第362話 決意
寄生型の念
ビルはクラピカに寄生型の厄介な特徴は「行動が読めない」点だと切り出す。
寄生型は誰かの残留思念が宿主に憑りつき、宿主のオーラを媒介に具現化を果たすものが多い。
宿主の性格、感情の動きが寄生型の念獣に影響を与える。
残留思念と宿主の思いが交錯し、念獣はややこしい存在になる。
ここまで説明を受けてオイト王妃は何やら考え込んでいる。
「王子の性格によって争いに参加しない事も考えられると…?」
オイト王妃に問いかけるクラピカ。
オイト王妃は、争いを好まない王子も何人かいるが、上位5人は自ら退くような性格ではないと答える。
それを受けてクラピカが予感する。
「本当の戦いは全ての王子がセレモニーから戻った後か…!」
ツェリードニヒとツベッパの共闘
セレモニーの会場。
ツェリードニヒ王子(第4王子)に共闘を持ちかけるツベッパ王子(第5王子)。
ツェリードニヒ王子はすぐに返答することなく、単刀直入だね、と感想を言う。
ツベッパ王子は単純明快だから、と共闘を持ちかけた理由を話始める。
タイソン王子(第6王子)、ルズールス王子(第7王子)、サレサレ王子(第8王子)には志が見られず、ハルケンブルグ王子(第9王子)は不参加。
カチョウ(第10王子)以下は幼く武力、政治力に欠ける。
故に実質上位5人でのサバイバルになる。
そして第1~3王子を選択肢から排除したのは、ベンジャミン王子(第1王子)は驕り、カミーラ王子(第2王子)は貪り、チョウライ王子(第3王子)奢侈を尽くす点がツベッパ王子にとって醜悪過ぎて耐えがたかったためだという。
「粛清すべきよ」
「それには頗る同感だね」
黙って聞いていたツェリードニヒ王子は同意し、持っていたグラスをお互い打ち付け合う。
ツベッパ王子は、次の日曜に、とツェリードニヒ王子から離れる。
ああ、と返すツェリードニヒ王子。
(お前が生きてればな……)
守護霊獣を用いた王位継承戦の意義
カキン王は二人の接触を離れた場所から見ていた。
二人の傍らに守護霊獣の姿が確認出来る。
ツベッパ王子の守護霊獣はカエルやカメレオンを思わせる生物をボディにした車のようなデザインの念獣。
ツェリードニヒ王子の守護霊獣は一見、馬のような外見をしているが、長く伸びた頭部は女性の顔をしており、前足は手、後ろ足はハイヒールを履いていて、尻尾は鞭になっている。
①霊獣同士は殺し合わない
②霊獣の憑いた人間を直接攻撃しない
未来の王を守る念獣に必要な自制的本能であり、爪と牙しか持たない獣は遠からず滅びる。
それは人間も同じで、政治・軍事においてはわかりやすい局地的な戦術ではなく、むしろ間接的な工程が重要。
搦め手が見えない将は凡将である。
群雄割拠だった時代に小国のカキンの長が͡壺、そして壺虫卵の儀を生み出し、時刻を器に見立て子供たちに統一を争わせて現在の大国となる礎とした。
守護霊獣を用いた継承戦の意義は、後方支援に長けた念獣をどう使うか、その深謀遠慮の才を測り、長けた者が王になることでカキンが栄えること。
チョウライ王子(第3王子)の守護霊獣は車輪のようなデザインで、中心に目を閉じている顔のような部位が見られる。
カミーラ王子(第2王子)の守護霊獣はイソギンチャクにも似た形状をしており、上部には一つ一つ房状の触手のようなものが中心から外に放射状に垂れ下がっている。
ベンジャミン王子(第一王子)はその両肩に乗ってベンジャミンの肩の辺りに尖った爪を持つ手が垂れ下がっている。
まるで虫を思わせるデザインで、人間ならば頭部に当たる部分は大きく歯を剥いている。
王子達を見つめるカキン王。
(祝福の一人御子となるまで……!!!)
