響 小説家になる方法 最新第80話表彰式の感想(ネタバレ含む)と考察。表彰式開始。賞を受ける為に登壇して加賀美大臣と相対した響は……。

第80話 表彰式

第79話のおさらい

文芸コンクール会場、加賀美文部科学大臣の控室。

 

会場入りする直前に外で殴りかかってきた女子高生が『響』だと確信していた加賀美大臣は、秘書の北島に響をここに連れて来るようにと命じる。

 

受付をを済ませてホールに向かうリカ、響、典子たち。

 

その様子をじっと見ていた会長は、思わず響を呼び止める。

 

しかし会長は我に返り、遅刻には気をつけてとだけ告げる。

 

うん、と返事をして響はホールに入場する。

 

典子は既に着座している隣の席の生徒清野にフレンドリーに接し、騒々しくしている。

 

明らかに会場内が騒がしくなったのを感じ、何気なく横を見た藤代は、すぐそばに立っている響と目が合う。

 

ここか、と呟きつつ藤代の隣に座る響を藤代は睨みつけ、心の中で毒づく。
響は、清野に化粧を施そうとして騒々しくしている典子に近づいていき、典子の頭にげんこつを打ち下ろして黙らせる。

 

呆気にとられる出席者たち。

 

藤代は、席に戻ってくる響を見つめていたが、表情を強張らせて目を伏せる。

 

そこに、加賀美大臣の秘書の北島が現れる。

 

加賀美大臣が話があるから控室に来て欲しいと言われ、響は北島と共に控室へと向かう。

 

大臣に呼ばれていく響を見て、藤代はただただ呆気にとられるのみ。

 

リカは北島と一緒に会場を出て行く響をジッと見つめている。

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控室。加賀美大臣が響を迎え入れる。

 

加賀美大臣は事前に北島から渡されていた感想例を元に『11月誰そ彼』の感想を一通り伝えた後、響は芥川賞、直木賞を受賞した『響』なのかと問いかける。

 

何も答えない響に、加賀美大臣は学生の書く小説と『11月誰そ彼』は比較できるレベルではないと主張し、『お伽の庭』と同じ読後感だと続ける。

 

あなたが『響』なら、今日、公表しませんか? と真剣な表情で、響を説得する加賀美大臣。
自分の権限でSP、警察を配備して守ることを約束するから、政治家として公表して欲しいと言い、美辞麗句を用いて響を説得しようとする。

 

「嫌。」
響は一言で加賀美の申し出を断り、普通の16歳の高校生である自分にはそこまで人の気持ちを背負えない、と簡潔に理由を述べ会場に戻ろうとする。

 

加賀美大臣は一言、残念、と出て行く響を控室から見送る。

 

控室に、隠し撮りした響の声が響く。

 

きちんと撮れていることを確認した加賀美大臣は、北島にこの音声をもう一度確認して自分の発言に問題がなければ出所を隠した上で、この音声データをマスコミに流すことを指示する。

 

加賀美大臣は、隠し撮りした響との会話を公開すれば、自分が批難を浴びずに注目だけを集められてそれが総裁選の決め手と目論んでいた。

 

しかし、加賀美大臣控室の外の廊下でリカは加賀美大臣のが立って中の様子を窺っている。

前回、第79話の詳細は以下をクリックしてくださいね。

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第80話 表彰式

表彰式直前

報道各社がデスクとの連絡を取っている。
これから始まる表彰式のあと、文科省で6時から定例記者会見だと加賀美大臣の動向を報告する。

 

その様子をじっと見ていた文芸コンクールの委員が、今年の報道陣が多いと呟く。

 

その隣に座る会長から加賀美大臣が総裁選に出馬しているためだという答えを受け、響を凝視してから委員が問いかける。
「……鮎喰響は、『響』ですかね。」

 

会長は、その『響』と背格好は似ているが確認はしていないと答える。
しかし内心ではまず間違いなく『響』だと考えていた。

 

 

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表彰式開始

整然と学生たちが着座している会場。
報道陣が壇上に向けてカメラを構えている。

 

司会による第54回全国高校文芸コンクール表彰式の始まりを告げるアナウンスが流れ、続けて行われるプログラムが発表される。

 

「まず初めに全国高等学校文化連盟会長 前橋務より開会の挨拶です。」

 

登壇した会長は出席者たちに祝辞を述べる。

 

今回のコンクールが小説、詩、俳句の作品併せて5000以上という過去最大の規模になったという会長の話を聞きながら、藤代は前橋会長の挨拶を聞くのも3回目か、と考えていた。
1年の時は緊張してて何も覚えておらず、2年の時はプロの話が来て浮かれていたことを思い出す。

