嫌っていると疑っていなかった。

自分の事が嫌いではないのかという惠南に、千里は親が人殺しだと知っていると言いながらも、「でもおまえはべつにわるくないだろ」と続ける。

惠南は顔を歪ませ、礼を言うのだった。

夢に見たあの子のために 第5話 惠南

回想終了。

惠南は中條青果店に野菜をとりに行くと、千里の祖父が、千里がまだ学校なのかと惠南に訊ねる。

まだ屋上で寝てるかもと答えた惠南に、昨夜は寝付けずにいたからと心配そうな祖父に、惠南は千里が授業中寝ていたと言い、メールで連絡しておくと自転車を走らせる。

千里は屋上で寝転がっていた。

何気なく、廃ビルの屋上で拾ったパスケースを眺めると、あったはずの若き日の母の写真が無くなっている。

祖父の仕業かと思案を巡らせている千里に板倉が話しかける。

板倉はこの間の礼だと封筒を渡し、その場を去る。

夢に見たあの子のために 第5話 板倉

封筒の中を確認した千里は、その中から自分と瀬島が写した写真を見つける。

「火の男」を探しに瀬島の案内で四つ木の工場に向かった日の写真を何故板倉が持っているのかという疑問と同時に千里にの脳裏に閃きが走る。

楼蘭の扉を開けた千里の前には、滅茶苦茶に荒らされた店内に転がる不良仲間の二人の姿があった。

板倉の仕業だと確信した千里は床に倒れている金髪坊主から誰にやられたのかを問う。

金髪坊主は、明らかに「本職」だと分かる風体の5~6人にやられたと言い、瀬島がさらわれたと答える。

逃げろという金髪坊主の忠告を聞かない千里に、金髪坊主は電話番号を書いたメモを渡す。

千里が電話をかけると、板倉の陽気な声が聴こえる。

最初からはめるつもりだったのかという千里に、気付いてくれた!? と余裕の板倉。

外に出て見ろという板倉の誘導に従い楼蘭の外に一歩足を踏み出す千里の後頭部を「本職」の一人が殴りつける。

夢に見たあの子のために 第5話 板倉

千里は脳裏に寺の景色を思い浮かべ、完全に気を失う。

「よし…運べ」

前回、第5話の詳細は以下をクリックしてくださいね。

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第6話

千里の回想

暴力を振るう父がいる家にいたくない時に、千里と一登は揃って近所でうち捨てられた廃車を「基地」と名付けてそこを居場所としていた。

 

「基地」でやることといえば家から持ってきた食パンを食べながら水筒の水を飲むこと。
しかし千里と一登はその行為を特別な事だと思っていた。

 

ある日、二人は廃車の屋根の上に立って、遥か遠くに見える送電鉄塔に興味を抱く。

 

いつかふたりであそこに行ってみよう、という一登の言葉に、千里は同じことを思っていた。

 

最も高い所へ行けるように「一登」。

最も遠くに行けるように「千里」。

 

自分たちの名前の由来を口にして、一登は千里に、ふたりならきっと行ける、と続ける。

 

当時5歳の千里と一登の内には「二人で一緒に遠くに行きたい」という強い思いがあったと振り返る千里。

 

「じゃあ きょう いこう」

 

千里の一言で二人は鉄塔に向けて歩き出す。

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一登と千里の絆

歩き出す前に思っていた、辿り着けないかもしれない、帰って来れないかもしれない、という考えは浮かぶ事無く、二人の足は鉄塔を目指す。

 

得意だった木登りをしながら方向を確認し、5歳の子供には過酷な道も何のその、鉄塔へと近づいていく二人。

 

パンを食べて休憩して、再び歩き始めた時、二人の視界に鉄塔の足場があった。

 

幼い二人は達成感に酔いしれる。
そして、二人が一緒なら何でも出来ると感じていた。

 

(一登と一緒なら怖いものなんかない)

 

「千里といっしょならこわいもんなしだ」
千里が思ったのとほぼ同時に一登が口にする言葉。

 

お互いに、二人一緒なら怖いものなし、と感じていた事を知り、千里は満足そうに笑う。

 

既に夕日が山に落ちており、二人は急いで帰路につく。

 

暗い山の中を行く二人。

 

「バラバラにならないように てをつなごう」

 

一登の提案で互いに手を繋ぎあい、真っ暗な森の切れ間に時折見える星を眺めながら歩いていく。
不思議と千里は少しも怖さを感じていなかった。

 

鉄塔に向かって歩いた時間より少し長く歩いた頃、二人はようやく家に辿り着く。

 

両親は一登と千里を探しに外に出ておらず、家にいた。
母は父の制裁を先延ばしにする為とはいえ、二人に風呂に入ることを勧める。

 

母の勧めに従い入った風呂から上がった二人を待っていたのは父の鉄拳だった。
二人は二発ずつ殴られ、夕飯抜きの扱いを受ける。

 

不遇な境遇にあって、千里は、自分たちが自らを不幸だと感じていなかったと述懐する。

 

