第361話 辞退
目次
第360話までのおさらい
天空闘技場でフロアマスターをかけてヒソカとクロロが激突。
クロロがスキルハンター(盗賊の極意)で新たに身につけたシャルナークのブラックボイス(携帯する他人の運命)やコルトピのギャラリーフェイク(神の左手悪魔の右手)、流星街の長老から盗んだサンアンドムーン(番いの破壊者)をはじめ、ダブルフェイス(栞のテーマ)、オーダースタンプ(人間の証明)、コンバートハンズ(転校生)といった新能力を駆使する。
そしてヒソカはそれらを以って繰り出される戦術の読み、激闘の末、試合はクロロが勝利しヒソカは死亡。
しかしマチが死んだヒソカをせめてキレイにしてやろうと、クロロとの激闘によって負ったヒソカの傷を縫合。すると、ヒソカのバンジーガムが発動し、心臓マッサージによってヒソカが生き返る。
旅団全員を殺すとマチに宣言したヒソカは、マチを、バンジーガムで拘束。
その後、その言葉通り、コルトピとシャルナークを殺害する。
暗黒大陸へ向かい、大量の人を乗せて海を航行する巨大船ビッグホエール号。
拘束したビヨンドと一緒に暗黒大陸を目指す12支んたちと、その一員としてクラピカ、そしてその仲間たち船に乗り込んでいた。
実は、皇位継承のバトルロイヤルという側面を持っていた暗黒大陸への旅は、時間経過とともに徐々に不穏さを増していく。
ワブルの従者として乗船しているクラピカは他の従者がどんどん殺されていくのを不審に思い、生き残っている他の従者を問い質す。
すると先に殺された5人の従者と、クラピカが尋問する2人は上位王子の母親によるスパイだったことが判明。
ビッグホエール号の内部で行われる王子たちによるただ一人の生き残り――皇位継承をかけたバトルロイヤルは、さながら蟲毒の如き様相を呈していくのだった。
第361話
念獣に操作されるサイールド
サイールドがナイフを片手にクラピカに飛びかかる。
クラピカは鎖を発動し、サイールドのナイフを持つ手首に絡めて胸を押して床に押し倒して制圧する。
傍にいるビルに継承戦から免れるための3つの選択肢の実現について、サイールドの力が必要かと問いかける。
ビルは既にやられてしまったカートンの能力、最大5人乗せる船、もしくは車に変身するジョイント型の具現化系能力だったと答える。
クラピカはサイールドに能力と系統を尋ねる。
サイールドは「ヒマだったから」「頼まれたから」と繰り返すのみ。
クラピカは無言でビルの顔に視線を投じ、答えの代行を促す。
ビルはサイールドの了承を得ずには答えられないと断る。
クラピカはビルに王と王妃の安全を守る言葉は偽りなのか、と緊急事態を脱する為に必要なことを説く。
観念したビルは放出系であり球体型の念を飛ばして捕まえた虫を操るという操作系寄りの能力だと答える。
クラピカは了解し、使えるかもしれない、と右手人差し指の鎖を発動。
鎖の先には注射器がつながっている。
クラピカ、念の師匠イズナビとの回想
「1つは残しておけ」
クラピカがイズナビからレクチャーを受けている。
髪が伸びているクラピカが何故かとイズナビに問う。
イズナビはクラピカの鎖の指ごとに能力を使い分けるアイディアには賛成するものの、その全てを「一人で戦い抜く為」だけに使用することに懸念を示す。
何が悪いのかと問うクラピカに、念の戦闘は必ずしも1対1とは限らず、連携での攻撃はしばしば個人の能力を上回る為だと説明する。
戦ってみればわかるが、それだとわかった時には手遅れだから、と続ける。
ただ、クラピカがそれでは納得しないだろうから折衷案として、実際に戦ってみて足りないと実感したものを補う能力にすることを進める。
「目的を誤るなよ?」
じっとクラピカを見つめるイズナビ。
クラピカのことを、自分の思い通りにやれれば失敗しても良いという訳ではなく、あらゆるものを二の次にしてでも目的達成を最優先したい人間だと言うイズナビ。
幻影旅団のようなA級首の集団と戦争する気なら一人でやることにこだわらず、仲間を募れ、と続ける。
クラピカは、それは都合のいい捨て駒を集めろと言うことなのかと問う。
イアズビは笑みを浮かべながら、そうはならない、と答える。
「それも仲間と共に闘えばわかる」
奪う人差し指の鎖(スチールチェーン)
回想を終え、確かにイズナビの言う通りだったと思うクラピカ。
(シンプルに事が進む程簡単ではなかった)
(だが…!)
