映画いぬやしきの感想と評価レビュー。ネタバレ有り無しで分割済み。

いぬやしき映画公式サイト

映画いぬやしきを観に行ってきたので感想と評価やレビューなどを書き残しておく。

 

結論から言えば観に行って良かった。

 

それがなぜなのか、ネタバレ有りと無しでセクションを分けて感想を書き、良かった点や惜しいと思った点を挙げていく。

 

ちなみにいぬやしきがどんな話なのか簡単なあらすじを書くと、家族から疎まれ、会社でも使えない奴呼ばわりされてみじめに生きる定年も近くなってきた男がある事をきっかけにロボット化し生き方を変えていく話だ。

 

なぜ観に行こうと思ったのか。

こんなブログやってるくらいだから漫画原作のドラマや映画は全部チェックしている……と言いたいが、実はそこまで頻繁に劇場に足を運ぶことはない。

 

住んでいるのが田舎なので映画館に行くまでにかなりの労力を使うし、漫画原作の映画が多いと言っても女子高生をターゲットにしたような作品が多いからだ。

 

今回、映画いぬやしきを観に行こうと思ったのはそもそも作品自体が好きであり、TVのCMにあった空中戦や人体型メカのCGを確認したかったという二つの理由のためだった。

 

原作漫画に関して読破済。さらに2017年にノイタミナで放送されたアニメも全て視聴済。
特に漫画に関しては何度か通読しているため、映画視聴中も細かい部分は別にして原作のどの部分を取り上げて、どこを削ったのかはすぐ分かるくらいには原作に通じた状態だった。

 

漫画原作だとファンの怒りを誘発するような実写化作品がちょこちょこあったりする。
しかしいぬやしきに関しては、メガホンをとった佐藤信介監督に関して心配していなかった。
GANTZも脚本はイマイチだった記憶はあるものの映像は満足出来たし、アイアムアヒーローに関しては文句なく面白く、劇場に観に行って良かったからだ。

 

そんなわけで、期待を胸に久々に映画館の椅子に着座したのだった。

 
 

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映画いぬやしきの感想

結論として、面白かった。

 

以下、自分にとって何が良かったのか挙げながら感想をつらつらと書いていく。

 

俳優陣の演技

俳優陣の演技はとても良かったと思う。

 

木梨憲武演技上手いんだなー。元々器用な印象があるし、往年のコントで鍛えられたものでもあるだろう。
今後色々な作品に出演するようになるんじゃないかな。良い役者だと思う。

 

犬屋敷の今にも死にそうな弱弱しさを表現できるのかと思っていたけど、きちんと役になりきっていた。
冒頭で新居の祝いのために密かに用意していた寿司やキャビアを一人寂しく食べているカットを観て、この映画は期待出来ると思った。

 

佐藤健に関しても文句なし。
もう20代も後半じゃなかったっけ? でも違和感なく高校生を演じられるんだな。
それは若々しい容姿ももちろんだけど本人の演技力によるものが大きい。

 

日々、生の実感を得られず簡単に狂気に身を委ねていく様は圧巻だったし、特に母を想って見せる人間としての顔も思わず泣きそうになった。
きちんと原作を読み、素直に解釈して表現したのを感じさせる。

 
 

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獅子神の友人、直行役の本郷奏多はGANTZにも出てたけど彼も高校生として違和感がない。
唯一といってもいい友人の獅子神がロボットと化したことに最初は喜びが勝っているが、段々血も涙もない冷酷な殺戮マシーンだと分かってからの感じている恐怖と戸惑いの演技は良かった。
犬屋敷とのシーンも漫画で見せた、犬屋敷に対する尊敬や友情ともつかない関係性を上手く再現している。

 

二階堂ふみに関しても、彼女の演じた獅子神を匿うしおんは、自分が抱いている二階堂ふみのイメージとは相いれない引っ込み思案の性格だと思うけど(笑)、きちんとしおんになっているのはさすが。
獅子神の前で感情を爆発させるシーンがあるのだが、本当に漫画の通り。再現度が高い。原作を読みこんだのだろうな、と感じる。

 

