第11話 中学性日記
第10話のおさらい
加藤の元上司で元一等忍尉である佐々魔は立ちションをしていた。
夜空を見上げながら漢詩を諳んじているその背後から音もなく局部切り取り犯の外国人が迫る。
外国人は、他人の局部に触れることに抵抗があった。
なので、局部をおでんだと思い込んで掴むと、ハサミで切り落とす。
しかし外国人が切り落としていたのは本当におでんだった。
佐々魔は背後の外国人の背中に自分の背中を預けて、背中を踏み台にして目の前の建物の壁に向けてジャンプする。
そして壁を、まるで重力が無くなったかのように走り外国人と距離を置いて着地する。
外国人は、今、目の前で起こした佐々魔のアクションから、彼が忍者であると理解していた。
待望の忍者に会えたことで娘を救えるかもしれない、と考えたのとほぼ同時に、外国人は忍者と闘いたい衝動に駆られていた。
ポケットからナイフをとり出して、佐々魔に対して臨戦態勢を作る。
(カランビットナイフ……? ロシア系の殺し屋が?)
佐々魔は外国人から距離をとる。
外国人は佐々魔に一瞬で肉薄し、ナイフで切りつける。
しかし佐々魔は外国人の動きを見切っているかのように、ナイフをわずかな動きでかわし、その足元を足払いして転ばせる。
外国人の腕をとって関節技を極めようとするが振り払われ、再び距離をとる佐々魔。
しかし佐々魔は関節を極めようとしていたわずかな時間で身体検査を行い、彼がクレジットカード数枚を所持しているのみだと確認していた。
佐々魔が外国人と戦っているのと同時刻、ドローンで川戸のブラジャーを盗んだ少年はアパートの前に立っていた。
盗むのに失敗したブラジャーが、窓のあたりに引っかかっている。
少年はそれを罠と感じ、内心怒りに燃えながらアパートに近づいていく。
ブラジャーに手を伸ばしていく少年は、階段で九郎が待ち構えていたのに気づいていない。
九郎はパーカーで透明になっていたのだった。
ブラジャーを掴もうとしている少年に向けてテーザー銃を発射する。
少年が電流で麻痺して地面に倒れるのを見届けると、九郎はパーカーから顔を出し、少年を眺めていた。
(効くねぇ~)
第11話 中学性日記
少年が目を覚ましたのは
九郎が警棒で電撃を食らわせた中学生は大野さんの部屋に寝かされていた。
目を覚ますが、すぐには目を開けずに、自分はブラジャーを握ったら倒れたのだと振り返る。
少年はすぐにここがボロアパートの一室だと察しており、その関心は部屋の持ち主が誰なのかということだった。
横目で、隣で胡坐をかいて自分を見下ろしている大野さんの姿をチラ見して、少年は軽くため息をつく。
少年の明らかにガッカリしている様子にムッとする大野さん。
大野さんは少年がブラを握りしめて倒れているところを運んだと説明し、感謝されてもため息をつかれるいわれはない、と自分が抱いた不快感を伝える。
舌打ちをしてくる少年を咎める大野さん。
少年が下着泥棒だと知っていると指摘する。
「…黙秘します あと国選弁護人を呼んでください それまで一切喋りません」
少年は気を取り戻してから、ずっと横たわったままだった。
その不敵な様子に大野さんが歯噛みする。
「ぬぅ…昨日受けた授業の内容みたいなこと言いやがって」
台所では九郎が包丁で何かを切っている。
追い詰められた少年は、全てを終わらせようと紙袋に入っている包丁に視線をやる。
「お前の持ってきた包丁切れ味いいな」
九郎は大野さんの母が送ってきたナスの漬物を少年の持っていた包丁で切っていた。
少年は、もはや包丁を手にすることさえできないのを知り、全てを諦めるのだった。
上体を起こそうとする少年に、どうして倒れた? よくあるのか? と問いかける九郎。
少年は、左肩に激痛が走って意識がなくなった、と答える。
「貧血だな」
断定する九郎。
「え? いえ自分は貧血で倒れたことはあまり…」
「貧血だよ」
九郎は少年にナスの漬物を差し出す。
「ナスの漬物が貧血に効くとか効かないとか聞いた気がするから食べな」
適当だな君は、と突っ込む大野さん。
漬物はニガテ、という少年に、わかる、と九郎が返す。
「俺も大野さんのお母さんの漬物食べてから嫌いになった」