(それでも…!!)
(だからこそ!!)
一人で戦い抜く力が欲しい、と強く欲するクラピカ。
その脳裏にゴン、キルア、レオリオやワブル王子の顔が去来する。
(奪う人差し指の鎖!!(スチールチェーン))
クラピカの人差し指の鎖の先についている注射針がサイールドの鳩尾辺りに刺さり、オーラを吸い上げる。
その光景を見て戸惑い、何をしているのかと問いかけるビル。
クラピカは、一時的にサイールドの能力を預かる、と端的に答え、注射器でオーラを吸い続けると”絶”と同じ状態に出来ると続ける。
念獣がオーラを必要とする寄生型なら、サイールドを操る敵もまた寄生型かもしれないと言う仮説の元、餌となるオーラの枯渇で追い出せないかと言うクラピカ。
ビルは、敵が出て行かなかった場合、絶の状態で悪意ある念に晒され続ける事でサイールドの心身が壊れると指摘。
「王妃と王子の安全が最優先…!!」
最優先事項を確認するように唱えるクラピカ。
ビルの危惧が現実化した場合それを基に次の対策を立てられる、と続け、ビルに覚悟を促す。
「もしもこの後私が先にやられたらそれを君が考えるんだぞ? ビル…!!」
絶句するビル。
クラピカは、ビルがサイールドと同様の状態になったら新しい情報を得る為に同じことをすると宣言。
サイールドの左耳から念が発生する。
すかさず凝で念の正体を見るクラピカ。
顔が鼠で胴体が蜘蛛のような小型の念獣がサイールドの耳から這い出てきている。
素早くサイールドから逃げる念獣をクラピカは目で追う。
(人差し指の”絶対時間(エンペラータイム)”!!)
具現化したイルカ
注射器の表面に刻印された十字架に絡まるイルカからオーラが発生する。
表面に幾何学模様がある、ヒレの先に注射器がついたイルカが具現化する。
「奪った能力をセット!!」
サイールドを操る小型の念獣は、通風口に逃げ込もうとしている。
クラピカの人差し指の注射器がピストンされる。
「セット完了!! 解析します!」
具現化されたイルカが発声する。
「奪ったのは能力名”裏窓(リトルアイ)”」
小動物をボール型の念で捕まえてそれを操る能力だが、念で具現化された生き物はできないと説明は続く。
(敵の能力を逆操作するものではなかったか…)
念獣を操る事ができない。サイールドを操っていた蜘蛛型の小型の念獣は通風口から逃げていた。
小型の念獣について考察するクラピカ。
「ヒマ」と言うキーワードをきっかけに人を操る能力。
ただし「念獣の声が聞こえる事」が発動条件である場合、念能力者以外には効かない?