二人は隣同士、布団の中に体を仰向けに横たえて互いの名前を呼びあう。

 

「ずっと いっしょだ」
互いの拳をぶつけあう。

 

ずっといっしょだと信じていたからどんな時も辛くはなかった。

 

しかし「火の男」により二人の仲は永遠に引き裂かれる……。

 

「…ずっと ずっと いっしょだとおもってたのに」
暗闇の中に立ち尽くす幼い千里。
「おれだけ いきのこっちゃった」

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「奪り返し屋」

事件以来、千里の目は淀む。
一登を奪った「火の男」を殺す事に決めた千里は先立つものとして金が必要だと感じていた。
「火の男」のてがかりを得た時に、すぐそこへ行けるくらいの潤沢な資金。

 

千里は中学に入ると千里は新聞配達や飲食店などをかけもちして金を稼いだ。

 

「火の男」への復讐という明確な目的がある千里にとって、労働は苦ではなかった。

 

しかしある日、高校生数人からカツアゲに遭い、月の給料を全て奪われるという経験が千里の考えに一石を投じる。

 

ボコボコにされた千里の脳裏にあったのは不良への憎しみよりも、新しい考えを吹き込んでくれた事に対する感謝だった。

 

(なんだ… ちまちま働かなくたって簡単な方法があるじゃねえか)
地に這いつくばった千里は、ボロボロの顔で笑みを浮かべる。

 

人殺しを捜す金は汚くていい。

 

思考を切り替えた千里は金を手っ取り早く稼ぐため、そして実際にカツアゲを行って自分が捕まるのを防ぐ為に、「奪り返し屋」を思いつく。

 

まず、近隣から募った不良仲間にターゲットから金を奪わせる。
そして千里がそれを取り返しに行くという芝居をし、依頼者に金を持って行ってその中から報酬を得る。

 

千里は常にターゲットを捜しては芝居を打ち続け、報酬を得ていた。

 

長く使えて、自分が捕まるリスクのない安全な方法を使い分ける事で、千里の預金額は一学生にしては不相応なまでに膨れ上がる。

 

芝居の為に時折不良仲間から殴られる事もあるが、その際に思い出す一登との視覚共有の記憶は、思い出す度に千里の内の復讐心を新たにする。

 

(一登…待ってろよ)

 

(このうす汚ねえ金こそが俺の武器だ)

 

(必ず「火の男」の所に辿り着いてみせるからな)
手元の一万円を前に千里は誓う。

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過酷な現実

水をかけられる。
千里の視界が徐々に回復していく。

 

板倉とその仲間であるヤクザたが千里の顔を覗き込んでいる。

 

千里はうつ伏せになり、背中に回された両手の親指同士を結束バンドで縛られている。

 

やあ、千里君、と板倉が声をかける。

 

「すっきり目覚めてくれたかな?」
板倉は千里の真正面でパイプ椅子に座っている。

 

どこかの工場らしき場所で千里は板倉を始めとしてヤクザに囲まれている。

 

千里は、すぐそばに瀬島の姿を発見する。
瀬島はパイプ椅子の背もたれに手を回され縛られた状態で力なく俯いている。

 

「早速だけど」
板倉は余裕たっぷりに千里に話しかける。
「話があるからさ 頭スッキリしてたら「おはよう」のあいさつ位 欲しいな」

 

「…板倉!」
千里はうつ伏せのまま、板倉を睨みつける。

 

「ぶ…」
瀬島が傍らのヤクザに殴りつけられる。

 

「……!」
その様子をみて絶句する千里。

 

「あいさつだろ?」
瀬島を殴りつけた男が問いかける。

 

俯いている瀬島の顔から血が滴り落ち、脚の間に血だまりを作る。

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観念する千里

「…………おはよう」
観念した様子で千里が板倉のなすがまま、挨拶をする。

 

瀬島の頭がヤクザのキックで跳ねあがる。
「おはようございますだろ?」
瀬島の顔を殴り、そしてたった今、思いっきり蹴り上げたヤクザが抑揚無く続ける。

 

まあまあ、と板倉が手を上げる。
「僕と中條君の仲だ 敬語はいいよ」
ヤクザに向けてきさくに笑ってみせる板倉。

 

(この野郎…!!)
千里は余裕たっぷりの板倉を睨む。

 

相撲取りのような体格の男に千里は襟を掴まれて強制的に立たされる。

 

「ところでこの写真の意味は理解出来てるよね?」
板倉が見せた写真は、千里が板倉から受け取った写真と同じ、千里と瀬島が二人歩いている場面を写したものだった。

 

「君らの悪行はお見通しって事」
板倉は千里とその不良仲間が「奪い返し屋」を行っていた事を知っていた。
千里たちの行いは不良たちの間でも有名であり、板倉はそれを懲らしめる目的で千里を罠にかけるために被害者を装ったのだと淡々と告白する。

 