犬屋敷の娘の麻理を演じた三吉彩花も重要な役どころをきちんとこなした。
日常でことあるごとに思春期の娘らしく犬屋敷を忌み嫌い罵倒するシーンは、娘を持つお父さんにとっては最も恐れる光景だろう。
後半では原作と異なる展開になるが、そこでの麻理の振る舞いは、麻理として違和感を感じられなかった。
彼女の内できちんと犬屋敷麻理という役を消化していなければこの演技は出来ない。

 
 

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犬屋敷の妻を演じる濱田マリはさすがの演技だった。
麻理が犬屋敷を疎んじるのは、実は母の犬屋敷に対する態度の引き写し。
長く夫婦関係を続ける中で犬屋敷に対して積み重なってきた根深い失望感が上手く表現されていた。
というか、リアルでこういう夫婦いるだろうなと思って男として戦慄した(笑)。
脚本は原作と違って犬屋敷への態度が最後まで変わらないのがもったいない。
態度を一変させた後の妻をどう演じてくれたのか見たかった。

 

剛史役の福崎那由他も濱田マリと同様にもったいないポジションの役だった。
イジメられているだけで家庭でもほぼセリフがないながらも剛史の特徴を良く捉えた演技を見せてくれた。
原作ではラストで良いシーンがあるのだが、映画ではそれがないんだよなー。
後半のネタバレ有りの感想の中の、映画いぬやしきの惜しい部分というセクションで剛史に関して取り上げている。

 

斉藤由貴演じる獅子神の母、優子も良かった。
原作と同様に薄幸な感じが良く再現されていた。
息子の晧を第一に考える母の演技に涙ぐんでしまった。
昔はそんなことなかったのに、最近はこういうベタな母子関係に弱いんだよなぁ(笑)。

 
 

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獅子神を追う萩原刑事を演じた伊勢谷友介もそこまで登場シーンが多くは無いものの存在感があったなぁ。
警察は基本的には獅子神にやられまくるが、彼を社会的に追い詰める働きをきちんとこなす。
登場シーンが原作と違ったけどきちんと頼もしい刑事の演技をしていた。
原作では獅子神に初めて警察が接触する際には名前ありの人物は出てこない。
そこをきちんとキャラを作り上げて演じてみせたのはさすがといえるだろう。

 

ここまで書いてきて思ったが、役者は皆、原作の雰囲気の再現に心血を注いでくれている。

 

雰囲気をブチ壊すような演技は一片もなく、終始物語の世界に没入できたのは本当にありがたかった。

 
 

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期待通りのバトル

目当てだった獅子神との空中戦は、かなり爽快感と迫力があるアクションだった。

 

こんなの観たのいつぶりだろう。そんなに月に何本も映画を観るほうじゃないし、観るとしてもアクションはそこまで多く観ていないのであまり参考にはならないかもしれないな……。

 

テレビでやってたCMの空中戦は当然だけど本当に一瞬だ。
実際は……どうだろう、10分くらいは空を飛んでたような気がする。
でも5分くらいかもしれない。時間の感覚を忘れるくらい集中して観ていたから実際どのくらいの長さのシーンだったのか定かではないんだよなー。

 

とにかく、映画スタッフの苦労がぎゅっと詰まったシーンであったことは間違いない。
空中戦は印象的なシーンだった。
ネタバレ無しなので表現が困難だが、新宿のビル街を飛び回る犬屋敷と獅子神の挙動ひとつひとつに説得力を感じた。

 

どうやってこんなスピード感のある映像に仕上げるんだろう。
劇中では生死をかけて戦っているのだが、ビュンビュン飛んでいる様が本当に気持ちよさそうだなと思ってしまった。

 

これを期待して観に行って損は無い。

 

ただ心配なのは最近のハリウッド映画のアクションものを観ていない自分が言うのはどうなのかという点かな(笑)。

 

他との比較ではない部分でおすすめするなら、リアルな新宿を飛び交うじいさんと高校生という構図は、新宿の街を一度でも歩いたことがあるなら観に行く価値がある、というところかな。
漫画の再現という点においては太鼓判を押せる。

 
 

