零落(浅野いにお)の最新第3話ネタバレ感想と考察。状況が好転しない深澤の逃避先はやはりちふゆだった。

第3話
零落 第3話 ちふゆと深澤

零落 第2話のおさらい

シャワーを浴び、今後は仕事場で寝泊まりすると自宅を後にしようとする深澤にのぞみが離婚するつもりはないと言う。

出がけに漫画が売れないことを私に当たられても困る、と言われた深澤。
仕事場で寝ていると編集から電話があり、深澤はまだ次の連載のアイデアが出来ていないことを電話口で謝る。

煮詰まって街に出るも女子高生を眺めているだけ。そしてただ時間が過ぎていく。
零落 第2話 深澤
深澤はアシスタント二人に連載が開始するまで事務所を解散すると伝える。

女アシスタントの冨田は深澤の見通しの甘さを激しく詰る。
来月の給与を渡すのと友達に説明するとただただ平謝りの深澤。

深澤は冨田に、仕事をなめるなと言われてしまう。
零落 第2話 冨田
二人が帰ったあと、パソコンでエゴサーチをしている深澤は、目に留まった自身への酷い中傷の言葉に思わずパソコンを放り投げる。

壊れたパソコンを家電量販店で診てもらうも、買った方がいいという助言通りパソコンを購入し、その帰りにゆんぼに出会おうと無料相談所に行く。

ゆんぼはいないが、他の女の子を提案された深澤はなるべく細い子で、とリクエストする。

ホテルで待つ深澤の元に現れたのは猫顔の女の子。
零落 第2話 ちふゆ
深澤の心を一瞬で捉えたその女の子は静かに微笑をたたえ、深澤を包み込むのだった。

前回、零落第2話の詳細は以下をクリックしてくださいね。

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零落 第3話のネタバレ感想

世の中から少しずつ排除されていく感じ

新宿の街を歩く深澤。

深澤は「マンガのススメ21!!」と題された雑誌を手にしている。
目の前には「マンガのススメ21!!」編集部塚田とライターのくぅ~太郎を名乗る男が二人。
零落 第3話 塚田とくぅ~太郎
10年の連載おつかれさまでした、と切り出す塚田。
さよならサンセットの最終巻が月刊ランキングで30位に入った感想を深澤に求める。

30位ですか、と無表情な深澤。

SNSでも話題になっていました、という言葉にも、一部の人たちの盛り上がりであって、部数に返ってこない、という深澤。

くぅ~太郎が質問する。
「先生はデビュー時から若者の悩みや葛藤をお洒落に描くことで熱狂的なファンを獲得してきた訳ですよね?」
「批判が著者の耳に入る機会も多いこのご時世、それでも描き続けるその溢れるマンガ愛は何が源になっているんでしょうか?」

くぅ~太郎を見たまま、マンガ愛? と呟く深澤。

塚田とくぅ~太郎が無表情で深澤をじっとみている。
零落 第3話 塚田とくぅ~太郎
「漫画家だからって漫画を愛している前提で話すの、やめてもらえませんか?」
零落 第3話 深澤
何も反応しない、できない塚田とくぅ~太郎。
零落 第3話 塚田とくぅ~太郎
街頭を歩く深澤を編集者。

すみません、うまく話せなくてと謝る深澤。

いつも通り聞き応えのある話でしたよ、と編集者。

「さっきの人たち、僕のこと馬鹿にしてましたよね?」
「あのライターって人も……ネットレビュー斜め読みしただけみたいな質問…」

いやァー…、それはそうかもしれないですけど、と手を後頭部に当てる編集者。
「あの程度のライター寄こすなって言っておきましょうか?」

いやそれは、所詮30位ってことなんでしょうから、と制する深澤。
「徳丸さん、このあともしよかったらどこか喫茶店で次回作の打ち合わせとか…」

あーすみません! 他の作家との打ち合わせがあると断る徳丸。
今連載している担当で手一杯なので今後の打ち合わせは僕の都合のいい時に編集部まで来て、と深澤に言う。

あ……、そうですか、と深澤。

深澤は一人新宿の街を歩き、いつもの風俗に向かう。

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ちふゆを指名する深澤

前回会ったちふゆを指名した深澤。

「…何してるの?」
事を終えて、ちふゆに話しかける。
零落 第3話 ちふゆ
「映画を見るときはこうやって字幕を隠すの。」
ちふゆは口の前で掌をテレビに向けて手をかざしている。