具現化したクラピカのイルカは”裏窓”の対象となる小動物を探せとクラピカに呼びかける。
能力を発動してイルカを解除しない限り、”絶対時間”は強制的に続く、と説明を続ける。
”絶対時間”が発動している間は、とさらに説明が続くのを「わかってる」とクラピカが遮り、しばらく待機するよう命じる。
イルカは「了解」と待機する。
クラピカはビルを呼び、大丈夫だとは思うがと前置きして、サイールドを椅子に拘束するよう命じる。
後をクラピカに託したサイールド
椅子に拘束されたサイールドが念獣に取り憑かれた状況を説明する。
でかいヌイグルミのような念獣と話した後、小さい念獣がまとわりついて「ヒマか?」とずっと問いかけていた。
念獣を見聞きしているのは自分だけで、能力者であるはずのカートンには見えていなかった。
サイールドは何度もヒマではないと言い続けるが、根負けして、今ならヒマだと答える。
その瞬間、体が自由に動かなくなったと振り返る。
部屋から死体が運び出されていくのを見送るビル。
死体を撤収回収するカキン軍の兵士は、クラピカ達に殺害犯の引き渡しを要求。
ビルはクラピカに呼びかける。
サイールドはクラピカに自分の能力がどうなっているかを問う。
クラピカは、まだこの中だ、と人差し指の注射器を見せる。
サイールドは、クラピカがずっと持っててくれて、と言うが、クラピカは、一度使ったら本人に能力が戻る縛りだと説明する。
サイールドは”裏窓”について説明する。
最大でハムスターくらいの大きまでの実際の動物を操れる能力。
操っている動物が見聞きした情報を離れた場所にいても入手できる。
ハエや蚊だと目立たなくて良いが、天敵にやられたり殺虫剤で死ぬ事もよくある。
すばしっこい生き物はサイールドでさえ捕まえ損ねる事がある。
クラピカの能力の1回分が、捕獲失敗でも消費されてしまうかもしれない。
「上手く使ってくれ」
カキン軍に連行されていくサイールド。
「そいつで真犯人を見つけてくれよ」
王妃と王子の側女の二人がクラピカに声をかける。
殺人が続く恐怖に耐えられず、軍に拘束されても構わないからやめさせて欲しいと続ける。
ブラックホエール号が出航して2時間でオイト王妃、ワブル王子の陣営にいた11人の警護はクラピカとビルの2人と二人の側女だけとなってしまう。
ビルとの先ほどの会話を再開するクラピカ。
クラピカは、残りの二つの方法は既に死んでしまったカートンがいなくても可能なのかと問う。
肯定するビルは、だが、と説明を続ける。
・1つはパリストンの協力が必要で難易度が高い。
・1つはビヨンドの協力が必要でさらに難易度が高い。
サイールドを操作していたのはモモゼの念獣
王子居住エリア12区。
モモゼ王子の警護を6人の警護兵で良いと言う王妃。
怖がるマラヤーム王子を安心させたいと母のゼヴァンチ王妃がモモゼから警護兵を引き剥がし、マラヤーム王子につける。
「マラヤームの警護の方が重要だから!! 早く来て!」
マラヤーム王子の頭に手を置きながら、少し離れた所に座るモモゼの耳に入ることを全く気にせず言い放つセヴァンチ王妃。
(いいのか? 本人に聞こえてるぞ?)
