第2話 忍びのお仕事
第1話のおさらい
現代の紛争の最前線で部隊がある建物を制圧しようとしていた。
部屋の奥の敵に向けて部隊が銃を突きつけるが、その敵は既に事切れていた。
その人物は携帯電話を持った手の親指と、、さらに鼻から上も同じく鋭利な刃物で切断されていた。
その光景に部隊の隊員たちは戸惑う。
この手口は明らかに爆弾によるものではなく刀であり、さらに現場に残された折り紙から忍者の仕業だと結論づける部隊の隊員。
第二次大戦終結時においてマッカーサーは忍者に暗殺されかけていた。しかしそれを阻止したのもまた親米派の忍者だった。
GHQの手によって忍者の組織は解体される。
忍者組織は表向きは消滅したが、しかし実は忍者の精鋭たちは戦いの最前線で暗殺や破壊活動などを行っていたのだった。
それ以外の忍者もまた存在しており、様々な組織に潜伏して日夜国民の監視をしていた。
その数は約20万人。
夏。練馬のアパートの四畳半で、畳の上に仰向けになってヒマを持て余している男がいた。
そんな男の前に、配達員のような出で立ちのキャップを被った男が現れる。
男は素早く転がり闖入者との距離をとる。
ズカズカと部屋に入ってくる眼鏡キャップの気配が全く分からなかった男は、彼の事をキャリア(中忍以上)なのか? などと考えていた。
眼鏡キャップは、最近は下忍の中には仕事がないことに耐えられずに、禁止されている抜け忍をする話があるのだと語り始める。
暇を持て余していた部屋の主は、任務さえあれば働くと脱獄を否定する。
しかし眼鏡にキャップの男は笑い、下忍が何人抜けてもわが社は困らない、と返す。
脱獄が罪なのは規則だからであり、もしそれを破れば”抹消”させると眼鏡キャップ。
眼鏡キャップは、仕事だ、と言って段ボール箱を置く。
その際、あの『雲隠一族』も押しぶれたもんだ、と見下したような表情をする眼鏡キャップ。
部屋の主は眼鏡キャップをじっと見つめる。
するとさっき部屋の主が天井に向けて撃っていた吹き矢の矢が、眼鏡キャップの頭上に真っ直ぐ落ちていく。
部屋の主は手を出してそれを止めようとするが、眼鏡キャップは簡単にその手を止めてしまう。
部屋の主は顔を強張らせながら、天井のつまようじが落ちてきたからと説明する。
眼鏡キャップは帽子を外す。その中心につまようじがヒットしていた。
「10点…だろ?」
眼鏡キャップが去った後、部屋の主――雲隠九郎は、メガネキャップが置いていった段ボール箱を開梱する。
その中には高校の制服、ブレザーなどがある。
九郎はこれらの道具を目の当たりにして、学校に潜入するのかと考えていた。
その中の服の一つであるパーカーを着て、九郎はジップを上げていく。
ジップを限界まで閉じると、目の下あたりまで九郎の顔を布が覆い隠していた。
さらにフードの中から、頭を覆う忍者の帽子のような部分を引っ張りだし、頭に被せる。
九郎はすぐに、なるほどね、とすぐに納得するのだった。
(これ着て忍者ってことね)
第2話
学校潜入任務
仕事が決まり、テンションが上がって畳を転がる九郎。
その振動で、先程まで天井に向かって刺していた吹き矢が落ちて来るのを体に受けて悶える。
ダンボールの底を抜き、何の仕掛けも無いか丹念に確認するが、ダンボール自体に何の細工も見られない。
中に入っていた制服一式に関しても九郎の体にピッタリだったことが分かっただけだった。
生徒手帳にも問題はない。
九郎の胸にあるのは校則が未だにあるのかという雑感のみ。
九郎はこれらのアイテム一式から、これが”学校に潜入せよ”という上からのメッセージだと解釈していた。
靴底にGPSが仕込まれていないかどうかという疑問は残しつつも、早速スマホで学校について調べる。
「おっ 共学だ 良かったぁ」
よーし、と立ち上がり、押し入れの襖を開ける。
「大野さんいます?」
さらに奥にある襖を開くとそこには隣の部屋がある。
部屋は壁で区切られておらず、押し入れを通じて繋がっていた。
部屋の主、大野がいないことが分かると、パーカ-のジッパーを目の下まで引き上げながら一旦部屋の中に戻る。
そして大野の部屋に向かって走り、頭からジャンプして押し入れの中を飛び越える。
隣室に着地すると、ごく自然に冷蔵庫を開けて麦茶を飲み一息つく。
転校手続き
九郎は廊下に出て、隅に置かれた公衆電話のダイヤルを回していた。
電話口で、はい講談高校です、という声が聞こえた直後、九郎はふと思い立って電話を勢いよく切る。
転校の手続きをしようとしていた九郎。
それをするのは普通は生徒本人ではなく親であることに気付いたのだった。
父親を演じても良かったが、電話をするのが昼間となると不自然。
よってこの場合は母親が電話するのが自然だった。
夕方にかけ直すことを考えるが、上からの指示が無い限りは即行動することが下忍の使命、と九郎は裸足で外階段を降りていく。
(このアパートで女といったらあの人だが白昼シラフの状態を見たことがないんだよなぁ)
外階段を降りていく途中、その女性の部屋の窓が全開なので思わず覗く九郎。
(ムっ いないか? しかし窓全開で下着干して大丈夫なのかこの人?)