英語の勉強? という深澤に、そう、と返すちふゆ。

「それで内容頭に入ってくるの?」

「重要そうな場面は普通に字幕見るよ。」
いざ見ても大したことはいってない、と付け加えるちふゆ。

「英米文学部だもんね…俺は全く英語できないからたいしたもんだ……」

そう? と振り返ってベッドの上の服を取るちふゆ。
「じゃあ私の学部の人たちはみんなすごいのかしら?」
「みんな毎日勉強しないで遊んでるけど。」
ちふゆが深澤を見る
「私もGWに友達とイタリア行ってくるの。」

そう、と返す深澤。

あなたは? 仕事休みあるの? とちふゆがベッドから立ち上がる。
「あなたの仕事の話は聞かない方がいい?」

えーと、と少し考えて深澤は、宇宙飛行士、と答える。

ふふっ、と笑ってちふゆが深澤を見る。
「やめてよ 冗談ならもっと面白くして?」
零落 第3話 ちふゆ
ちふゆから視線を外す深澤。

中毒性のある奇妙な歌と、ナレーションが響く。
深澤は牛丼屋で他の一人客とカウンター席に並んで座り、食事を済ませていた。

仕事場に戻って紙に次回作の構想を書き殴っていた深澤は徳丸に電話をしていた。

「ネットのいいなりみたいな作品を作り続けたらいつか業界全体が落ちぶれます…」
「…徳丸さん。作り手側の人間が表現の先細りに加担して本当にいいんですか…?」

チャイムが鳴る。

電話を切り上げて玄関に出て行くと、いたのは冨田だった。

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ハラスメント

浮かない表情で黙っている冨田。

何か忘れ物? 入ったら? と声をかける深澤。
零落 第3話 深澤と冨田
「やっぱり……私、全然納得いかないんで…」

冨田の言葉に深澤は、悪かった、と言いつつ、余分なスタッフ代受け取っているし、と話を切り上げようとする。

じゃあお金は返しますよ、という冨田。
「金、金、金って……金の話はどうでもいいんですよ!!」
冨田の語気が強くなる。

「私はそういう身勝手で横柄な態度に納得がいかないんです…」
「5年間ずっと不快でした。」
トイレの音が丸聞こえなのも、煙草の煙がこもってるのも嫌だったという冨田。
零落 第3話 冨田
その時に言ってくれないと、今更言われても、と返す深澤。

「立場上私が言えたと思いますか?」
険しい表情の冨田。

「…いや、それはまあそうなんだろうけど…!!」

「自分がハラスメント行為をしていたことを認めてください。」

「あのさぁ冨田ちゃん…」

「…深澤さん。ハラスメントを認めてください。」

「認めねえよ。」
零落 第3話 深澤
深澤を見る冨田の表情が諦めで脱力する。

「もういいかな? …俺も忙しいんだ。そろそろ帰ってくれる?」

玄関に向かう冨田。
「…まあ。そういう感じなんでしょうね……」

深澤は冨田の背中をじっと睨む。

玄関のドアを開く冨田。
「友達に優秀な弁護士がいるんで、この件は今後その方に一任します…」
零落 第3話 冨田
「…そう」
立って冨田を見送る
「好きにすれば?」

冨田が帰ったあと、雨が降り始める。

深澤は仕事机の前に置いたソファの上でただただじっと座っている。

夜になって母から電話がかかってくる。

父が骨折したという話から、嫁は元気か、と深澤の近況を伺う母。

元気だし、変わりもない、俺も忙しい、と答える深澤。
仕事中だから、と電話を切る。

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ちふゆに癒しを求める

深澤はまたちふゆを呼んでいた。
零落 第3話 ちふゆ
あなたが来るならお土産持ってくればよかった、と鞄を下ろすちふゆ。

イタリアは楽しかった、景色はどこも美しかった、というちふゆに、それはよかったと返す深澤。

「でも外国人でも楽しい人は楽しかったし、つまらない人はつまらなかった」
苦手なイタリア語頑張ったのに、というちふゆ。
「言葉っていつも期待はずれね。」

ちふゆの話を聞いて、知らない方が良い事もあるってことかな、とつぶやく深澤。

あなたはGW何してた? と問われた深澤。
少し口ごもりながらも、適当に楽しくぶらぶらと、と答える。

深澤に寄り添うちふゆ。
「いいわね きままで。」

ちふゆを見つめる深澤。
零落 第3話 ちふゆと深澤
キスをする二人。

一緒にお風呂に入っている二人。

「つまらないのよ。」
ちふゆが語り始める。

周りは流行りを追いかけるだけ、もっと自分の感性があるはずなのに、と浴槽で深澤に背を預けているちふゆ。
「もっと好きなように生きられたらいいのにね。」

そうだね、と同意して、でも君は自由そうに見えるよ、という深澤。

ちふゆは、そんなことない、私だっていつも不自由と答える。
「人は本来自由なはずなのに勝手に自分を縛り付けてる。」
「でも縛られてるから私は私。あなたはあなたなのよね。」