テータとサルコフ
廊下で立って会話しているツェリードニヒ王子の警護を担当しているテータとサルコフ。
テータがサルコフにツェリードニヒ王子に何と説明するかを問う。
「普通の人間には視えない幻獣が徘徊してるから部屋から出るな……でいんじゃね?」
NGワードだらけだとサルコフを注意するテータ。
「普通」は王子には禁句、「視えない」もお前には出来ないというニュアンスからダメ、「幻獣」は好奇心を刺激し、「部屋からでるな」は出ろというのと同じと畳みかける。
サルコフは無理だと白旗を上げ、ツェリードニヒに対する説明をテータに一任する。
テータはその際に念に触れなくてはいけないが、知れば習得を望むと推測する。
念能力者はサルコフとテータの二人だけだから生まれつきで通したら、と軽く言うサルコフ。
テータは暫く黙ってサルコフを見つめる。
何だよ? と反応するサルコフから顔を逸らし、これみよがしに深いため息をつく。
「うらやましい……」
オレでも馬鹿にされてることがわかる、とツッコむサルコフ。
テータは、緊急チャンネルで全王子の護衛全員が「寄生型の念獣」というワードを聞いている以上、ツェリードニヒ王子にその話をしないわけにはいかないと説明する。
サルコフが、生まれつきの能力で押し通せばいい、と最後まで言う前にテータは短く「全王子」と割り込む。
全ての王子が同様の説明をすることはない以上、情報収集に余念がないツェリードニヒが念の正確な意味に気づく。
であれば嘘はバレた際に取り返しがつかないと説明するテータ。
サルコフは、全王子が念能力を欲しがるところまでは避けられないのかと口にする。
そうよ! と勢いよく同意するテータ。
何怒ってんだよ、とのんきなサルコフに、テータは、そこからの話をしたいんだと語気強く言う。
念習得の速度をさじ加減で操作できるんだからとテータにツェリードニヒ王子への念の教育を提案するサルコフ。
「お前が心配してんのは何つーの? 王子の悪のポテンシャルだろ」
「アイツ…あ 失礼 内緒な…に念能力なんか持たせたら一体どうなっちゃうの? ってゆーね」
サルコフは、王子が念能力取得に動くことが避けられないなら率先して念を教えながら、その習得を遅らせて念容量を削るしかないと口にする。
その頃、ツェリードニヒ王子は自室に戻ろうとしていた。
「その話詳しく聞きたいな」
ツェリードニヒ王子は隣を歩く警護人に問いかけ、そして命じる。
「とりあえず護衛全員集めてくれる?」
ツェリードニヒ王子が到着したら、まず念能力が使用出来る人間の確認をする。
その際、テータが手を上げれば自然な流れになると言うサルコフ。
サルコフはイヤホンを通じて集合がかかったことを、早速来たぜ、とテータに報告する。
テータなら上手く修行効率を下げて時間稼ぐなど、上手くやるだろうとテータに向けて気楽に続ける。
「それがベストだとお前が思ってねーのはわかってる。だが現状ではベターだって事もわかってんだろ」
そしてサルコフは、王子が別の誰かに師事するくらいならテータが教育係として少しでも良い方向に誘導することを提案する。
この船でそれが出来るのはテータだけ、保証する、と続けるサルコフ。
「……ズルイわね」
黙って聞いていたテータがようやく口を開く。
それ俺に出来ると思うか? とサルコフに問われ、羨ましい、と深くため息をつくテータ。
「今のは本音が出たろ」
「うるさい!」
サルコフに説かれ、納得はしつつもやはり気が重いテータ。
サルコフの言う通り自分がやらなくてはいけないと考える。
(邪念はより邪悪な念を生む…!)
テータは、他の王子が先に覚えた念でツェリードニヒ王子を攻撃して能力に目覚めることを恐れていた。
(止められるのは私だけ……!!)
覚悟を決めるテータにサルコフが鋭く声をかける。
(テータ見るな……!)