板倉の中学は他学区であり、そこで問題を起こしていたため猫を被っていたのだと言う。

 

「俺ん家『本職』だからよ」
板倉の目が鋭くなり、千里を睨みつける。
「テメェが今どういう状況かボチボチわかれ」

 

板倉は、今回は穏便に済ませる、と千里がこれまで貯め込んできたであろう金を全て差し出せと命令する。

 

「それ全部と」
瀬島の顔がヤクザによって掴みあげられる。
「こいつ交換」

 

「ちゃんと眼鏡も付いてるよ」
板倉は瀬島の眼鏡を余裕たっぷりに千里に見せつける。
「お得だろ?」

 

千里は言葉もなく、板倉を睨みつける。

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感想

因果応報

天網恢恢疎にして漏らさず。

 

1話で既に「奪り返し屋」の事を知っていた惠南から「もうそんなことはやめろ」と注意を受けていたが、千里の身にこれまでの因果が見事に報いた結果となってしまった。

 

千里が嫌いなわけではないが、悪行を続ける千里を見事に騙し切った板倉に感情移入して、悔しそうな千里の表情にちょっとだけカタルシスを感じたのはナイショ(笑)。

 

そもそもメタな視点から言えば、漫画の主人公がこんな稼ぎ方をして何も報いを受けないのは問題があるし、このままでは済まないだろうなとは分かってはいたんだけど……。

 

千里は、ただ一登の仇を討ちたくて、その目標の為に突き進んでいたのだと思うと悲しいな……。

 

その行いは犯罪であり、千里は、仇を追う為の金は汚くていいと開き直ってすらいた。
自分の身も心もすり減らして、一登を強く想うが故に行ってきた行動の末路としてあまりにお粗末すぎる。

 

そもそもここまで、千里はあまりに悲しい運命を辿っている。

 

両親からおよそ親子とは思えない不遇の扱いを受け、唯一の支えであった兄の一登は両親と一緒に失う。
一登の復讐に心を囚われ、「火の男」殺害の実現の為と変則な形ではあるけどカツアゲという犯罪に手を染める。

 

そして挙句の果てには、その行状が「本職」の目に止まって現在に至るわけだ。

 

千里が金を求める理由は一登の為と極めて純粋なものが根底にあるが、実行していた方法はどこまでいっても犯罪だった。
一登の為だという言い訳は、これまで金を奪われた被害者に対して一切説得力を持たない。

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千里の選択は? 交渉の可能性もある?

ラストでこれまでの貯金と瀬島の交換を持ちかけられたわけだが、千里は一体どちらを選ぶのか。

 

漫画の主人公であれば普通は瀬島を選ぶだろうし、そもそもここで金を選んだところで千里の金が板倉に奪われないわけがない。
普通に考えれば観念して全財産を渡すしかないだろう。

 

しかし、「火の男」の背は遠のくわけだ。
「火の男」を追う為のフットワークは確実に鈍ってしまう。

 

千里は2話で「火の男」と工場の同僚だったというノブから情報を得るためにさらっと食事を奢っていたが、その金も「奪り返し屋」で得たものだろう。
それが無かったらスムーズに情報を得て、廃ビルに辿り着けなかったかもしれない。

 

金は確実に「火の男」を追う上で千里の力になっているのだ。

 

千里にとって、この選択は「火の男」か瀬島か選べと言っているのに等しいかもしれない。

となると、千里は全額を渡す選択はしないかも……。

でも、瀬島を見捨てるとは思えない。

 

となると、賢い千里は板倉に対して何かしら交渉を持ちかけるかもしれない。

 

板倉に上がりの何パーセントかを渡す約束をして「奪り返し屋」を続けようとするとか……。

 

漫画の主人公としては最悪の選択だが、復讐の為に手段を選ばないと考えているであろう千里にはあり得ると思う。

 

それとも、この場で自身の身の上を告白し、金がいる理由を訴えるか?

 

やってみる価値は無いとは言えないけど、泣き落としとも言えるその方法は「本職」には通用しないだろうし、そもそも千里がそんな方法をとるイメージが湧かない。

 

千里は頭が良く、気が強い。
確実に一登の為になるならプライドなんて捨てるかもしれないけど、望みの結果が得られる可能性が低い、分が悪すぎる賭けなどしないだろう。

 

千里の目標の為には金は必要。そして金は悪い事を迷いなく行うと集まる事を千里は既に知っている。

 

「本職」を擁する板倉と手を組めないか、もしくは利用出来ないかという考え、選択肢は、恐らく千里の脳裏にあると思う。

 

ただその場合、そもそも捕まる事を恐れて「奪り返し屋」を思いついた千里に「本職」と組む覚悟があるのかという点と、千里や瀬島を痛めつけている「本職」の翻意を促す提案が出来るかどうかが問題だ。

 

果たして千里の選択は?

 

以上、夢で見たあの子のために第6話のネタバレを含む感想と考察でした。

第7話の詳細は以下をクリックしてくださいね。

 

まとめて読みたい。

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