第8話 くれよんチンちゃん
第7話のおさらい
中忍加藤はエゴ田駅北公園で小汚い風貌をしたおっさん、佐々魔と会う。
久しぶりです、と佐々魔に挨拶する加藤。
佐々魔は、視線は楽しそうに駆け回る子供達を見つめながら、加藤に応える。
「子供のいる前だ 仕事の話は別の場所でだろ」
音大通り広場にやってきた佐々魔と加藤。
金が無いという佐々魔に対し、加藤は一つため息をついた後、なぜ降忍したのかと問いかける。
佐々魔は搾乳機を握り続けながら過去、共に乗り切った戦いを振り返る。
「加藤 俺の背中を任せられるのはお前を含めて数人だけだ」
加藤から佐々魔一等忍尉と呼ばれた佐々魔は、『元』な、と言ってから続ける。
「戦後70年以上経過しても内閣総理大臣は我々の最高指揮監督権を有していない」
「警察官29万人 自衛官23万人 そして我々は20万人 その内9割以上が国内にいるのはなぜだ」
「なぜお前ら中忍トップクラスが海外派忍を早々に切り上げ国内忍務に従事するのか?」
「この巨大暴力組織がなぜ 国家によるシビリアンコントロールを受けていないのか?」
「U」
「N」
一文字ずつ呟く加藤。
佐々魔は加藤に同意する。
「全ての謎はそこにつながる」
「『アンダー』『ニンジャ』」
その時、周囲にあった落葉が一斉に舞い上がる。
風から顔を守る加藤。佐々魔から目を離した一瞬のうちに、彼は姿を消していたのだった。
「ちっ 逃げたか」
加藤は広場を後にし、住宅街を歩く。
(しかし・・・・そろそろきな臭い動きがあるのか?)
仕事帰り、川戸は小が我慢できず、近くの車が止まっている駐車場へ行き、車の陰で用を足していた。
一息ついた川戸の視線は、アスファルト上に広がっていく小便と、それが広がっていく先の車輪の陰から、男性の局部切り落とし犯、忍者志望の外国人を捉えていた。
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第8話 くれよん チンちゃん
何事もなく
バイクのそばで用を足していた川戸は、その車輪のあたりから外国人が川戸を見上げてるのを発見する。
小用を足しながら、じーっと外国人を見つめる川戸。
外国人は一瞬川戸から目を逸らすが、すぐにまた視線を川戸に戻す。
そして、フゥ、と一言大袈裟にため息をつく。
それはどういう意味? と問いかける川戸。
外国人は、一向に恥じらいを見せない川戸を見ながら、自分の娘もいつかそんな感じになるのか、と問いかける。
それを受けて、見ず知らずの女の股間をのぞいている男が父なら縁を切る、と突っ込む川戸。
縁を切る、という言葉の意味を外国人に問われ、川戸は素直に考える。
「え~と No friend,no family,any more! かな?」
それは絶対いやです、と即答する外国人。
川戸はすかさず、だったら今すぐ(のぞきを)やめろよ! と再び突っ込む。
しかし外国人は、それはできません、男性の局部をあと2本切らなくては、と力なく答えて川戸の前から姿を消す。
(なんだか悲壮感のある変態外国人だな)
ホットパンツを上げ、川戸はその場を何事もなく立ち去る。
あたらしい任務
アパートの自室で、九郎は隣室の大野さんの持っていたブラジャーを自分の胸に装着していた。
着けても感動しない、着るより脱がすもの、とブツブツ独り言を続ける九郎。
「暇そうだな」
九郎の背後に中忍加藤が現れる。
飛びのいて距離をとる九郎に、加藤は九郎の独り言の多さを指摘し、機密漏洩の有無を問う。
してないです、と九郎は真面目な表情を作った顔の前で手をぶんぶんと横に振る。
その胸にはブラジャーがついたままだった。
ふん、と鼻を鳴らす加藤。
そして九郎からのお茶の申し出を断ると仕事の進捗状況の報告を求める。
九郎は、受け取った箱は開け、忍務が高校潜入であると判断して今週土曜日の転入試験まで人目を避けて自宅待機していたと答える。
それを受けて加藤は、あと3日あるわけだな、と呟き、練魔の通り魔について知っているかと質問する。
九郎は、その犯人が男性局部を切ることをネット経由で知っていたと答える。
仕事だ、と加藤は箱を差し出す。
「3日以内に処理しろ」
そして加藤はターゲットである忍者志望の外国人の特徴をつらつらと述べていく。
「海外の犯罪組織が我が社に潜入させる目的だが何を間違えたかチ〇コ切りがコンタクトを取る方法と考えていたまだ次がある」
「忍びの国で奴らを自由にさせるな」
九郎は正座して、背を伸ばして加藤に真っ直ぐ向き合いながら黙って聞いている。
真面目な表情だが、ブラジャーは胸についたまま。
「自ら囮になってその男を見つけろ この国に来たことを後悔させてやれ」
膝の上に置いていた手で、ぎゅっ、と拳を握る加藤。
加藤は、この箱にこれと同じモノが入ってる、と警棒を見せる。
「テーザー銃内臓警棒だ」
警棒としての機能は市販のものと同じ。
しかし柄の先端にボタンがあり、それを押すと電極が発射され、それが命中すれば10万ボルトの電流によって敵の動きを封じられると加藤は説明する。
「電極は一発のみ どのタイミングで使うかはお前次第だ」
試してみるか? と加藤は電極の射出する部分を九郎に向ける。
いやあ、と顔を手で守る素振りを見せる九郎。
「テーザー銃は経験済です」
「人目を避けなるべく殺すな 再起不能で帰して見せしめにする。」
帰るために玄関に向かおうとした加藤は、ハンガーにかけられているパーカーに目を留めると、調べ始める。