 

壇上には受賞者に渡すための盾がずらりと並んでいる。

 

(高校生活が、終わったんだな……。)
俯き加減になり、感慨に浸る藤代。

 

 

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会長の挨拶が終わり、アナウンスは次に移る。
「続きまして文部科学大臣、加賀美博正様よりお言葉を頂きます。」

 

登壇した加賀美大臣が話し出す。
「えー本日は報道の方が随分と多い様ですが学生の皆さん気になさらず。君たちはこれからの日本の礎です。」

 

カメラのシャッターを切る音が響く。

 

北島は会場の入口付近に立ち加賀美大臣を見守っている。

 

「すげーナマ大臣だよ はじめて見た!」
典子が隣の清野に話しかける。
「やっぱオショクとかしてんのかな。」

 

清野は、怖そうだね、と答える。

 

 

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響と加賀美大臣のせめぎ合い

挨拶が終わり、表彰が始まる。
「最優秀文部科学大臣賞神奈川県立北瀬戸高等学校、鮎喰響さん。」

 

「はい。」
返事をしてからゆっくりと立ち上がり、壇上へと向かう響。

 

会長はその堂々たる姿を目の当たりにして少々困惑する。
(芥川・直木記者会見の時の様に身を隠すこともしない。バレてないと思ってるのか…?)

 

響が加賀美大臣の前に立ったのを確認し、加賀美大臣が表彰を始める。
「賞状 神奈川県立北瀬戸高等学校鮎喰響殿。あなたの作品は全国高等学校文化連盟第54回文芸コンクールにおいて優秀であると認められました。」

 

会長は、今日の式典が無事に終わればそれでいい、と目を閉じる。
今日は最優秀の響のためだけの式ではなく、受賞者82名、応募者5000名の学生の為の式典だ、と自らに言い聞かせていた。

 

 

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「おめでとうございます。」
加賀美大臣は賞状を持った両手を響に向けて伸ばす。

 

「さっきの会話の録音データを頂戴。」
響は右手を加賀美大臣に突き出して、さらっと言い放つ。

 

賞状を持ったまま固まる加賀美大臣。

 

その頃、壇上の様子を見ていたリカは、さて、と席を立つ。

 

加賀美大臣は困惑した様子で響を見つめていた。
「……何の話です?」
ようやく一言返すのみ。

 

響はさきほどと全く表情を変えずに右手を加賀美大臣に向けて伸ばしている。

 

加賀美大臣の傍らには、賞状を渡した後、続けて響に渡す大賞の盾を持った女性が待機している。

 

 

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何のことかわからないな、と加賀美大臣。
「話があるようでしたら後で聞きます。とりあえず賞状と盾を受け取って下さい。」
困惑しつつも式の進行を促そうとする。

 

「うやむやにされたくない。」
一切退かない響。
「今、この場で録音データを渡して。」

 

「え……と?」
盾を持って控えていた女性が呟く。

 

報道陣も響が賞状を受け取ろうとしない様子に違和感を覚え始めていた。

 

「鮎喰さん!」
加賀美大臣は少々イラついた様子で響に呼びかける。

 

しかし響は全く動じる事無く、それどころか加賀美大臣を睨みつける。

 

響の強硬な態度を受け、加賀美大臣は壇上の机から離れ始める。

 

 

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リカ動く

「なに? 机から離れた?」
不思議そうに壇上を見ている女性記者。

 

「今なんか話してなかった?」
隣のカメラマンはそう言いながらカメラのシャッターを切っている。

 

加賀美大臣は響の隣まで移動し、再び賞状を渡そうとしていた。

 

「ああなるほど、机を挟んでじゃなく生徒さんと同じ立場から渡したいってことね。」
加賀美大臣の意図を汲み取った女性記者は、納得した様子でメモを取り始める。

 

カメラマンも、悪くない絵だな、と好印象を持った様子で呟く。
「文部科学大臣としては最後のイベントだろうし、加賀美さんも感慨深いんだろ。」

 

壇上では響と加賀美大臣のせめぎ合いが続いていた。

 

「録音データ? 本当にわからない。」
誰から何を聞いたんだ? と加賀美大臣は響に問いかける。

 

「さっさと返して。」
響の態度は変わらない。

 

 

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加賀美大臣は、今は式典の途中、話なら後で聞く、と響を見つめる。
「これ以上は騒動になる。君も困るだろう。」

 

「交渉する気はない。黙ってデータを渡して。」
響は一歩も退かない。

 

(……このガキ。)
加賀美大臣は言葉を失う。

 