グルル…
唸り声を出している「何か」は涎のようなものを垂らしている。
テータは、その「何か」に目が釘付けになる。
「テータ!!」
必死に呼びかけるサルコフ。
第6~8王子の守護霊獣
ソファにもたれ、足を大きく前に投げ出して守護霊獣の話を聞いているルズールス王子(第7王子)。
一通り納得し、味方だが直接命令は出来ない、と口に出して確認する。
念の習得に関しても、警護人から「視える」ようになるには1年かかると言われ、それでは意味がないとキセルで煙草をふかす。
予定通りツベッパ王子(第5王子)についておく、と続ける。
ルズールスは、継承戦に念能力という概念が入り込んだことで事態は膠着するかもしれないと読み、念についての知識が自分より上の王子とその兵隊に無ければ優位に立てると確認するように語る。
ハンター協会員は交代で自分のそばにいること、と命令するルズールス王子。
他の念獣が姿を見せたら動向を報告するようにと続ける。
バショウも含めた警護人たち3人は「はっ」と返事をする。
タイソン王子(第6王子)の部屋。
警護人のイズナビの説明で、守護霊獣が全ての王子に憑いていることを理解したタイソン王子。
椅子に座ったタイソン王子を中心に、5人の若い男たちがタイソンの腕を揉んだり指にマニキュアを塗ったり、頭をマッサージしたりと思い思いにタイソンに尽くしている。
妙な念獣がタイソン王子やその男たちの頭上に降り注いでいる。
自分の念獣は天使に似ていると思うがどうか? と問うタイソン王子にイズナビは引き気味になりながらも、どちらかというと妖精寄りと答える。
その手があった、確かに妖精の方がっぽい、と一人喜ぶタイソン。
そのタイソン王子の取り巻きの男たちは思い思いに、タイソンを褒める。
タイソン王子を見ている間、イズナビは、タイソンの上から次々に妙な念獣が繁殖している様子をただ黙ってみているだけだった。
(そいつを産んでる…後ろのアレは…一体何だ?)
(きっとアタシの妖精達がこの船を愛で満たすワ…)
サレサレ王子(第8王子)は女が躍っているのを見て上機嫌で笑っている。
「継承戦とかくろくらえ―――――ェェ!!」
サレサレ王子の頭上に浮かぶ守護霊獣は球体。
無数の口から何やら液体をバラまいている。
音楽に合わせて水着で踊る女たちをノリがいいね、褒めるサレサレ王子。
「継承戦とかくそくらえ――ェェ!!」
化け物
驚愕するハルケンブルグ王子。
狼狽する王子の前に黒スーツの警護人たちが皆倒れている場面に遭遇する。
原因が分からず、何なんだこれは、と叫ぶ。
一方テータの前に姿を現したのはツェリードニヒ王子の守護霊獣だった。
涎を垂らし、生気の無い見開いた目でテータを睨む霊獣。
グルル、と低く唸りながら生気のない見開いた目でテータを見る守護霊獣。
テータは目を合わせない。
切り札の登場だと言い、緊急チャンネルを聞いただろ、とツェリードニヒ王子がテータたちに問いかける。
ツェリードニヒ王子は、ネンジュウという言葉事体が分からなかったと言う。
お前らは何かしってるか、とテータ達に問いかけるとツェリードニヒ王子の守護霊獣の口の上あごがバカッと上に開き、口の中にいる人間の「顔」から舌が伸びる。
(私は…甘かった)
禍々しい守護霊獣を見て、テータはほんの少し驚愕を浮かべた表情でツェリードニヒ王子は言葉を失う。
唸り声と共に、まるでカタツムリの触覚ような舌が目の前のテータに伸びていく。
(彼は決して 決して念など会得してはいけない人間………!!)
テータは「ネンジュウ」とは特殊な能力に関係する言葉だとという言葉に素直に答える。
流石テータちゃん、と笑い、その力は使えるのかと問うツェリードニヒ王子。
(私がやるしかない……!!)
「はい 使えます」
守護霊獣とは目を合わせず、その後ろのツェリードニヒ王子を見ながら素直に答える。
以上、ハンターハンター第362話のネタバレ感想と考察でした。
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