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期待通りのメカのデザイン

メカのCGもリアルで惚れ惚れした。

 

説得力を感じるデザインを見事に表現しており、銃器やブースターに重量感が感じられる。
奥浩哉作品の醍醐味の一つであるメカのデザインがきちんとリアルに表現されているのは本当に素晴らしい。

 

すごい時代になったなぁ。ほんとリアルで驚く。
犬屋敷が初めて自分がロボットだと気付くシーンには興奮した。
それ以降だと最後の戦闘シーン。

 

犬屋敷にしても獅子神にしても、本当に頑丈なロボットなんだよなー。
それだけにラストの激闘は見物。

 
 

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ネタバレ無しまとめ

原作を見ていない人でも楽しめる。
原作が未読なのが理由で観に行くかどうか迷っているなら行くことをおすすめする。

 

空中戦は映画のスクリーンで観る方が良い。

 

ロボット化した犬屋敷と獅子神との戦いは迫力があり、アクション映画として素晴らしい

 

漫画は簡単に人が死んでいったりと刺激的な描写が嫌でなければおすすめできる。
映画公開中はkindleで2巻まで0円が続くのかな。

原作未読ならばこの機会に1、2巻は試し読みをおすすめする。

 
 

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以下からネタバレを含むので注意

 

映画いぬやしきネタバレ有り感想

全10巻の内容を2時間の映画に全て入れる事など出来ないため、削られた部分は多くある。
肉体的に若者に劣る犬屋敷が世の中のクズと戦い、身につけた能力で人々を救っていくのが読んでいて痛快だったが、映画ではホームレス狩りの少年たちやヤクザは出て来ず、戦う相手は同じくロボット化した獅子神だけ。

 

物足りなく感じたのも事実……。

 

木梨憲武が良かった。
映画公開前に、アニメで声優を演じた小日向文世を犬屋敷役にすればいいという意見をネットで見た。
なんでそうしなかったんだろうと思ったけど、映画を観た今では木梨憲武が正解だと感じた。

 

獅子神との格闘シーンで見せたアクション中で感情を露わにするシーンは木梨憲武の方が映える。

 

あと前述したが、やはり佐藤健は演技が上手かった。
特に母の自殺を知り静かに涙するシーンは胸に迫るものがあった。

 
 

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終わり方

都庁で死んだはずの獅子神が直行の部屋に現れ、直行から友達だという言葉を受けて自ら姿を消す。

 

同情できる家庭環境だとしても、大量殺人犯がこんな穏やかなラストを迎えるというのはあまりよろしくないような気がした。
原作では隕石の衝突を止める為に自爆するという自己犠牲精神を発揮して区切りをつけるが、映画の終わり方だと消化不良の感は否めない。

 

直行の家から消えた獅子神に、いっそ自爆させて欲しかった。

 

しおんと祖母

原作では獅子神の手によって意識を取り戻すが、どうやら映画では死んでるっぽい。
ここは非常にもったいないな、と感じた。

 

こういう形での原作改変の必要ってあったのかな……。

 

しおんと祖母が獅子神の手によって治療を受けて生きているという描写があればラストの獅子神に抱く印象ももう少し深いものになったのではないか。

 
 

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家族との関係

2時間に収めなくてはならない映画の宿命であり原作が削らるのは仕方ないが、その中には削ぎ落としてはいけない部分があったのではないかと感じている。
それは犬屋敷の家族全員との関係改善が無かったことだ。

 

以下は原作を大事にして欲しいと思っていながら、原作の流れを改変しろというワガママだ。

 

麻理以外は犬屋敷への態度が変わらないという映画の終わり方は原作を尊重しているし、自分が挙げた惜しい点というのは映画の出来に関して致命的なものではない。
あくまで個人的な要望として、麻理だけではなく妻や剛史とのとの関係が改善したというわかりやすい変化が欲しかった。

 

原作だと、後に続く隕石衝突編においてきちんと家族との関係は修復される。

 

ただ、それを隕石衝突無しにやろうとすると、原作をかなり大胆に変えていく必要がある。
原作を大事にする方向にしたことは決して責められる点ではない。

 
 