(…一体何が?)
壇上の様子を見つめていた北島も異変に気付いていた。

 

「今、響ちゃんはさっきあなた達が録ってた録音データを消せって言ってるの。」
北島の隣に立ち、壇上を見ながら口にするリカ。

 

君は? と北島に問われ、リカは響の友達だと答え、大臣が響との会話を録音していたことを知っていると続ける。
「あなたがデータを持ってるなら頂戴。渡すまであの子はあそこを動かないよ。」

 

北島はリカを見つめる。

 

 

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壇上では依然、響と加賀美大臣が無言で睨み合う。

 

「……何を言ってるのかわからない。」

「いいの?」
北島の言葉に若干慌てた様子を見せるリカ。
「このままじゃ騒動になっちゃうよ? マズくない?」

 

北島は、全ての決断は先生が下す、と動じない。
「あの人は総理になるお方だ。」
そう言って目を伏せる。

 

リカは覚悟を決めた様子の北島をじっと見つめていた。

 

 

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詰み状態

報道陣が壇上の動きに注目している。

 

「今、この場で君の正体が『響』であることを公表する。」

壇上の加賀美大臣が響に告げる。

 

止めなさい、と響。

 

加賀美大臣は交渉の余地が無いなら仕方ない、と悪びれずに言い、続けて、妙な真似はしないようにと釘を刺す。
そして芥川・直木の記者会見とは違い、既に報道陣によって素顔を撮影されていることを説明する。

 

一向に賞状を受け取らない様子を見て、女性記者は、何か話し込んでる、と呟く。

 

小説の感想でも話しているのか、と呑気なカメラマン。

 

加賀美大臣は響に次期内閣総理大臣の公式な初仕事として、SPをつけて今後の生活を保証すると響に迫っていた。
さらに文化連の面々にはとっくに響が『響』であるとバレており、受賞作の『11月誰そ彼』が筆者、学校名を併記の上で本となって全国の高校に配布、ホームページにも載るのだと付け加える。
「俺が今言わなくてももう手遅れだ。」

 

コンクールに応募した時点で世間にバレるのは時間の問題だった、とダメ押しをする加賀美大臣。

 

響は何も言葉を返すことなく、加賀美大臣を見ている。

 

加賀美大臣は机に賞状を置くと、代わりにマイクを持つ。
「後悔はあとで、今は腹を決めろ。」

 

目を伏せる響。

 

 

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”運動”開始

加賀美大臣は響の肩に手を添え、表彰式の出席者たちに正対させる。

 

賞状おいてマイク手に取った? とカメラマン。

 

「ちょっと待って、何か余興とか予定あった?」
女性記者が呟く。

 

「学生に向けての言葉とかじゃ?」
別のカメラマンが女性記者の質問に答える。

 

「?」
壇上の様子を不思議そうに見つめる藤代。

 

「何か…予定ありましたっけ?」
隣の委員に問われた会長は、いや、と答えるのみ。

 

典子は呑気にスマホで響の写真を撮ろうとしている。

 

固唾を飲んで壇上の動きを注視するリカと北島。

 

「えー…皆さんに一つ発表があります。」
加賀美大臣がマイクを通じて会場全体に呼びかける。

 

次の瞬間、響が加賀美大臣の顔面に拳を突き上げる。

 

会場の時間が停止する。

 

「100回言わなきゃわかんないの?」
響は、ハア、とため息をついてみせる。
「データ。」

 

転んだ加賀美大臣を見下ろしながら、響は再び右手を伸ばす。

 

 

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感想

加賀美大臣一世一代の場面

大臣殴っちゃった。
やはり”運動”することになったわけだ(笑)。

 

普通の人間なら響のような態度を取られたら堪らず言うとおりにしてしまう。
大賞受賞者の表彰という、最も注目が集まっている瞬間。ここで式が滞るのは避けたい。

 

しかし登壇して賞状を受け取らない響に簡単に屈しないどころか、逆にその場で響の正体を公表しようとするあたり、加賀美大臣も大概だな。
9巻の巻末に収録されている特別編では、目上の政治家に対して正面切って喧嘩を売る剛腕っぷりを発揮しているが、おそらくはそれ以外にもこれまで政治の現場であらゆる交渉をこなしてきただけはある。
修羅場をくぐらないと大臣の椅子はおろか、総裁選で総理の座を狙うまでの立場にはのし上がれないわな。

 

ただ、まさか表彰式の最も目立つ場面で殴られるとは思っていなかっただろう。
木蓮新人賞受賞式で田中を背後からパイプイスで殴ったのと同じで、この場面での響の暴力は常人ではまずありえない選択だ。