深澤はちふゆの言葉に、どういう意味? と問う。

別に大した意味はないから詮索しないで、とちふゆ。
「言葉の意味はあなたが勝手に決めて?」
零落 第3話 ちふゆ
「字幕のない映画と一緒。勝手に想像してくれた方があなたにとって面白いものになるわ。」

ホテルから出ようとしている二人。

深澤がちふゆに、君は何者なの? と問いかける。

「あなただって大概掴みどころないわよ。」
「私がわかるのはあなたが宇宙飛行士じゃないって事だけ。」

エレベーターを待つ二人。
また会える? というちふゆに、、うん、でも予約とり辛い、と返す深澤。

「そう? じゃあ頑張って?」
口元に微笑を湛えたちふゆ。

横目で見つめる深澤は、ちふゆの頭を抱く
エレベーターが到着し、ドアが開くが乗り込まずにその場に立っている二人。
零落 第3話 ちふゆと深澤
外に出た二人。

ちふゆが深澤に名前を問いかける。

君が好きに決めたらいいと思うよ、と深澤。

そうね、と微笑を浮かべているちふゆ。
「あなたはあなた。」

深澤は街頭を遠ざかっていくちふゆをいつまでも見つめていた。
零落 第3話 ちふゆと深澤

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感想

マンガ雑誌のライターたちから馬鹿にされたと思い、編集からも若干軽んじた扱われ方をされる深澤。

マンガ雑誌のライターや編集がそこまで深澤を馬鹿にしているとは自分は思えなかった……。

深澤の被害妄想じゃないかなと思った自分が鈍いのか。

あと、深澤に打ち合わせのために喫茶店に誘われた編集者が忙しくて断ったのも、連載していない作家よりも他の連載作家に割く時間を優先するのは当然といえば当然だなと思った。

冨田が弁護士を使うまでに深澤を恨んでいたというのは怖い話だなぁと思った。

トイレの音にしたって、たばこの煙にしたって深澤の言うとおりその場で指摘してくれないとわからないだろうに……。

冨田は割とズケズケ言いそうな気がしていたのに、ずっと我慢してたのか。

女性と働く場合、にぶちんな自分はこういうのが怖いわ~。

「ハラスメント行為を認めてください」なんて詰められ方怖すぎ。
認めたらいくらとられるんだ? というか、これ深澤の有責になるの?

別にどっちも冨田に嫌がらせのつもりでしてたわけじゃないだろう。
お尻触ったとか肉体関係迫ったとかそういうんじゃないだろう。

もちろん身体触ったりしなかったらそれでいいってわけではないんだろうけど、たばことトイレの件でハラスメントだと訴えるのはひどくないか?

冨田の深澤評である「自分勝手で横柄」というのは要するにコミュニケーションが足りなかったということだと思う。

そのために出不快な状況にひたすら我慢し続けてきた自負のある冨田が爆発したのか。

冨田と一緒に働いていた男性アシスタントは他に働き口があるのもあり、特に何も問題なく深澤の元から去っている。

冨田に対するコミュニケーションが足りないのか、女性には我慢できない環境だったのか、冨田がメンヘラなだけなのか。

とりあえず深澤は離婚、次の連載、マンガへの意欲低下に加えて、またひとつ、今度はセクハラ問題を抱えてしまった。

しかし相談できる相手もいない。

唯一の逃げ場になっているのがちふゆとの時間なんだろう。

ちふゆと一緒にいる時の何物でもない深澤は無表情だけど、明らかに日常のしがらみから解放されたちふゆとの束の間の時間を楽しんでいるのがわかる。

これから深澤はどうなっていくのだろう。
次の連載のためのアイデアメモには世間のニーズを萌えだと捉えて次回作に取り入れようか悩んでいる形跡がある。

しかし徳丸に電話したように、自分の作り手としてのプライドが許さないのだろう。

作り手として、自分が良いと思ったものを世に出すのか、それとも世の中が良いと思っているものを世に出すのかという命題の元、苦しんでいるのではないか。

以上、零落第3話のネタバレ感想と考察でした。

次回、零落第4話の詳細は以下をクリックしてくださいね。

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