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映画ではあくまで獅子神との対決がメインなので、ホームレス狩りの中学生や、ヤクザ潰し、獅子神の警察署襲撃、あとはラストの隕石もない。

 

特にホームレス狩りやヤクザに関しては個人的に痛快かつカタルシスがあって好きなシーンなので、映画でもダイジェストでいいからやって欲しかったが獅子神との戦いには直接関係ないのでこれらは削っても映画の内容自体には何か支障をきたすわけではない。

 

自分が引っ掛かったのは前述の通り、犬屋敷と家族の仲が最後まで再生せずに終わるという一点だ。

 

犬屋敷壱郎は家族から軽んじられ、疎んじられているという立場から物語は始まる。
それが麻理を救った後から続く展開において、完全に払拭されていく展開になるのは原作を読破した人ならご存知の通りだと思う。

 

家族から蔑まれていた男が一転、正体不明のロボットとなってしまったものの、持っている機能で色々な人を救ってきた犬屋敷が家族の尊敬を勝ち得ていく様にはカタルシスがあるのだ。

 
 

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映画のラスト以降、原作では獅子神との戦い以降、隕石衝突編に移行していく。
犬屋敷は自分がロボットになった事を麻理以外の家族二人に知らせて隕石衝突阻止に動く。
剛史はロボ化した父と、その父を以前の父と同じと全く疑わない母と姉という構図に若干引いているものの、犬屋敷家全員の関係は概ね修復するのだ。

 

映画ではそこが無い。
原作を大事にした結果だけど、でも脚本にほんの少し細工しても良かったんじゃないかな、と思った。

 

麻理に関してはロボットと化した父に対する戸惑いが先行しているものの、都庁で犬屋敷に救われた際に心を通わせているので関係改善の兆しがきちんと表現されている。
犬屋敷家の関係性改善は麻理を除き、家族との関係は最後まで変わらないままで終わる。

 

残りの家族である妻や剛史との関係は冒頭と同じレベルで変化がない。これは寂しい。

 

隕石衝突で映画の後編をやるというのもないだろうし、映画がこれで完結するのであれば家族からの尊敬を勝ち得た状態が観たかった。

 
 

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特に剛史に関しては、漫画原作のラストではいじめっこに対して反撃するという成長を見せる。
それは隕石から地球を救ってくれた父から受けた影響だった。

 

映画は隕石衝突を防ぐ前の時点で終わるので、原作の様に剛史が犬屋敷を尊敬する機会が無い。
しかし、そこを何とか工夫して剛史が犬屋敷を見直すようなシーンをねじ込めなかったのだろうか。

 

いじめっ子に抵抗するようになった剛史の変化も個人的には結構印象的だったから、ぜひ欲しいシーンだった。

 

しかしここまでこうしてぐだぐだ書いてきたけど、要するに剛史がいじめられっぱなしなのは気分悪いってだけの話だ。
どこかで犬屋敷の活躍を知り、それを誇りに感じていじめっ子に抵抗するようになるシーンが少しでもあればスッキリしてたと思う。

 

よって前述した通り、上記に挙げたのはこの映画にとって致命的な点では決してない。
新宿を、ひいては日本を救った犬屋敷がその後も以前と変わらない日常を淡々と生きるというラストはきれいだと思う。
原作に忠実だし、映画として正解だ。

 
 

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ネタバレ有り感想のまとめ

原作を読んでいない人ならば、剛史が最後まで鬱屈としたままの点は少し気になる人もいるかもしれないが、概ね自分が惜しいと思った点に関して特に違和感もないだろう。

 

原作を読破していて、映画のラスト以降の展開を知っていると物足りないと感じる点が出て来るかもしれない。

 

まぁ、要するにある意味当たり前の結論だ。

 

映画のラスト以降、隕石が落ちて来なくて日常がそのまま続いても違和感は無いし、ハッピーエンドだと思う。

 

結論としては、観に行って良かった。
奥先生のSF作品は映像映えして良い。きちんと娯楽作品として楽しめた。

 

現在連載中のGIGANTに関しても映像化の可能性は十分あるので期待したいところだ。

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