失礼だよ九郎くん、と大野さん。
川戸が合流
廊下から缶ビールを両手に持った川戸がやってくる。
「なんだ 飲んでんじゃん まぜて~」
ちょうど今からですよ、と九郎。
ブラジャーの主である川戸の登場に少年は一気に緊張する。
川戸はビールの栓を開けながら、少年が誰なのかと問いかける。
大野さんが言い淀んでいると、九郎がさらっと説明する。
「彼はブラジャーを拾ってくれてわざわざ持ってきてくれたんです」
「あ そーなんだ ありがとう」
笑顔で礼を言う川戸。
「…あ…いえ…」
少年は思わぬ展開に戸惑っていた。
「それは その あの」
「助かったよ」
そして川戸は、あのブラジャーが隣のおばちゃんのもので、日当たりが悪いから代わりに干してあげていたのだと説明する。
それは川戸さんのではないってこと? と九郎が問う。
「当たり前 そんなの着ないって」
即答する川戸。
少年は衝撃の事実を知り、思わず顔を手で覆う。
その様子に、どしたの少年? と質問する川戸。
ちょっと貧血かな? と少年。
貧血だな、と九郎も続く。
そして川戸は思い出したように、そういえばこのあいだ変態を見かけたと話題を切り変える。
川戸は女性器の名称をズバリと口にしていた。
それを聞いた少年はブラジャー以上の衝撃を受ける。
「いやぁ 駐車場でオシッコしてたら車の下にいた外国人に見られたの」
「車の下に外国人…まあヘンタイかぁ」
呟く大野さん。
「川戸さん」
九郎はビールを傾けながら問いかける。
「その外国人は青いパーカーで金髪でメガネで白人でしたか?」
「あーそれだっ!! 有名なヘンタイなの?」
そして川戸は、その外国人が女性器よりも男性器の方をご所望だったようで見られ損だった、と振り返る。
それはご愁傷様です、と返す九郎。
その表情は真剣だった。
「もう少し詳しく教えてもらってもいいですか?」
戦いに決着
局部切り取り犯の外国人と佐々魔との戦いは続いていた。
佐々魔は、外国人のナイフによる攻撃を無駄のない動きでかわしていく。
外国人は佐々魔の胴体目がけてナイフを横薙ぎに振るう。
それを受け流すようにして、横に回転してかわす佐々魔。
外国人の連撃を佐々魔は連続で受け流していく。
息を切らして、背中を見せている佐々魔に向かって行く外国人。
佐々魔は壁に向かって走り、壁を蹴って後方に飛び上がり一回転すると、迫ってきていた外国人の顔目がけてヒップアタックを直撃させるのだった。
地面に倒れた外国人を見据えて、ふぅ~、とひとつ長く息を吐く。
感想
かわいい&面白い
花沢先生の作品の中で川戸さんが一番好きかもしれない(笑)。
なんか、出てくる度に可愛くなっているような気がする。
下着ドロの中学生にとってこの夜は運がよかったと思う。
親や警察に突き出されるようなこともなく、さらに川戸さんとの出会いによって新しい扉を開くことができたようだ。
もし川戸ではなく他の女性の下着を狙っていたなら、最悪ヒミズに影響を受けて持ち歩いていたという包丁で殺傷事件に発展したかもしれない。
九郎からテーザーガンによる10万ボルトの電撃を食らって気絶したのを差し引いてもプラスといってよいだろう(笑)。
特にそのつもりもなかっただろうけど、九郎たちは一人の少年を救った……のか?
九郎が、少年が気絶した理由を貧血だと言い切ったのには笑ったなぁ。
その後、ブラジャーが川戸のものではなかったことを知ってショックを受けた少年がふらついた理由を、貧血です、と答えた場面も最高。
外国人どうなる?
九郎が意外なところから、ターゲットである局部切り取り犯の手がかりを掴んだ。
まぁ、川戸さんからターゲットの話を聞いたところで外国人に直接繋がるわけではないが……。
これは戦いも近いかな?
しかし九郎が戦う前に佐々魔が倒してしまいそうだ。
外国人を吹っ飛ばしたが、ここから佐々魔VS外国人の戦いはどうなっていくのだろうか。
以上、アンダーニンジャ第11話のネタバレを含む感想と考察でした。
第12話に続きます。
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