玄関のドアを開け、声をかける。
「川戸さーん いますか?」
「うぇ~~い?」
奥に進んでいくと、川戸が話しかけてくる。
「雲隠くーん 紙 とってくんな~い?」
トイレットペーパーの在り処を問う九郎に、川戸から、便所の中に決まってんだろ、とぶっきらぼうに答えが返ってくる。
「それは自分でとりましょうよ」
「取れねーんだよ」
トイレの中。トイレットペーパーは見えてはいるものの、便器に腰を下ろしている川戸が手を伸ばしてもとれないくらい遠い位置に置かれていた。
川戸はこのボロアパートはどういう間取りなんだ、遠くに紙を置きやがって、とアパートや大家に悪態をついている。
その様子に川戸が完全に酔っぱらっていると判断した九郎だったが、しかし学校に母親役として電話をかけてくれるような女性はこの人しかいないと冷静に考えていた。
「入っても見たら殺すよっ 社会的に抹殺すんぞっ!!」
忍者的アクション
(なるほどそうきましたか)
川戸の脅しにも冷静な態度を変えることなく、九郎は再びパーカーのジッパーを鼻先まで上げる。
(俺は忍び 不可能を可能にする)
九郎はドアの上の桟に手をかけて、両足を浮かせて柱に足を置いてから川戸に向かって声をかける。
「じゃあ開けてください」
九郎の言葉を合図に川戸がドアを開ける。
九郎は足を振り上げて川戸の頭を越えてトイレの壁に足をつけると、桟にかけていた手を、足をつけている壁と対面の壁に手を置き、足と手で突っ張り横向きになりながら素早く紙の置いてあるトイレの奥へと向かう。
そして川戸を越えるとトイレの床に着地し、窓際に置いてある紙を掴む。
「どーぞ!」
紙を片手に川戸に振り返る九郎。
「見てんじゃ」
川戸がスリッパを振り上げる。
「ねーよっ!!!」
飛んでくるスリッパ。
九郎は頭を抱え、丸くなって体を守る。
感想
ここは下忍の寮?
九郎の部屋は押し入れを通じて隣の部屋と繋がっていた。
住人の大野さんは今回出て来なかったけど、どう考えても大野さん側からも九郎の部屋にアクセス出来るし、これはひょっとして九郎と大野さん、二人とも忍者ということかな。
いや、まだそれを判断するのは早いか。一般人の可能性も十分にある。
そして今回、川戸さんなる良いキャラの女性が登場した。
九郎曰く、昼間にシラフでいたのを見たことがないというから、結構な酒豪なのかな。
この豪快で強い感じが花沢作品に出て来る女性の特徴だと思う。
先生が根源的に女性をどう考えているのかということの表れなのだろうか。
そして、先生の女性の好みはこんな感じなのだろうかと穿った見方をしてしまう(笑)。
大野さんと同様、まだこの人が忍者か一般人かは分からない。
でも九郎がちょっと一般人には出来ないであろうアクションを目の当たりにしても全く平然としていたし、多分九郎が忍者であることは知っていると思う。
忍者は一般人に対して自分の正体を隠しているはず。
つまりこの川戸さんも忍者の可能性が高い。
仮にこの川戸さんが女忍者、くのいちだとしたら、このボロアパートは下忍に位置づけられる忍者たちの為の寮なのかもしれない。
組織が借り上げたか、もしくは所有して運営している物件。
後者であれば大家さんも忍者?
個人的には、大家さんは一般人の方が面白いかな。
色々な人に対して正体を隠す方が話としては面白くなりやすいと思う。
大家さんは一般人で、九郎が忍者であることは知らない。
仮に川戸さんや大野さんが忍者であったとしても、それも一切知らない。
あくまで、貧乏な九郎たちのような下忍が安い物件を探していたらたまたまここに落ち着いたという感じ?
でもそれはちょっと不自然だから、組織が、安いからここを借りるように、と下忍たちに指示したとか?
九郎の能力
二話まで読んで、九郎には割と冷静なところがありつつ身体能力もあるので実力はあるという印象を受けた。
前回のメッセンジャーとのやり取りはちょっと頼りない印象だったけど、今回でちょっと見方が変わった。
今回の紙をとるというちょっとしたミッション(笑)だけど、それを忍者らしい身軽さでやり遂げて、でも最後の最後で失敗という、間が抜けているところがいい。
いかにも主人公という感じだ。
花沢先生がリスペクトしてこの作品を描いている、と巻末コメントで挙げたヤンマガの作品である”大東京忍者伝かげろうくん”を読んだ。
すると確かに、その主人公をリスペクトして雲隠九郎というキャラクターが生まれたのがよくがわかる。
口下手で、常に金欠で、でも能力は割とあって、仕事に対して一生懸命取り組むけど毎回苦戦して、見事に仕事をやり遂げても報酬は僅かで……。
まだまだ下っ端で、出世の為のチャンスにも恵まれない、まだまだこれからという境遇なのかな。
前回の九郎に仕事を持ってきた中忍(もしくはそれ以上のクラス)が口にした雲隠一族というキーワードからもエリートの末裔という感じはあったし、活躍に期待が持てそうだ。
以上、アンダーニンジャ第2話のネタバレを含む感想と考察でした。
第3話に続きます。
コメントを残す