ヒヤヒヤするハンゾウ。
他の警護人がモモゼ王子との契約があるとセヴァンチ王妃を諫めようとするが、セヴァンチ王妃の態度は一向に変わらず、マラヤーム王子の為に私が契約した、お金は払うとピシャリと言い返す。
側用人らしき男も自分も移動してよいかをセヴァンチ王妃に尋ねる。
セヴァンチ王妃は即肯定し、モモゼに話しかける。
「モモゼは自分の世話は自分で出来るわよねー?」
はい、お母さま、心配いりませんわ、と微笑を浮かべて答えるモモゼ王子。
モモゼ王子は、座って編み物をしているモモゼの側で直立している警護人にもマラヤーム王子の元へ行くように促す。
二人の警護人は任務だと言いその場を離れようとしない。
そうですかご苦労様、と編み物をする手元から目を離すことのないモモゼ王子。
(お母様 マラヤーム お可哀想に)
何をしたわけでもないのに疲れを覚えているモモゼ王子の背後にサイールドを操作した念獣がモモゼ王子に背を向けるように座っている。
(王の器ではない者はあんなにも怯え周章くのですね…)
警護に残った二人はモモゼ王子の食事をどうするかを視線でやりとりする。
調理師免許を持っているという片方の警護人が豪華な食事を作ってみせる。
ハルケンブルグの決意
大勢の人で賑わうセレモニーの会場。
ハルケンブルグ王子に退席の時間だと声をかける部下らしきスーツを着た低身長の男。
それを受けて、ハルケンブルグ王子は、会話していた目の前の人物と握手を交わし、失礼しますと挨拶をして歩き出す。
低身長の男が、ハルケンブルグ様? と声をかけると、父上に挨拶するだけだと言うハルケンブルグ王子。
カキン王がハルケンブルグ王子が近づいてくるのに気づく。
座っているカキン王が、隣に立つ男に、息子が秘密の相談らしいと言ってやんわりと会話を打ち切る。
男は、また改めて投資の相談を、と離れていく。
どうしたホイな? とハルケンブルグ王子に問うカキン王。
「僕は継承戦を辞退するよ」
ハルケンブルグ王子は真正面からカキン王を見据えて堂々と宣言する。
その両肩には、一つ目で山羊のような角を持つ獣の念獣が、猛禽類を思わせる足で鎮座している。
ハルケンブルグ王子は、セレモニーに参加したのは父の顔を立てるためであり、血塗られた王位などいらないと続ける。
「ホッホッホ 好きにするといいホイな」
ハルケンブルグ王子の念獣を見て、カキン王は不敵にほほ笑む。
感想
ついに動き始めた物語。
361話で最も衝撃だったのは、サイールドに使用した奪う人差し指の鎖(スチールチェーン)。
ここまでで人差し指以外は能力が判明していた。
親指……癒す親指の鎖(ホーリーチェーン)
薬指……導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)
中指……束縛する中指の鎖(チェーンジェイル)
小指……律する小指の鎖(ジャッジメントチェーン)
そしてここに、
人差し指……奪う人差し指の鎖(スチールチェーン)
が加わってついに能力が一通り揃ったことになる。
しかし実際は単純に5つの能力、というわけではなく、絶対時間(エンペラータイム)によって奪った能力を使えるようにしたりとまだまだ潜在した能力がありそうで非常に楽しみ。
そして、早速クラピカ達オイト王妃、ワブル王子組に牙を剥いた念獣の存在。
モモゼ王子が宿主だったのか。
ぬいぐるみみたいで仕草やセリフもかなりかわいいが、同じ念能力者でもその存在が見えたり見えなかったりで、一筋縄ではいかないんだろうなぁと思わせる。
サイールドを操っていたネズミの顔を持った蜘蛛のような念獣は多分ぬいぐるみみたいな念獣が生み出した存在なんだろう。
王子たちは念獣の存在を意識出来ないとしても、念獣の行動は、王子の意向が反映されているとすれば、オイト王妃、ワブル王子組の部屋に湧いた無数の念獣=何人かの王子はいち早くワブル王子を狙ったことになる。
実質クラピカしか戦力になっていない現状で、クラピカには悪いけどすごく面白くなってきた(笑)。
ツェリードニヒ王子の緋の目を回収すべくクラピカがその近道となることを期待して警護につく事を望んだハルケンブルグ王子のまさかの継承権放棄宣言。
しかしハルケンブルグ王子のその高潔な想いとは裏腹に念獣はハルケンブルグ王子を強固に守っているように見える。
ブラックホエール号の中はカキン一族による蟲毒の壺と化した。
ワブル王子でさえ退くことを許されない中で、ハルケンブルグ王子がすんなり戦いを放棄するなど出来るわけがない。
他の王子の動向に注目。
以上、ハンターハンター第361話のネタバレ感想と考察でした。
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