そして九郎に、前回渡した箱に入ってたのはこのパーカーかと確認する。
九郎は正座の状態のまま、加藤の問いに”はい”と答えて、それに加えて高校の制服一式だと続ける。
パーカーを観察していた加藤は、それには防刃、防弾機能があることを確認していた。
そしてパーカーの内側のタグに『摩利支天 4.0』と書かれていることに気付き、驚くのだった。
加藤が帰った後、電車の通過による振動を感じながら、九郎は警棒で自らの肩を叩いていた。
その脳裏では、キャリア(中忍)である加藤がパーカーを見て一瞬動きを止めたことが気になっていた。
(これは何かあるな……)
感想
良いキャラ
今のところ、この漫画のヒロイン的存在である川戸さんは文句なしにかわいいなぁ。
スペリオールで連載中のたかが黄昏において、それまでに出てきた女性陣よりも好きかな。
実際川戸さんと付き合うとしたらかなり苦労しそうなので、眺めてるだけでいいけど。
ルックス、描かれ方は花沢先生の作品の中では一番好きだな。
あと九郎もルックスがかっこいいと思う。
川戸さんにしてもそうなんだけど、人物描写がこれまでの花沢作品より自分好みというのかな……。
絵が明らかに違って来てるように感じる。
ここまでの話で、自分は九郎に対してどこか抜けた印象だなという思いが先行している。
しかし、その身体能力のポテンシャルの高さは、やはりこれまでの話の中で随所で表現されていた。
今は暇な下忍だけど、局部切断犯の外国人を撃退し、その後に控えている学校潜入任務を見事にやり遂げ、忍者としての実績を積んだらどんどん重要な仕事を任されるようになるのではないだろうか。
そんな立身出世も楽しみ。
道具に等級?
九郎の元に届いたパーカーのタグに書かれた『摩利支天』の文字に加藤が反応していた。
4.0? これって等級なのかな? 道具(忍具?)にランクがあって、その中でも下忍が持つには過ぎた代物なのかもしれない。
防刃、防弾性能があるパーカーとか使いどころはないけど欲しいんだけど。
仮に、下忍が持つことは本来あり得ないようなアイテムを九郎が持っていることに加藤が驚いていたとなると、それを送ったのは一体誰なんだろうという疑問が出てくる。
学校潜入任務の依頼人ということだと思うけど、その人物は一体どういう意図で九郎にこのパーカーを送り、学校潜入させようというのか。
貴重なアイテムを送るということは、九郎とは全く関係が無い人物とは思えない。
仮にこの『摩利支天』が、忍者の道具に明確なランクがあるという設定だったとしたら、面白い設定だと思う。
貴重な忍具を巡って争いが起こるなんて展開も出てくるのかも。
等級も『不動明王』とか有名な仏教の信仰対象が出てきたりするのかな。
こういう細かい設定が凝っているとしたら、かなり自分好みの漫画なので嬉しい。
あとパーカーの他に、加藤が九郎に対外国人用として持ってきたテーザー銃機能付きの警棒もいいなぁ。
こんなの初めて見たけど、実際存在するんだろうか。かなりリアルな造りのように見えたけど……。
検索してみたけど探せなかった……。
柄のボタンを押すと電極が飛び出して電流を流すとか、こんな便利な非殺傷武器があるなら警察官が携行すべきだと思う。
今後もどんな道具や設定が出てくるのか気になる。
摩利支天
漫画とかアニメ、ゲームが好きだとどこかで聞いたことがあるキーワードだと思う。
でも詳しくは知らないので検索した。そしたらwikiで詳細を見つけた。
仏教の守護神である天部の一柱。日天の眷属である。
原語のMarīcīは、太陽や月の光線を意味する。摩利支天は陽炎を神格化したものである。
陽炎は実体がないので捉えられず、焼けず、濡らせず、傷付かない。隠形の身で、常に日天の前に疾行し、自在の通力を有すとされる。これらの特性から、日本では武士の間に摩利支天信仰があった。
なんでも、坊さんの間ではもちろん、侍からも信仰を集める神らしい。
蓄財、護身の神であるらしく、摩利支天を奉じていた侍は護身の加護を得ようとしていたのだろう。
どうやら戦いに身を置く人間にとっては、中々メジャーな信仰対象のようだ。
その名がタグに書かれたパーカーとなると、防刃、防弾の他にも何らかの加護がありそうな感じがする。
ひょっとしたら忍者にとっては『摩利支天』シリーズの忍具を身に着けるのはステータスだったりするのかも。
戦いの時は近い
1話~8話のここまででコメディ7割、シリアス3割くらいの進行具合だったように思う。
だけど、ここからいよいよ九郎と外国人がぶつかるようなので、シリアス成分が多めになっていきそうで嬉しい。
コメディ嫌いってわけでは全然ないんだけど、この漫画には現代忍者の戦いの描写を期待していた。
果たして、現実に即したこのリアルな世界観において、忍者九郎と暗殺外国人はどんな戦いを繰り広げるのだろう。
そして、花沢先生はこの戦いをどう表現するのだろう……。今から超期待だわ。
九郎はここまでの話の中で人間離れした動きを見せたし、間違いなく普通の殴り合いとかじゃない、派手な戦いが見られるのでないかと思う。
学校潜入任務の開始前にこんな話になっていくとは……。
二週に一回のペースでの掲載なのが一週余計に待たないといけないから辛い。
これまでのコメディとの落差をより感じさせてくれるような死闘を期待したい。
以上、アンダーニンジャ第8話のネタバレを含む感想と考察でした。
第9話に続きます。
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