 

 

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殴っても一切”つい殴ってしまった”という態度は見せない。
それは、響が完全に覚悟して暴力に及んだということ。

 

つい殴ってしまったというシーンはナリサワファームでの子安との初対面の時以外にはないんだよなぁ。
殴る決断をするのも覚悟を決めるのも早過ぎる。

 

そして倒れた加賀美大臣を見下ろしてデータを要求する響の有無を言わせぬ迫力よ(笑)。

 

やはり彼女は異常。今更だけど、傍から見ている分には楽しいが、周りの人は大変だ。

 

果たして加賀美大臣は、響から受けた強烈なボールをどう返すのか。
総裁選で勝つための一押しを響から得ようとしているが、ここでの立ち振る舞いでその勝負の行方が決まると言ってよいと思う。
上手く乗り切れば響の正体を世間に知らしめることなく総裁選で勝てる目もあるんじゃないか。

 

 

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正直自分には全然そのシナリオが思いつかないけど……。

 

9巻巻末のエピソードで加賀美大臣は、派閥の長から、ここで総裁の椅子を譲る代わりに次期総裁になれるよう支援するという安全策を提示された。
しかしその提案を蹴って総裁選での勝利を目指すと宣言。
つまり、ここで総裁になれなければ派閥の長に喧嘩を売ってしまった手前、もう加賀美大臣に総裁になれるチャンスは巡ってこない。

 

加賀美大臣は背水の陣を敷いて戦っている。

 

次回、政治家加賀美大臣一世一代の場面に大いに期待だ。

 

 

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リカの役目

響に盗聴のことを伝えていたリカ。

 

多分、北島と一緒に加賀美大臣の控室に向かう響の後を追ったのはリカの独断。ファインプレイだろう。
響にそういう事前工作が出来るとは思えない。

 

もしリカが加賀美大臣の企みを知らなければあれよあれよという間に週刊誌報道を通じて響の正体が晒されていた。

 

正体を知られる事を良しとしない響の望みを叶えるべく奮闘するリカは偉い。

 

そもそも花代子に文芸コンクールに出ないように引継ぎしておけばよかったんだけど、そのミスがあってもなおリカは付き合いが良い。

 

大概のことは出来てしまう”天才”リカからしたら、全く思い通りにならず、いつも予想の斜め上の展開ばかりの響との時間は貴重で、正直それを楽しんでいる面もあるんじゃないかな。

 

何より大切なのは、リカが響の良い先輩であり友人であることだけど。

 

 

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いよいよ響の正体が露見するのか?

そして何より気になるのは、この展開から響が自分の正体を守り切ることが出来るのかということだ。

 

仮に加賀美大臣が折れて響の正体を壇上で発表することなく録音データも渡したとする。
しかし、文学に親しんだ人間であれば『お伽の庭』の文体を想起させる『11月誰そ彼』が本として世に出ることは確定済み。

 

加えて、何よりも大きいと思うのは表彰式を取材している多くのマスコミの存在だ。
正直、響が自身の正体を隠すために一番重要だったのは自身の姿をマスコミに記録されるのを防ぐことだったのではないか。
マスコミの撮影した写真や映像が残る。
そして『11月誰そ彼』を読んだ鮎喰響が芥川直木W受賞の『響』だという可能性に気付く者が現れて、検証が行われるようになるのではないか。

 

『11月誰そ彼』の出版とマスコミによる記録に対して響やリカが何か対策を用意しているのかな……。

 

壇上で加賀美大臣が響に告げた通り、コンクールに出た時点で詰んでるんじゃないのか。

 

果たして響の正体は守られるのかどうか。次回に期待。

 

以上、響 小説家になる方法第80話のネタバレを含む感想と考察でした。

 

第81話に続きます。

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2 件のコメント

  • 加賀美大臣「総裁選に向けて気合を入れてもらった。私からお願いした」
    とかですかねー。

    これで総裁に選ばれたとしたら、響に感謝しなければいけませんね。

    • 面白いですね!
      確かに加賀美大臣からしたらその方向性でしかこの場を乗り切れないんじゃないでしょうか。
      とりあえず響の要求は受け入れざるを得ないんじゃないかな。

      でも加賀美大臣の口から公表されなくても、今回の響の行動と名前、年齢などから『響』と結び付けて考える人間がマスコミにも出てきてもおかしくない状況だと思います。

      果たして響が正体を隠し通せるか。
      そして加賀美大臣がこの場をどう乗り切るのか。

      さつさんの仰る通り、加賀美大臣にとっては結果的にうまいこといって総裁になる可能性はあると思うので楽しみです。

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